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指原になりたい

指原とは言わずもがな、あの指原である。

私が高校一年生の頃、世間ではポニーテールがシュシュっていて、空前のアイドルブームが押し寄せていた。別にアイドルは好きじゃないけど周囲に溶け込むには「あっちゃん推し」とでも言っておくのが吉。というお告げがあったくらいだ(大ウソ)。

調子に乗りたい盛りの男子高校生だった私は、学友との馴れ合いを求め、適当に話を合わせるためだけにAKBのおまけが付いた、ぷっちょを買っていた。それはもう凄まじい社会現象だった。

とはいえ、私はあくまでコミュニケーションのためにAKBを利用しているだけで、根っからハマっているわけではなかった。


しかし、転機はちゃんと訪れる。


さしこのくせに」という番組をみてしまったのだ。

「さしこのくせに」正式名称『さしこのくせに〜この番組はAKBとは全く関係ありません〜』とは、TBSと大分放送で2011年1月から同年9月まで放送されていたバラエティ番組。(Wiki参照)

AKB48メンバーで初の冠番組を持ったのがこの指原莉乃というアイドルだった。ファッションオタクからすると、心の底から「誰だオメェ」(CV. 野沢雅子)という状況。でも見てみると面白かった。

なんだか冴えない女の子がAKBにいて、初の冠番組を持っていて、司会の土田晃之と絡んでる。それがすごく不思議な光景だった。同時に自分と同じ匂いがした。

根暗っぽい。自己肯定感が低くそう。なのに、心の奥底には謎の自信を持っている感じ。奇妙だった。捻くれ者が少し無理してよそ行き用に明るく振る舞っているようなところにどこか自分っぽさを感じて、勝手にシンパシーを抱いていた。

それはもう指原推しだった。

あっちゃん、ゆうこ、まりこ様、まゆゆ、たかみな、こじはる、ともちん、ゆきりん、などの総選挙上位のメンバーが推される中、指原推しは私の周りにいなかった。それも良かった。

気がつくと、いいともレギュラー、総選挙4位、文春砲を経てHKTへ移籍、まさかの総選挙1位、映画にドラマ、バラエティと指原を見ない日はなかった。


そして、総選挙2連覇あたり(2016年)から印象が変わり出す。

それまで芋っぽさが拭えなかったのが、徐々に垢抜け出す。顔がシュッとして、立ち振る舞いもどこか余裕が見えてくるようになった。何だこの色気というかオーラ。全然俺じゃない。(そもそも俺じゃない)

いつの間にか、あの独特な奇妙さが完全に消え去って、名実ともに大物の風格を纏っている。あのさしこが。


さしこは指原になった。

これまでのアイドル像から離れたバラエティ向きな人柄。アイドルオタクだったこと。20歳にしてHKTで最年長の責任を求められる環境にいたこと。その全てが相まって辿り着いた境地なのは明らかだった。

少しじめッとした学生時代を過ごした人は人目を気にしたりする分、視点が他のアイドルとは違うのだと思う。「求めている人の気持ちがわかる」というのは最大の武器。


運ももちろんあったと思う。でも巡ってきたチャンスをものにして転がしていく姿を見ると、奇跡でもなんでもない努力の人間だったのかなと思う。高校生の頃に抱いていた同族意識は甚だ勘違いだったのかもしれない。

でも、彼女の人間性がどこかのタイミングで変わっていたとしたら、捻くれ者の私でもいつかどこかで輝ける時が来るのかな?と、さしこが希望のような存在に思える。


もうあの時のさしこはどこにもいない。

私も、指原になりたい。



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