部活動指導員について思う事⑤

 前回の投稿からだいぶ時間が空いてしまいました。なかなか投稿できず申し訳ありません。
 
 さて、前回、学校部活動に外部の指導者を入れる場合、現状ではどのような形が望ましいのか個人的な意見を書いていきました。私はそういった制度設計のプロではないので、一部現実にそぐわない面や、それは違うのではないかという部分もあったかと思います。
 
 今回は、この部活動の外部指導が、陸上競技においてはどのような問題点が、あるいは良い面があるのかを元選手であり、子供たちを指導する立場から書いていこうと思います。なお、本記事の掲載事項は全て熊耳個人の考えであり、特定の団体の意見を代表するものではありません事、ご承知おきください。
 

陸上競技における外部指導のメリット


(1)  先生の負担軽減になる


 これについては、過去4回の記事の中で散々言っているので、言うまでもないでしょう。競技の事を知らない人が指導しなければならないのは、精神的・経済的・体力的に負担が大きいです。
 

(2)  より専門性の高い指導


 ある程度の知識・技量を持った人が指導することが前提なので、競技指導における専門性は向上するかと思います。
陸上競技だけではないのですが、世の中に「○○競技の教科書!!」みたいな本はごまんとあります。決してそれらが間違っているとか、否定したいわけではないのですが、やはり競技レベルの向上には、人から教わる「生の(リアルタイム・その場でわかる)指導」というものが一番効果的ですし、これは私の経験からも言えます。
 ただし、ひとつ注意しなければならないことは、陸上競技の中にも複数の種目があり、長距離の指導者が投擲種目を必ずしも教えられるわけではないということに注意は要します。
 

(3)  強化メソッドの共有


 学校部活動を学校単位でとどめず、地域クラブ化した場合の話です。
地域クラブということはその地域一帯を対象エリアとするので、様々な学校から、場合によっては市や町全域の希望者が集まり、同じ練習をすることになります。そうすると、みんなで同じメニューをこなし、それで強くなれば「強くなるにはこうすればいいのか」といった具合に、強化メソッドの共有が図られます。これにより「○○中学校は専門の△△先生が教えているから、俺が負けても仕方ないか」といったことは無くなります。もっとも、それでいいのかどうかは人それぞれですし、競技の本質としていかがなものかという問題はありますが(デメリット面で後述)。
 

陸上競技における外部指導のデメリット


(1)  人材不足

 私は現在、陸上競技の指導者として指導を行う立場にありますが、この問題は常日頃から頭を悩ませています。
 前述のように、陸上競技といえども中身は短距離・長距離・跳躍・投擲と、要素も競技性も何から何まで異なる種目がたくさんあります。そうなると、種目数分だけの指導者が必要なのですが、実際問題はそんなに甘くありません。我が那須塩原ジュニア陸上教室においても、短・長・跳の指導者はいるものの、投擲を専門とする指導者がいないというのが現状です。それ故に、小学生種目の「コンバインド」という種目があるのですが、この中に「ジャベリックボール投げ」という種目があり、これを専門的に教えられる人がいなくて困っています(なので、以前から熊耳は『投擲を教えられる人いませんか?』と散々騒いでいます)。
 話は逸れましたが、指導者人材の不足は、割とどこでも共通の課題だったりします。人がいなくては、いくら制度を整えても意味がないので、どうにかして指導できる人材を確保する必要はあります。
 

(2)  平日と休日での練習メニューの整合性


 個人的に指導者数問題の次に課題だと思っているのが、この問題です。
 具体的にお話しますと、現状の外部指導は休日部活動を外部なり地域クラブなりに移行するという話になっています。スポーツ庁がそのように言っているので、国内全域でこの流れになります。
 そこで、問題なのは平日の練習と休日の練習が内容的にバッティングしないかどうかです。具体的な話をすると「平日はインターバル練習をやった」という学校があったとして、その学校を担当する指導員が「休日にインターバル練習をしたい」と考えていたとしましょう。この場合、週内に2回のインターバル練習をやるのですが、これが続くと練習内容に偏りが出る場合があります。個人的には、週の中で持久力もスピードも、バランスよく強化することが育成期には大切だと考えているので、この状況は好ましいものではないと感じます。
 また、学校単位ではなく、地域単位の活動となった場合、「A中学校では平日にインターバルをやったから、週末はペース走をしたい」、「B中学校は、平日にペース走をやったから、週末はレペティションをやりたい」といった具合に、そもそもやりたいことが異なる現象が間違いなく起きます。だからと言って「じゃあジョグにしよう」というのは、せっかく地域の子供たちが集まって合同で練習をやる意味がない気がします。したがって、平日の部活を担当する先生方と外部の指導者との連携や、ビジョン・スケジュールの共有といったことは、事細かにやっておく必要があるのではないかと感じるところです。
 

(3)  学校対抗の意義が薄くなる


 これは、メリット(3)に関連することでもありますが、地域単位での動きとなった場合の話です。
 将来的に地域クラブ化して活動することになった場合、学校という枠を取り払っての活動となるわけですが、そうなってくると地区内での総合体育大会や新人戦などの、学校対抗点数を競うことの重みというか、面白さは無くなってしまうような気がします。ただのクラブ内記録会のようにしかならず、競技レベル云々よりも、単純に学校同士で戦う面白味が無くなるのかな、という気がしています。
 
 現状、陸上競技に関わるものとして思うところは、このあたりでしょうか。その他の課題に関しては、陸上競技だけでなく全体に共通している部分があるので、今回は割愛します。
 
 今後も、部活動指導員に関して何か動きがあれば、個人の思うところを書いていきたいと思います。

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