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「この産業は血の通った仕事」三浦春馬

まずは感謝申し上げたい。
ありがとうございます。
前回の記事(↓)、書いて投稿した時には、そんなに反響いただけるものと全く思っていなかったもので、とても驚いている。
そんなにエモかったかしら。

今回は、前回の記事からこぼれた、ミュージカル「RENT」の別の曲の話から、私の思考を縷々記す。
今日の記事はそんなにエモくないと思う、たぶん。

I’ll cover you (Reprise)

「RENT」と言えば、前の記事でも取り上げた「Seasons of Love」が一番印象的だし有名だけど、私が「RENT」の曲で一番好きなのは、実はそれではない。
私が好きなのは「I'll cover you (Reprise)」という曲。
「RENT」のストーリーの中で、前半と後半に1回ずつ、計2回、この「I'll cover you」という曲は出てくる。
前半も後半も曲は全く同じ、歌詞は一カ所だけを除いて同じなのだが、アレンジが異なっていて、前半のは明るく、一方、後半はしっとりバラード。
私はこの後半の方の「I'll cover you (Reprise)」が大好きで、実際に「RENT」を観に行った時には、いつもこの曲の1曲前あたりからジワジワ涙が出始めて、この曲になった時には、客席で静かに滝のような涙を流している。

この動画の、セリフも含め全部の、わかりやすい和訳を載せておられるサイトがこちら(↓)。

ていうか、この動画見ただけで泣けるんだけど。
気づいた方もいるかもしれない、このイントロは「Seasons of Love」だ。
その通りで、イントロもそうだし、この曲の途中からは「Seasons of Love」のコーラスが乗っかる。(この「I'll cover you」に「Seasons of Love」のメロディが重ねられる意味合いも、前回の記事で「Seasons of Love」がどんな曲か知った方々ならわかるかな。)
ネタバレになってしまうが、和訳を読めば、または、英語がわかる人なら上の動画のセリフや歌詞からもわかってしまうので書いてしまうけれども、ここはエンジェルというドラァグクィーンが亡くなった後のお葬式のシーンで、各々がエンジェルとの思い出を語っている。
そのエンジェルのエピソードを聞けば、どれだけエンジェルが人懐っこくて、フェアで、優しくて、才能があって、愛に溢れた人だったかがよくわかる。
誰かに、重ならないか。
私の中では、エンジェルが春馬君に重なってくる。
人懐っこくて、フェアで、優しくて、才能があって、愛に溢れた人。
以前の記事に、海外での「RENT」で、春馬君がエンジェルを演じたらきっとハマると書いたのは、エンジェルと春馬君自身に共通点があると思ったからだった。
エンジェルの恋人のコリンズが、

I'll cover you.

と歌う。
この「I'll cover you.」ってフレーズが、本当に心にずしんと来る。
「I'll cover you.」って単語自体はシンプルだけど、この「cover(カバー)」を和訳するのが実に難しい。
「君の事を守るよ。」っていうのが一番近そうだけど、この歌詞は、元の英語の段階でダブル(もしくはトリプル)ミーニングになっていると思われ、それを一語とかの簡潔な日本語に訳すのは無理だと思われる。
これも私の主観も含めての超意訳をさせてもらうとすれば、「貴方の全てを受け入れる。貴方がどんな状態であれ、時には貴方の前で盾となり、時には貴方の後ろで支えとなる。」みたいな意味が「I'll cover you」には含まれていて、「I love you.(愛してる。)」と直接的に言われるよりも、この言葉を発した人の持つ愛の大きさ、深さ、暖かさ、強さみたいなものがより強調されてダイレクトに現されているような、何もかもを超越したような愛を感じられる、そういうフレーズなのだろうと思う。
「I'll cover you」は、「I love you」の最上級表現だと思ってもらえばよいだろう。
そして、不思議なもので、エンジェルと春馬君とが重なってしまったせいもあるのか、また、私ごときがおこがましくもあるのだが、今、私が春馬君に対して抱いている気持ちも、何となく「I'll cover you」っぽいかもなんて気がしている。
勿論、私は春馬君の熱心なファンだったわけでもなくて、こんなことになって急に春馬君が頭から離れなくなっただけの、ごくごく一般人なので、コリンズがエンジェルに抱いたような、近しい人に抱く恋愛感情みたいなものではなく、かなり距離感のある「一人の人間」に対して持つ、リスペクトと後悔も合わさった、人間愛とでも言うのか、何と言ったらよいかもわからないが、「好き」なのか、「応援したい」なのか、ただ超越はしてる気がする。
だって、その相手が生きていようがいまいが、「I'll cover you」って思えるのだから。
この境地に私は到達したが、具体的に何をどうしたら、このフレーズを形にできるのかは、まだよくわからないでいる。

ミュージカル「RENT」公演中止

「Seasons of Love」に「I'll cover you (Reprise)」、こんなに「RENT」の曲を聴いていたら、めっちゃくちゃ「RENT」の日本版プロダクションを観に行きたくなってきた。
がしかし、今週、こんなお知らせが。

まずは、感染された方々の一日も早い回復をお祈りしたい。
公演中止は、演者・スタッフ、お客さん誰にとってもショックで残念なことだけど、これは致し方ない。
誰かが誰かを、または自身を責めることのないようにしてほしいと思う。
今回のチケットも買ってもいない分際で勝手に断言するが、お客さんはただただ、カンパニーの皆が元気に戻り、「RENT」の幕が再び上がる日を楽しみにして待っている。
これで挫けないでほしいと思うし、応援をしている。

「この産業は、とても血の通った仕事」

この「RENT」の一件で、春馬君のこの言葉を思い出した。
春馬君が、今年の3月、ミュージカル「ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド」の、急きょ最終となってしまった日のマチネ(その日はソワレもあったらしいので、最終公演の一つ前)の挨拶で、こんなことを言ったという。

「僕はこの産業は、
とても血の通った仕事だと自負しています。」

詳しくは、上のサイトの3ページ目の最後の方から4ページ目の初めの記載をご覧いただきたいが、この短い春馬君の言葉とその前後の脈絡から、私はこう受け止めた。

エンターテイメントは、このコロナ禍においては、不可欠なものではないかもしれないが、人の心を動かし、時に人の心も癒すことも慰めることも可能で、人の希望ともなり得る、実に人のエモーショナルな部分にリーチできる、素晴らしい仕事なのだ。
しかし、今、エンターテイメント業界においては逆風しかなく、非常に厳しい状態ではあるが、だからとて、エンターテイメントの灯は、絶やしてはならないのだ。
ここで負けてはならない。
どの産業でもそうだが、物事を送り出す側だけがいてもダメで、それを受け取る側の人もいなければならない。
いつか、人が何かしらのエンターテイメントに触れるチャンスが来るときには、最高の状態でエンターテイメントを提供できるよう、演者・スタッフはその努力を惜しまず精進していくから、お客さんには、また遊びに来てほしい。
そうすることが、日本のエンターテイメントをこれからも守り続けることに繋がるから。

春馬君は、エンターテイメントという「産業」を守りたかったのではないか。
それが春馬君の願いだったのであれば、また、そのような思いならば、私のような者でも受け継げるのではないか。
前にも別の記事で書いたが、エンターテイメントは送り手と受け手が相互に反応し合って作り上げていくものだと思っていて、私も受け手の立場からなら、エンターテイメントの産業を応援できる。
その思いに至ってから、状況が許す限り、気の向いたものについては、積極的に演劇、映画、ドラマ、音楽等など、観たり聴いたり、応援するようにしている。
例え、春馬君に関連しないものであっても。
それらを楽しみながらも、ふと寂しく思うことはある。
例えば、先週あった、再来年の大河ドラマのキャスト発表なんて、あの役をあの人が演じるのか、そう来たか~!とか、あぁ、やっぱりね!と盛り上がり、この5日間だけでも何てワクワクさせてくれるのだろうかと、出だしから既に「ザ・エンターテイメント」感満載で、ドラマを観る前から面白さは始まっていた。
三谷作品に春馬君がフィットするかは置いておくとして、大河ドラマに限らず、こういった新しい作品のキャスティングに、春馬君の場合は、選ばれるその期待すら抱けない虚しさはある。

これまで春馬君がいたところに春馬君がいない、春馬君が演るはずだった役や、春馬君に似合いそうな役を春馬君ではない誰かが演じる、そのたびに春馬君がいなくなった現実を改めて認識して辛くはなるのだけど、それを乗り越えて、その作品ごと受け入れて、楽しんで、反応する。
そうしていくことが、日本のエンターテイメントの継続・発展に繋がると信じている。

勝手に春馬君の思いだと解釈して、勝手に受け継ぎ、勝手に日本のエンターテイメントを応援していく。
勝手だけれども、そういう気持ちの整理の仕方で良いだろうか。
日本のエンターテイメントを愛し応援することは、春馬君を愛し応援することに繋がると信じていく。

もしサポートをいただけるのでしたら、自身の心を潤すような音楽や映画などなど、エンターテイメントのコンテンツ購入に充てさせていただこうと思います。