RIDE ON TIME 増田の時間

このエッセイは2019年1月にフジテレビ系列で放送されたRIDE ON TIMEを見たという前提で話しますので、未見の方は先ずFODで番組を見て下さい。

取材期間が2018年8月から2019年1月1日という事で、制作としては活動自粛後の小山の葛藤をメインにする事を考えていたと思う。一般人が見るコンテンツとしてもそれが魅力的だ。

実際は予告で有った小山のロングインタビューなどは全て外され当り障りのないコンサートのメイキングになった。

まぁKing&Princeの岩橋の休養など、ジャニーズでそれをやると社会的影響が大きすぎると考えられたのかもしれない。

まぁ一見するとそうだ。しかし、あの番組にはファンには分かるメッセージが隠されている。

紫のコートの意味

増田がこだわって作っていた衣装は「紫のコート」だ。

紫のコート

増田がメンバーカラーに意味を見出していることは様々なメディアで明らかになっている。

私は増田が「紫のコート」を丁寧に作り込んでいるのを見て、あるいは番組が「紫のコート」をフォーカスしているのを見て

あ、これは小山の暗喩なんだな

と思った。

OPENINGの一番ファンに印象を強く与えるシーンで、コンサートのコンセプトを伝えるシーンで全員で紫のコートを着る

ALL FOR ONE なんだなと。

俺たちは小山の為に、小山はNEWSの大切なメンバーで「俺たちは小山を守るぞ」というメッセージなんだなと

そう思って見るとあの編集も違って見えてくる。

増田のこだわり

私は番組を見るまで、その少し前年末のコンサートに参加するまで正直増田が苦手だった。

私もどちらかと言うとアーティスティックな方なのでぶつかるのだ。

増田はファンに対してああしろこうしろという要求が凄く多いのだ。

例えば曲間にコールをするなとか双眼鏡を使うなとか。

私は私の考える理想と言うのが有る方でそれを曲げて他人におもねるのが凄く嫌いなのだ。指図されるのが嫌いなのである。指図されると、そんなに言うならお前の考えたコンセプトはよっぽどなんだろうなと腹が立ってくるのだ。

アーティストだからこだわりが強いなんて口ではいくらでも言えるし、ただのポーズでわがままな事の言い訳なだけの奴なんて幾らでもいるし、そいうう奴を蹴散らして生きる人生だった。まあ大体は面倒くさいから負けてやるのだが。だが譲れないものとか許せないものとかが、私にとってのオタ活でありコンサートで有って、増田のこだわりと正面からぶつかるのだ。

正直仕事でさえ面倒くさいのになんで金払ってお前のわがままを聞いてやらねばならんのだと思っていた。

しかし映像で実際作業している真剣な熱量を目の当たりにすると説得力が有る。

衣装はいつも完成品を見るだけなので、どこまでが増田の作品なのか分からなかった。しかし制作過程を見ると、なるほど衣装は増田の作品だなと納得する。逆に衣装の米山さんは増田のアイディアを形にすることに注力していてコンセプトについては増田に任せているんだなという事が分った。

要するにNEWSの衣装は本当に増田がデザインしているんだなと思ったのだ。

私の大好きなNEWSの衣装は増田の作品だったのだ。

なるほど、今は増田のめんどうくささも良い作品の為のエッセンスだなと思える。わがままも全部大切なNEWSを守りたいが為なんだなと。そう思うと許せるようになった。っていうか好きだ。単純。

ドキュメンタリーってそういう良さが有るよなと思う。

そういえばEXILEのUSAを好きになったのもドキュメンタリーを見たからだったと思い出す。

ドキュメンタリーには世の中の嘘を知った大人たちに訴えかけるメッセージ性が有る。いかにも作りものな分かりやすいキャラクターには騙されない大人たちを沼に落とす訴求力が有る。

RIDE ON TIMEは増田にとってすごく大きなターニングポイントとなるだろう。

それまでの子供向けのかわいらしいキャラクターから大人の鑑賞に耐える深みのある人物に脱却出来たと思う。

小山はどうか?

一方小山はどうだろうか?小山は多分弱い自分をさらけ出して批判の矢面に立つ覚悟が出来て居たと思う。実際あの活動休止期間を得て一つ上の大人の男に脱皮したと思う。それは最近の言動やビジュアルに感じる。

一方制作の側、つまり裏方でコンセプトを決めている人物は小山にイメージチェンジして欲しくなくて抵抗しているように感じる。

知的で紳士で優しくてナイーブ、高所恐怖症で手越に弱い。

それは確かに一度は成功したイメージだが、失敗もしたじゃないかと思う。

私は正直小山はもう少し強くなるべきだと思う。ヘタレキャラなんかやってるからなめられて虐められるのだ。虐める人間て卑怯なので決して自分より強い人間には手を出さないものだ。

20代はただ優しいだけで良かったかもしれないが、30代も後半になって来るとそれではただ情けないだけの男だ。

NEWSは今後どうなるのか?

小山のキャラクターをどうするのかという問題はNEWS全体が今後どうなっていくか、どういう立ち位置でやっていくのかという問題と直結している。

NEWSは多分生意気なのだ。

ジャニーズの癖にお人形で居られない。お仕着せの衣装を着なくて、字幕にもメカニックにもビジュアルにもシナリオにも全部に口を出す。なんでも自分たちで作りたがる。

ジャニーズってなんだろうと思う。

世間が思うジャニーズのイメージって、若くてかわいらしくて愛嬌が有ってそしてちょっと足りない。いつもニコニコしている大人たちの人形というイメージじゃないだろうか?

実際Jr.(デビューしていない研修生)はそうだ。いかに大人の考えていることを忠実に再現できるかが選ばれる基準だ。

しかしデビューすると違うのだ。

自分で考え、自分で判断し、自分で作る。それが出来るアーティスト性が有る事がデビューの一つの大きな条件なのだ。

しかしアーティスト性が有りすぎると赤西仁や渋谷すばるの様にジャニーズと言うショーケースからはみ出してしまう。その辺のバランスが凄く難しくて魅力的なのだ。

RIDE ON TIMEはそれを見せたい番組なんじゃないかと思う。

NEWSは素材として、番組コンセプトをすごく体現出来たんじゃないかなと思う。あるいは安直に小山の葛藤を描いていかにもなドキュメンタリーを作るより良かったかもしれない。

まぁファンとしては小山が何を考えているのか凄く知りたいが。

カウントダウンコンサート後のインタビューで加藤が「アイドルをやっていてすごく楽しい自分は狂ってるんじゃないか。」と言ったのはすごくアーティスティックだなと思った。どう見られるかをすごく客体化している。見る側の視点で自分を見ている。ひとつの作品として。それって凄くアートだなと思うのだ。ああいうシーンで「狂う」という尖った表現をする加藤もまたアイドルという枠には収まらない男だなと思う。

NEWSは必然としてアーティスティックに傾いて行って、これからもプロデューサーとぶつかっていくだろう。しかし一方で自分たちがアイドルグループだという事をちゃんと自覚している。そこが魅力的で面白いしこれからも見たいと思わせるグループだ。

そして関西Jr.

そして次は関西ジャニーズJr.だ。

対称のチョイスをしたなと思う。

ジャニーズにおけるアーティストオブアーティストの増田を特集した後のJr.

この落差。

どこまで大人のいう事を聞くのか。言う事を聞けなきゃデビュー出来ないし、聞いてばかりでもデビュー出来ないし。

RIDE ON TIMEが目を付けたからには誰か良い子が居るのだろう。

楽しみだ。

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