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クジラと蛇口のいちごつみvol.1

短歌:藤田美香
写真:蛇口ひろこ
で「クジラと蛇口」というユニットを組んでおります。
蛇口はともかく、なぜ藤田美香がクジラなのかというと、以前クジラにまつわる筆名を使っていたからです。ここに書こうかと思ったけれど、ググったらふつうに昔のブログがヒットして(題詠blogに投稿してた頃で10年以上前の!)美香さんに許可を得ていないので書くことは差し控えます。書いてるようなものだけど。
その美香さんに、いちごつみ(私たちの解釈:相手の短歌の中の一語をもらって短歌を作ることを繰り返すこと。一語の定義はゆるめ。)をしてみたいから相手してほしい、とお願いしたのが7月11日。期限は設けずにやってみて、だいたい10日で10往復でした。
楽しかったね、と意見が一致し、公開しながらこれを続けることにしました。

短歌のやりとりのような、手紙のやりとりのような、ただの日記のような、そしてたまに写真も入るかもしれないこの企画。
よろしければお付き合いください。

蛇口ひろこブログ『蛇口から水』2023.7.21
より

【1. →2.缶→3.いいこと→4.種→5.鳥→6.似てる→7.早足→8.加速→9.車→10.自分→11.一人称→12.夏→13.毎日→14.一言→15.真っ直ぐ→16.曲がる→17.きゅうり→18.咲く→19.心配→20.幸→21.必ず→22.切る→23.またね→24.二度→25.息→26.する→27.入って→28.クレパス→29.絵の具→30.つつく】


オールフリーと書かれている缶手にとって私は何から解放される/藤田美香

いいことをしている顔で空きを踏んで潰してリサイクルに出す/蛇口ひろこ

そこらじゅういいことの種が落ちていて誰のものでもないらしいので/藤田美香

こぼれ落ちる記憶のを埋め直してゆく虫が食べても鳥が食べても/蛇口ひろこ

夕方の街路樹にがざわめいて今朝の悪夢と似てる気がする/藤田美香

お母さんに似てると言われた帰り道 娘はどんどん早足になる/蛇口ひろこ

早足で歩いてしまう癖がありひとりのときほど加速してゆく/藤田美香

高速で朝に向かって加速する車は浜名湖過ぎたあたりか/蛇口ひろこ

自分ちのがどれかわからないお迎えの列を茫然と見る/藤田美香

一人称がずっと自分であるような人と一緒に暮らしています/蛇口ひろこ

ウチという一人称に憧れて良くない言葉と正された夏/藤田美香

冬が来てが来るような毎日で風邪を引いたりのぼせたりしてる/蛇口ひろこ

毎日を一言記せば良いだけの日記がかれこれ二年続かず/藤田美香

満面の笑みで真っ直ぐ放たれた一言がまるで小骨のように/蛇口ひろこ

真っ直ぐに進めばいいと教えられどこで曲がるか考えている/藤田美香

水分や肥料が充分足りてたら曲がるきゅうりはできないらしい/蛇口ひろこ

畑からきゅうりを捥いで食むことの花が一面咲くことの、祖母よ/藤田美香

新しい環境にももう慣れただろうか心配をよそにチューリップが咲く/蛇口ひろこ

心配は飽和を超えて言わなくていいことまで言う 子らに幸あれ/藤田美香

母方の男性たちの名前にはという字が必ず入る/蛇口ひろこ

梅雨明けが必ずくると知っていて我慢できずに前髪を切る/藤田美香

大丈夫いつでもかけていいからねまたねと六回目の電話を切る/蛇口ひろこ

またねって二度と会いたくないひとに言ったことある 手は振ってない/藤田美香

ただいまと息するようにエアコンの設定温度を二度下げる夫/蛇口ひろこ

をすることに気付いてしまったらそれからうまく息ができない/藤田美香

何をするとか決めることなく温泉に入って喋って食事して寝て/蛇口ひろこ

引き出しの忘れ去られたクレパスに入っていない色を数える/藤田美香

クレパスの白をはじいて水彩の青い絵の具をのせる夏空/蛇口ひろこ

パレットに出したまんまでカラカラに乾いた絵の具をつつく八月/藤田美香

つつく鳩が見たくて買った餌ばらまく前に襲われている/蛇口ひろこ

※太字は前の短歌からつんだ(もらった)一語(いちご)
※写真:蛇口ひろこ


ブログでは交換日記的エッセイも書いてます。
どうぞ遊びにきてください。

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