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今、世界のビジネスリーダーたちが血眼で“アート思考”を学んでいる理由


息が詰まるほど「解決手段」が溢れた現代で

いきなりですが、
商売の原理原則は
「価値と価値の循環」です。

あらゆる商売は価値と価値の
等価交換で成り立っています。

世界を股に掛けるグローバルビジネスだろうが
個人のスモールビジネスだろうが
この原理原則は共通しています。

そして、これまでの「価値提供」とは
主に「問題解決」のことを指していました。

「問題を解決する手段」に価値があり
お客様はそこにお金を払っていたのです。

しかし、
ここ数年では問題に対する
解決手段は飽和状態にあります。

つまり「問題解決」の価値は
無くなっているということです。

「価値の定義」が変化しつつあるのです。

今では大抵の問題は検索すれば
無料で解決策が出てきます。

サービスを受けて問題を解決するとしても
そこにはライバルが有象無象に溢れかえっています。

どの業者を選んでも
ある程度価格に対する質は担保されており、
極論どこの業者に問い合わせても
そこまでの問題は起こりません。

簡単に言えば需要に対して
供給が多すぎるということです。

すると「価格競争」が起こります。

品質が担保された商材をいかに安く提供できるか。

ここで争えるのは体力のある大企業だけ。

では
「問題を克服してしまった消費者」
が次に求めるものは何でしょうか?

「問題解決」の次に人々が求めるもの

人々が
「問題解決」の次に求めるものは
「意味の追求」です。

物が溢れかえった現代では消費者は
「モノ」を買っているのではありません。

「モノ」にまつわる
「意味」を買っているのです。

「意味」とは、
「感情」「信念」「哲学」
「理念」「想い」「美学」「ビジョン」
「価値観」「世界観」「人生観」などの指します。

例えば、服を買う時には、
寒さや暑さを凌ぐための
「服」を買っているのではなく
「どんな自分で在りたいのか?」
「他人にどう思われたいのか?」という
「意味」を買っていると言えます。

「〜という問題を解決するために
最も効率が良さそうな〜を買う。」

という手段としての消費から、単に

「〜が好きだから〜を買う。」

という目的としての消費へと
移り変わっているということです。

「消費」は「手段」ではなく
「目的」となりつつあるのです。

「消費そのもの」が自己表現の
一環になったということです。

手段としての消費から
「〜を買っている自分」
を表現するための消費です。

繰り返しますが、
消費者が買っているのは
「モノ」ではありません。

「モノ」の背景にある
「意味」を買っているのです。

「マーケットイン思考」は通用しなくなる

目に見える物質的な「モノ」ではなく、
目には見えない精神的な「意味」を買う時代。

これまで
「お客様のニーズ」を起点とした
マーケティング戦略が主流でした。

「顧客ニーズに対応した商品」
「ニーズに的確にお応えします」
「お客様のニーズを第一に」

こんな文言を一度は見かけたことがあると思います。

これは変わることのない
真理だと考えられていました。

しかし、
「問題解決手段」が溢れた現代では
「お客様のニーズ」を起点とした
マーケティング戦略はどんどん役に立たなくなっていきます。

なぜなら、
「お客様」が悩んでいる問題に対しては
競合他社やライバルが溢れかえり、

お客様が”本当に求めているコト”は
お客様自身が言語化できていないからです。

お客様のニーズをリサーチし、
それに応えた商品を作る。

お客様にアンケートを取り、
それに応えるために改善する。

これが当たり前でした。

いわゆる「マーケットイン」という考え方です。

ですが
「お客様の声」を聞いているのは
自分たちだけではありません。

競合他社も同じような手法で
同じような層を探索しているわけですから
お客様からは似たような結果が
返ってくることになります。

集まったリサーチ結果が
似たようなものであるということは、
そこから導き出される「答え」も
似たようなものになるは当然です。

ですから、
このフレームワークでは
ライバルが増え続ければ続けるほど
競争は泥沼化していきます。

また、
消費者が次に求める価値は
より抽象的で曖昧な概念です。

目に見える物質的な欲求であれば
「コレがない」「アレがない」と
お客様自身が欲しているものを
自覚することができていましたが、

目には見えない抽象的な欲求は
お客様自身が「何を欲しているのか」を
言語化することができないのです。

既にお伝えしましたが、
消費者は目に見える物質的な「モノ」ではなく、
目には見えない抽象的な「意味」を買う時代です。

「意味」とは
「感情」「信念」「哲学」「理念」
「想い」「美学」「ビジョン」「価値観」
「世界観」「人生観」などのことであり、

これらは『正解』や『答え』がない概念です。

お客様が求めているものに
「正解や答えがない」ということは、
これはつまり「欲求の多様化、複雑化」
進んでいるということを表しています。

哲学や価値観に正解はありません。

100人いれば100通りの答えがあります。

例えば「40代主婦」という括りで
考えてみても哲学や価値観は千差万別。

目に見える物質的な「モノ」であれば
「子供がいても始められる〜」とか
「家事に必要な〜」など、
ある程度の「正解」があります。

ですが、
同じ「40代主婦」だからといって
「感情」「信念」「哲学」「理念」
「想い」「美学」「ビジョン」
「価値観」「世界観」「人生観」
の組み合わせパターンが一致することありえません。

これまでは、
いわば「射抜くべき的」がある状態でした。

お客様のニーズという
「射抜くべき的」があったことで、
そこに刺さるような訴求ができれば
ある程度の成果がお約束されているようなものでした。

しかし、便利な物が溢れ、
たくさんのライバルが蠢き、
人々がより抽象的なものを求める現在は
「射抜くべき的」が明確ではありません。

そこで、マーケターたちはまだ見ぬ
「潜在ニーズ」や「インサイト」を探し求め、
大量のリサーチと分析をこなし、
徹底的にお客様に寄り添い、
お客様の「そうそう、それそれ!」の
発掘の旅に出ます。

ですが、これがなかなかに難しい。

なぜなら、
本人すら自覚できていない
抽象的で多様化、複雑化された欲求を、
立場も背景も全く違う人間が
突き止められるようなレベルのものであれば、
それはライバルマーケターも見つけることが
できてしまう可能性が非常に高いのです。

イノベーションを起こすような
「潜在ニーズ」や「インサイト」は
もっともっと深く、論理では
説明できない混沌の狭間にあります。

つまり、

「便利な物が溢れかえっている時代」
における

”お客様自身が言語化できない”
尚且つ
”多様化、複雑化された答えのない”抽象的な価値

これらを探し当てることは
非常に困難なのです。

では一体どうしたいいのか?

「価値発見」から
「価値創造」に焦点を当てる必要があります。

「見つけることができないのなら、創り出してしまえ。」

ということです。

そこで登場するのが「アート思考」なのです。

「アート思考」の定義

今世界で注目されている
「アート思考」とはどんな考え方なのか?

結論から言うと、

「感情・思想・哲学の表現を目的とした
自分の美的感性を指標とする思考フロー」

これが僕の中のアート思考の定義です。

ここで言う、感情・思想・哲学は
「感情」「信念」「哲学」「理念」
「想い」「美学」「ビジョン」
「価値観」「世界観」「人生観」などの
抽象的な概念を含んでいます。

「アート思考」の源泉は「表現欲求」である

アート思考
=「感情・思想・哲学の表現を目的とした
  自分の美的感性を指標とする思考フロー」

まず注目していただきたいのは、
アート思考は「表現すること自体」が
目的であるという点です。

手段としての表現ではなく、
表現そのものが目的なのです。

「ニーズ」があるから作るのではありません。

「自分自身の感情・思想・哲学を表現する」
ために作品を作り、結果的にそこに
「価値」が生まれるという順序です。

「お客様は〜を求めているから〜を作る」
「〜な絵にニーズがあるから〜な絵を描く」
という価値発見型の思考フローではないのです。

アーティストとビジネスマンでは
手段と目的が真逆です。

優れたアーティストは、
儲けるために絵を描くのではありません。

彼らは、表現するために絵を描くのです。

「お客様が〜を求めているから〜を作る」
のではありません。

「自分が〜を表現したいから〜を作る」
のです。

優れたアーティストにとっての「利益」は
「表現」を目的とした創作活動の果てに
実る果実でしかありません。

売れるから作るのではありません。

作りたいから作るのです。

つまり、アート思考の源泉にあるのは、
アーティスト自身の「表現欲求」なのです。

純粋な「表現欲求」から生まれる
商品やサービスには「意味」が宿る

アート思考の源泉にあるのは、
アーティスト自身の「表現欲求」である
とお伝えしましたが、

純粋な「表現欲求」から生まれる
商品やサービスには「意味」が宿ります。

コロンビア大学哲学科名誉教授で
美術評論家のアーサー・ダントーは、
著書「アートとはなにか」の中で、
アートの定義について

「アートとは具現化された
意味(Embodied Meanings)のことである。」

と述べています。

「アートとは具現化された意味のことである。」

「アートとはなにか」

先ほど、
消費者が問題解決の次に求めるのは
モノにまつわる「意味」である
とお伝えしましたが、
ここで「意味」というキーワードで繋がってきます。

消費者が問題解決の次に求めるのは
モノにまつわる「意味」である。

そして、アーティストとは
「意味を具現化する者」である。

モノにまつわる「意味」に
価値が宿る時代において、
「意味を具現化する者」である
アーティストの考え方は
まさに最高の考え方なのです。

これまでの時代は
「お客様の問題解決」を目的とする手段
として商品やサービスがありました。

ですが、これからの時代は
「作り手側の表現」を目的とする手段
としての商品やサービスこそがあるべき姿だと言えるのです。

問題解決手段が飽和した現代では
「『感情、思想、哲学』の表現」こそが
「価値(=意味)」を創造することに繋がるのです。

「商品」「サービス」「会社」「ブランド」
これらすべてをあなたの感情、信念、哲学を
表現するための「作品」だと捉えてみてください。

「あなたが商品やサービスを通じて
表現したいことはなんですか?」

この問いを持つことこそがアート思考なのです。

「正解かどうか」ではなく「美しいかどうか」

また、私が考えるアート思考の定義では、
自分の美的感性をすべての指標とします。

これは簡単に言えば

「正しいかどうか」
「好かれるかどうか」
「儲かるかどうか」

ではなく

「美しいかどうか」

をすべての軸にするということです。

ここでの美しさとは、
外見的なものではありません。

「ピンとくる」「しっくりくる」
「なんか好き」「なんかイケてる」
と感じるあなたの感性を軸にするということです。

VUCA時代とも言われますが、
変化が早く、多様化、複雑化が進み、
不確実な時代において
「正解」がある論理的な戦略は限界を迎えます。

「正解」があるということは、
みんなが同じ答えに辿り着いてしまう
ということを意味しています。

つまり「差別化」が困難であるということです。

「論理的には正解」なモノや
コトが溢れた現代において消費者は

「論理では説明できない何か」

を求めているのです。

だからこそ、あなた自身が
「論理では説明できないけどピンとくる」
「なぜかはわからないけどしっくりくる」
という論理を超えたあなたの
感性を軸にしてもらいたいのです。

ペルソナは「自分自身」です。

自分の表現欲求を起点にして、
自分の美的感性を軸にする。

こう考えると、アート思考は
「究極の自分軸思考」だと言えます。

自分の感情・思想・哲学を
表現することを目的とし、
自分の美的感性を軸にするのです。

抽象的で、多様化複雑化された
「他者」の欲求を”狙い撃ち”することは困難です。

だから、
徹底的に「自分」に焦点を当てて、
お客様を”引き寄せる”のです。

お客様の「ニーズ」に焦点を当てるのではなく、
自分自身の「表現欲求」と「美的感性」に焦点を当てる。

求められていることを作るのではなく、
あなたが作りたいものを作る。

儲かるからではなく、
あなたが美しいと感じるから選ぶ。

その結果として、
商品やサービスに「意味」が宿り、
そこに新たな価値が生まれ、
それに魅了された人が惹き寄せられるのです。

「後出し」が通用しなくなった以上、
リスクを伴う「先出し」が必要になります。

リスクを伴うと書きましたが、
この時代の転換点では、
従来のやり方に依存する方が
リスクだと判断するからこそ、

世界のビジネスリーダーたちは
血眼でアート思考を学んでいるのです。

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