マガジンのカバー画像

42
生命の火花。
運営しているクリエイター

#詩小説

面白いドイツ語でショートストーリー

eine taube Nuss
直訳)空っぽのクルミ
→意味)価値のないもの

Ich habe nichts zu verlieren.
ぼくは失うものは何もない
→何でもできる

Mit ihm ist nicht gut Kirschen essen.
彼と一緒では美味しくチェリーが食べられない
→彼とは付き合いにくい

eine kalte Dusche
冷たいシャワー
→失

もっとみる
ふたり

ふたり

「ハトとハトみたい。二人がキスしているところって」
ハトも甘噛みするんだって、僕はサムの言葉で初めて気づいた。

雨上がりの昼、水たまりの水を飲むハトは、水面に映るもう一匹の自分を無視して、ごっくんと喉の動きがわかるほど雨水を飲み込んだ。

そのハトを指差して、なんて神秘的なんだろうと僕はもらしたんだ。

「ひとりで必死になっちゃうところが君みたいだね、マリウス」
サムは僕の襟足を撫で

もっとみる

鳥身

松浦理英子『犬身』を読んでから、一年。

性同一性障害ならぬ〝種同一性障害〟なのだ、私は人間じゃなくて犬だ!

というのが、趣を殴り捨てた『犬身』の要約だ。(個人的には、人間関係が面白いというか、ちくちく胸に刺さって痛かったので、あらすじだけでなく読んでみてほしい本です。)

忠実な果実のようにぬくぬく育って、はち切れんばかりに膨らんだ、決心がある。

朽ちる前に成就したいけれど、一体

もっとみる