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美しい手仕事にうっとりする、選句ノートの糸かがり製本

句集のように俳句を綴っていくためのノート、選句ノート

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コットン&リネン貼りに箔押しを施した上質な表紙に、パタンと180度開く糸かがり綴じ、背が離れる背開き上製本と、見た目の上質感にも書きやすさにもこだわってつくりました。

そのこだわりの裏には、製本職人さんの並々ならぬ努力と匠の技が…!

今回、開発にあたって、製本職人さんが私たちからの無理難題をたくさん聞いてくださり、この選句ノートができあがりました。
今日はそんな選句ノートの製本過程について、紹介しようと思います。

岐阜にある老舗製本工場「小川守商店」

選句ノートの製本をお願いしているのは、岐阜県岐阜市にある老舗製本工場「小川守商店」さん。
書籍製本や上製本を得意とする製本工場で、過去に製本を担当した本棚には、上製本の立派な句集もいくつか並んでいました。

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いよいよ製本スタート

印刷したものが納品されたら、折り加工と見返しの貼り込み加工をして丁合をとり、ページ順に並べます。

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選句ノートは「糸かがり綴じ」。
180度パタンと開いて書きやすいように、この製本方法を採用しています。ただ、この糸かがり綴じ、製本できる工場が本当に少ないんです。

小川守商店さんの糸かがりの機械は、昭和49年製の年代もの。
半世紀ものあいだ、大切に使ってきたことがわかる味わい深さでした。

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この製本機は、自動製本機ではなく、手で一折ずつセットし、足で踏んでガチャン!と綴じていくもの。

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綴じを担当するのは、小川守商店の小川志津子さん。
華麗な手捌きで、どんどん綴じていきます。

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綴じ終わったら、今度は背にでた糸をギュッと手で一本ずつ引っ張って、糸を締めます。ここで引っ張っておくことで、中の綴じ面が安定するそう。

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この工程で、糸が途中で切れたりほつれたりしていないかもチェック。万が一切れていたら、ほどいて最初からやり直しです。

その後、本を揃えて「均し機」にセットし、本の厚みを均等にするために圧をかけます。

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紙というのは、普通に折っただけだと、背側(折り側)が高くなってしまいますが、均等でないと美しい本になりません。

「均し機」を使って、きちんと“均した”本が右側。同じ枚数でも、こんなにも高さが違います。

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美しい本をつくるための丁寧な手作業「下固め」

続いて、美しい本をつくるために、いったん背を固める「下固め」の工程です。
実際に背に糊をつけて製本していくのはまだ先の工程ですが、現状でいったん薄く糊付をして仮止めしておきます。

背をピシッと合わせて並べ、専用の機械を使って圧をかけて…

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一本の紙のタワーのようになりました。
ここで使っている木の板や金属の枠のような特殊な道具も、もう何十年も使われているものだとか。

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背の部分に、薄く糊をつけていきます。

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本番の糊付はこの後の工程で行いますが、その前にここで仮止めをして、しっかりと乾かします。
「これは後工程のために仮止めするための糊なので、背をつくるときはまた改めてしっかり糊付けします」と、作業をしながらこの工程のことについて教えてくれたのは、今回の選句ノートをメインで担当してくださっている小川真希さん。
ページの内部にまで糊が染みたり付着したりしないよう、糊をつける前にしっかりと圧をかけておくんだそうです。

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これで、製本作業中に糸がほつれてページが抜けたりする心配はありません。糊が乾くまで、数十分、しっかり乾かします。
「後工程のためのひと手間」。
手間と時間をかけて行う、丁寧な手仕事を見せてもらいました。

見返しを貼り付けて、断裁します

下固めの糊が乾いたら、本に見返しをつけます。
ここでも糊と専用の刷毛を使った手作業。一冊ずつ、丁寧に貼り付けていきます。

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この工程を担当してくださったのは、小川亜矢さん。
慎重に、黙々と作業をされていました。

句具の選句ノートは背開き上製本で、表紙が背から離れる仕様。
見返しを貼り付けた背が見えるので、ここの作業の美しさが本の完成度にとても影響する、とても大切な工程です。

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見返しがついたら、いよいよ断裁。
本の小口の美しさを決める大切な作業。4冊ずつ、断裁機にセットして…

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ガシャン!

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これを、天・地・小口と、三辺、順番に行なっていきます。

本の中心に、しおりをつけます

続いて、しおりを一本つけます。

本の中心をひらいて、

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すーっとしおりを差し込んだら、

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背側に糊をつけて、見返しを貼り付けて乾かします。

しおりがついたら、見返しに糊をつけて背をつくっていきます。
紙は、水分を与えると伸びて柔らかくなる性質があるので、一度糊を綺麗に伸ばしてひと呼吸おき、紙に水分が馴染んで柔らかくなったところで、再度糊をつけて背に巻いていきます。

こうすることで、背に不自然な皺が寄ることなく、美しく貼り付けることができるそうです。

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続いて、背の部分にヘラのような道具を当ててこすり、背と見返しをしっかり接着していきます。
綴じた本がほつれたりするといけないので、ここで糊と本体とをしっかりと密着させます。それによって、安定感のある本になるのです。

背は密着しますが、本文は16ページごとの糸かがり製本で閉じてあるので、パタンと180度、気持ちよく開きます。

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ここまでできたら、いよいよ表紙を貼り付けます。

全体に薄く糊を塗って…

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あらかじめ見返しを貼って用意しておいた表紙に、そっと重ねて糊付けしていきます。

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ここまで終えたら、2〜3冊できるごとに、圧をかけて糊を定着させるための機械にセットし、しっかりと接着し、乾燥。

乾いたら検品して、ケースに収納し、選句ノートの完成です。

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製本職人の美しい手作業

小川守商店さんには、昔ながらの機械がたくさんあり、それらを駆使しつつも、基本的には全ての工程を手作業で行っています。

丁合も、糸かがり綴じも、しおり付けも。
もちろん、見返しの接着や表紙の仕上げなど、一つひとつの作業がとても丁寧で美しく、見ているこちらが何度も感動のため息をもらしてしまうほどでした。

そんな丁寧な手仕事のおかげで、この上質な選句ノートができあがりました。

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職人の手仕事が感じられる、一冊のノート。

手にとったときには、この美しい製本もぜひ、じっくり見てみてください。
つくり手の、ものづくりに対する思いのようなものも、きっと感じてもらえると思います。


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