久下裕利

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卒論のミカタⅢ〜テーマ別論文紹介〜

昭和女子大学名誉教授 実践女子大学文芸資料研究所客員研究員 久下裕利(Kuge Hirtoshi) (1)平安時代の結婚制度について NHK大河ドラマ「光る君へ」の放送を見越して、一段と関係書籍の出版が相次いでいる昨今だが、それに伴って新聞のコラムなどでも新書を採り上げて紹介する記事も増している。その中で最近目に止まったのが、朝日新聞の「田中大喜の新書速報」(2024年1月13日(土)朝刊)であって、服藤早苗著『「源氏物語」の時代を生きた女性たち』(NHK出版新書、2

    • 卒論のミカタⅡ(5)-雑感書評-中野幸一著『深掘り!紫式部と源氏物語』(勉誠社、2023年刊@定価2,400円)を読んで

      昭和女子大学名誉教授 実践女子大学文芸資料研究所客員研究員 久下裕利(Kuge Hirtoshi) 〜『源氏物語』研究の最前線(5)〜 -雑感書評- 中野幸一著『深堀り!紫式部と源氏物語』(勉誠社、2023年刊@定価2,400円)を読んで 本書はいわゆる啓蒙書ですが、〈深掘り〉の程度によっては研究者でも興味を寄せるところとなるでしょう。まず目次を掲げてみましょう。 第1部 深掘り!紫式部 [1]…従来の紫式部像 [2]…学才に対する自負 [3]…家系と家庭環境 [4]

      • 卒論のミカタⅡ(4)神明敬子『源氏物語をめぐってー紫式部は何を書き残したのか』(幻冬舎、2020年5月刊)を読んでみて

        昭和女子大学名誉教授 実践女子大学文芸研究所客員研究員 久下裕利(Kuge Hirtoshi) 〜『源氏物語』研究の最前線(4)〜 ◇神明敬子『源氏物語をめぐってー紫式部は何を書き残したのか』(幻冬舎、2020年5月刊)を読んでみて  神明敬子(しんめい・よしこ)の新著『源氏物語をめぐってー紫式部は何を書き残したのか』は、『源氏物語』の成立に関して言及した著作物ですが、いま令和の時代に成立の問題をあらためて俎上に載せるには余程の問題意識と新しい知見の投入が必要だと思われ

        • 卒論のミカタⅡ(3)宇治十帖成立の真相ー亡き具平親王に捧ぐもう一つの源氏物語ー

          昭和女子大学名誉教授 実践女子大学文芸資料研究所客員研究員 久下裕利(Kuge Hirtoshi) 〜『源氏物語』研究の最前線(3)〜 ◇宇治十帖成立の真相ー亡き具平親王に捧ぐもう一つの源氏物語ー  ひとつのエピソードを記すところから始めることとします。もうあれこれ35年前位のことですが、私が勤めることとなった昭和女子大学には非常勤講師として東洋大学の石田穰二氏が長年居座っていました。非常勤にも「学苑」に投稿する権利や毎年定期的に開催される教員の研究会で発表する権利も与

        卒論のミカタⅢ〜テーマ別論文紹介〜

        • 卒論のミカタⅡ(5)-雑感書評-中野幸一著『深掘り!紫式部と源氏物語』(勉誠社、2023年刊@定価2,400円)を読んで

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          卒論のミカタⅠ (2)拙稿「『紫式部日記』「御冊子作り」後の式部」脱稿後の後始末

          昭和女子大学名誉教授 実践女子大学文芸研究所客員研究員 久下裕利(Kuge Hirtoshi) ~紫式部と『紫式部日記』研究の最前線(2)~ ◇拙稿「『紫式部日記』「御冊子作り」後の式部」脱稿後の後始末(昭和女子大学「学苑」令和3〈2021〉年1月号掲載予定) (1)石川徹「紫式部日記管見ー「思ひかけたりし心」をめぐってー」(古代文学論叢第二輯『源氏物語とその周辺』武蔵野書院、昭和46〈1971〉年)について  当該論文は『日記』(略称)の寛弘五(1008)年十月十六日

          卒論のミカタⅠ (2)拙稿「『紫式部日記』「御冊子作り」後の式部」脱稿後の後始末

          目次

          卒論のミカタⅠ ~紫式部と『紫式部日記』研究の最前線(1)~ 久保朝孝著『紫式部日記論』(武蔵野書院、2020年6月刊)に関する批判を通して知る現存『日記』の問題点 ~紫式部と『紫式部日記』研究の最前線(2)~ 拙稿「『紫式部日記』「御冊子作り」後の式部」脱稿後の後始末 卒論のミカタⅡ ~『源氏物語』研究の最前線(1)~  若紫巻が『源氏物語』の出発点であることの是非について ~『源氏物語』研究の最前線(2)~ 源氏絵及び絵巻の領域―山本春正画『絵入り版本』につ

          卒論のミカタⅡ(2)源氏絵及び絵巻の領域―山本春正画『絵入り版本』について

          昭和女子大学名誉教授 実践女子大学文芸資料研究所客員研究員 久下裕利(Kuge Hirtoshi) ~『源氏物語』研究の最前線(2)~ ◇源氏絵及び絵巻の領域―山本春正画『絵入り版本』について  上掲の絵画は令和元年1月16日の朝日新聞夕刊において「幻の源氏物語絵巻「夕顔の死」「盛安本」一部仏で発見」という見出しで報道掲載されていたのです。 https://www.asahi.com/articles/DA3S13850329.html(朝日新聞デジタル記事。トップ画像

          卒論のミカタⅡ(2)源氏絵及び絵巻の領域―山本春正画『絵入り版本』について

          卒論のミカタⅡ(1)若紫巻が『源氏物語』の出発点であることの是非について

          昭和女子大学名誉教授 久下裕利(Kuge Hirtoshi) 実践女子大学文芸資料研究所客員研究員 ~『源氏物語』研究の最前線(1)~ ◇若紫巻が『源氏物語』の出発点であることの是非について  昭和女子大学定年退職後、2年ほど福家俊幸氏(早稲田大学教育学部教授)の尽力で早稲田大学教育学部で非常勤講師として教壇に立ちました。教室の建物は私が大学院生時代通った建物のままであった(指導教授の研究室がこの建物にあった。院生の授業は研究室で行なうのが常である)。その授業は主に平安時

          卒論のミカタⅡ(1)若紫巻が『源氏物語』の出発点であることの是非について

          卒論のミカタⅠ(1) 久保朝孝著『紫式部日記論』(武蔵野書院、2020年6月刊)に関する批判を通して知る現存『日記』の問題点

          昭和女子大学名誉教授 久下裕利(Kuge Hirtoshi) 実践女子大学文芸資料研究所客員研究員 ~紫式部と『紫式部日記』研究の最前線(1)~◇久保朝孝著『紫式部日記論』(武蔵野書院、2020年6月刊)に関する批判を通して知る現存『日記』の問題点  私の当面の関心は現存『紫式部日記』の成り立ちについて再検討するとともに、それを『源氏物語』の創作過程ともリンクさせて、当『日記』の有様について考えてゆくことです。ただこの問題も古くて新しい課題として浮上してきていると思われま

          卒論のミカタⅠ(1) 久保朝孝著『紫式部日記論』(武蔵野書院、2020年6月刊)に関する批判を通して知る現存『日記』の問題点