【B-1-2】勇者さまっ!出番です!
これは、選択肢によって展開が変わる
「なんちゃってゲームブック風物語」の一部です
▶ぼうけんをさいしょからはじめるばあい
https://note.com/kudotomomi/n/n9a641f1d1573
▶ぜんかいまでのぼうけんをふりかえるばあい
https://note.com/kudotomomi/n/n7deaaddc7636
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最終章
魔王・ブランドールのいるヘレンクヴァール王国を目指して、勇者とミスティは旅を続けていた。
やはり最果ての国と称される場所。行けども行けどもゴールが見えず、くじけそうになったが、やっと数日かけて国境あたりにたどり着いた。霧が深い。常にモンスターがそこいらに潜んでいる雰囲気があり、勇者たちは警戒していた。
ミスティ
「やはり、結界がはってあるようですね」
勇者
「入れないってことか?」
ミスティ
「これくらいの結界、わたくしにとって何の支障もございません。いきますわよ」
ミスティが呪文を唱える
ミスティ
「リムパプール!!」
結界を解く呪文の効果があり、あたりを包んでいた霧が晴れ、大きな門が見えた。
門のところまで進んでみたが、到底人間が開閉でいる大きさではない。とはいえ、モンスターに開けてくれと頼めるわけもなく…
勇者
「強行突破するしかないか…」
ミスティ
「そのようですわね。ぶっ壊しますわ!」
うすうす感じてはいたが、ミスティはちょっと過激なところがあるな…勇者はそう思った。見た目は可愛い幼女なのだが、敵に回してはいけないタイプである。
ミスティ
「マグノボムミリアン!!!」
頑丈な壁や扉が粉々になる。
勇者
「それで、1級魔法じゃないんだ…?」
ミスティ
「これは3級くらいですわね」
勇者とミスティは、城のあちこちを破壊して強引にルートを確保し、魔王の元へ急いだ。途中強い悪魔3兄弟、でかいドラゴンなど、ラストバトル前にふさわしいモンスターの数々の歓迎を受けたが、レベルの高い二人は余裕の表情。バッタバッタとモンスターを倒していった。
勇者がきらびやかな扉の前で立ち止まった。
勇者
「ここが王座の間だな。ついに決着をつける時が来た…」
ミスティ
「腕が鳴りますわね」
勇者
「ミスティ、無理はするなよ」
ミスティ
「ええ。勇者さまも」
二人は顔を見合わせてうなずくと、扉を蹴飛ばし、玉座の間に入った!
王座には、魔王ブランドールが座っている。
勇者
「魔王ブランドール!!我はお前を倒しにきた勇者である。覚悟しろ!!」
緑色の美しい長い髪…端正な顔立ち…飛び出た二本の角。まさに魔王といういでたち。ブランドールは真っ赤な血の色をした瞳をカッと見開いた。
ブランドール
「なんだ?お前は…勇者だとぅ?オレの視界に入るなどいい度胸だな。死ににきたのか?ああ?」
勇者
「世界の平和を乱す奴は俺たちが許さん!」
ミスティ
「あやまるなら今のうちよ。あとから泣いてわびたって許さないんだから!」
ブランドールは、鼻で笑った。
ブランドール
「お前たち人間風情に何ができるというのだ。オレは世界最強の魔王だ!
ひょろひょろの勇者や、こどもになどに負けるわけがなかろう!」
勇者はブランドールの言葉に青ざめた。
勇者
「あ…!」
勇者は咄嗟にミスティの方を観る。
ミスティは震えていた。
ミスティ
「こども…ですって?」
ブランドール
「ん?なんだ?ちびっこ。何か言ったか?」
ミスティ
「この…大魔導士の血筋 ”マクミラン家” の出身…100年に一人生まれるという、”電光の大魔導士”と言われているこのわたくしを、こども…ちびっこ…と」
ブランドール
「へぇ?大魔導士なの?そんなこどもなのに?」
ミスティの顔が真っ赤になった。
勇者と最初に出会ったあの時と同じように…
勇者
「やば…」
ミスティ
「馬鹿にしたわね!!こどもじゃないのよこれでも!!れっきとしたレディなのよ!!!もーあったまきた!!許せない!!!」
ミスティは1級魔法を唱える構えを見せた。
勇者
「ああああああ!!やばいやばい!だめだめ!ミスティ!いまここでその魔法使ったら全部吹っ飛ぶ!」
ミスティ
「言ってはならぬことをいったのよ、こいつは」
ブランドール
「ほほう、こどものくせに魔法が使えるのかぁ。人間にもちょっとは骨のあるやつがいたもんだ」
勇者
「ちょっとちょっと!魔王も煽るのやめて!死ぬよ!あんたも俺たちも!」
ブランドール
「え?」
勇者
「あのね!ミスティが唱えようとしてるのは1級魔法なんだよ。これを唱えたらあんたも俺も確実に死ぬし、この国も、エーデルムート王国あたりまで吹っ飛ぶんだよ!!」
ブランドール
「まさかぁ~」
勇者
「冗談言わねえって!こんな時に」
ブランドールも、今自分が置かれている状況をやっと理解した。
ミスティ
「ふはははは!みんな焼き尽くしてやる~!」
ミスティは半分自我を失っている!
もはやミスティが魔王のような顔つきだ。
かまえた手のひらの中に魔力が集中し、火の玉がどんどん大きくなっていく。
ブランドール
「怖い怖い!!え!これどうしたらいいの?」
勇者
「とりあえず土下座して謝って!お願い!ミスティにごめんなさいして!!」
ブランドール
「謝る!?オレが?土下座だとぅ?!」
勇者
「謝ってくれないとすべてが終わっちゃうから!早く!!」
ブランドールは納得のいかない様子だったが、血の気の引いた勇者の顔をみて恐ろしくなった。魔王もやはり命が惜しい。意を決してその場に土下座した。
ブランドール
「ミスティさん、すみません!!オレが悪かったです。レディの大魔導士様に向かって無礼なこと言いました!!申し訳ございませんでした!このとおりお詫びいたします。だからどうかいったん怒りを鎮めていただけませんか!本当にすみません!!」
ミスティ
「お仕置きが必要ですわね」
ミスティは、冷たくそう言うとブランドールめがけて呪文を放った!!
ミスティ
「マグノボムミリアン!!!」
ブランドール
「ぎゃあああああ!!」
火の玉が、ブランドールの横を掠めて王座の間の壁に穴をあけた。ブランドールは放心している。
ミスティ
「土下座して謝っていただいたので、1級から3級に落としておきましたわ」
そういいながらミスティが微笑んだ。怖い。
ブランドール
「人間の世界に、こんな恐ろしい奴がいるなんて…」
ミスティ
「なにかいいまして?」
ブランドール
「いえ!なにも!」
土下座状態のまま足がすくんで動けないブランドールのもとに勇者が近づき言った。
勇者
「さて、どうするかな?」
勇者は剣の切っ先をブランドールの首にあてた。
ブランドール
「オレの負けだ。おまえたちの世界を荒らしてしまったのは悪いと思っている。好きにしろ。煮るなり焼くなり」
ブランドールはあっさりと負けを認めた。随分イメージと違うな、勇者はそう思った…そして、ここでこいつの首をとって本当に世界は平和になるのか?とふと考えてしまった。
勇者
「エーデルムート王国に報告するには、あんたの首が必要なんだけど…グロいの苦手なんだよね、俺」
勇者はむんずとブランドールの角をつかんだ。
勇者
「もし、よかったらこの角1本くれよ」
ブランドール
「え?」
勇者
「切ってもどうせ伸びるんだろ?」
ブランドール
「まぁ、そうだが…」
勇者
「俺、この角持って帰って魔王に会って話し合ってきたよって報告するからさ。だから、もう人間を襲ったり、町や村を荒らさないって約束してくれ」
ブランドール
「それでいいのか?」
勇者
「ああ。お前だって、せっかくこの世に生まれてきたんだから命大事にしたいだろ?もし、悪いことしたら、ミスティがお前の城めがけて1級魔法をぶっぱなすことにするから、そこは覚悟しとけよ?」
ミスティ
「つぎは手加減しませんわよ」
ブランドール
「わ、わかった」
勇者が剣を一振りすると、ブランドールの角が切れ、カランと床に転がった。勇者はその角を拾い上げ布に包み、大事に懐にしまった。
勇者
「じゃ!俺たち帰るわ!悪さするようだったらまた来るからな!」
勇者たちは、城を後にした。
勇者
「来た道戻るの辛いな~長いよ~」
ミスティ
「勇者様、もうこの地域に結界はないので、馬車に戻ったら時間短縮のため”ビューン”で帰りますわよ」
勇者
「え!あの呪文で帰るの!?身体もつかな…」
ミスティ
「それに、もう”ビューン”しか魔法を使える力が残っていませんの。魔法水もなくなってしまいましたし」
勇者
「え、そうなんだ?」
ミスティ
「実は…さっき、1級魔法を使える力はもう残っていませんでしたのよ」
勇者
「え!?ぜったい1級魔法の雰囲気だったけど…カマかけたの…」
ミスティは勇者にウィンクした。
勇者
「怖い…」
ミスティ
「なにかいいましたか?」
勇者
「いえ…」
勇者は、これまでどんなに強いモンスターを倒しても、どんなに難しいクエストをクリアしても得られなかった【満足感】を手に入れた!そして言い知れぬ【疲労感】も…
その後、エーデルムート王国に戻ったふたりは、王に事の経緯を「ざっくり」報告し、魔王の角を献上した。また、ヘレンクヴァール王国の様子を見るために、勇者とミスティはしばらくエーデルムート王国にとどまることになった。
すっかり平和になった国で、勇者は国民たちの農業を手伝い、農業もできる勇者として人気者となった。
ミスティは、国王に気に入られ、エーデルムート王国で魔法学校を開くことになった。魔法使いの資質を持っている国民にはもちろん、国外からも魔法を勉強したい者たちが次々と移住してきて、国は活気を取り戻した。
心を入れ替えたブランドールはミスティの魔法のトラウマからすっかりおとなしい性格となり、人間とも友好的な関係を築くよう努めるようになった。いまでは、エーデルムート王国で収穫された野菜を輸入して、モンスターたちが人間を襲わないよう食育に力を入れているらしい。
世界に、平和な日々が戻ったのであった。
(おわり)
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最後まで読んでくださりありがとうございました!
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