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百鬼庵がたり(完全版)第1章 ヒトガタ 1

この話しは以前アップした百鬼庵がたりの完全版です

ラストは同じですが、加筆修正し、100話全話書いています



第1章 ヒトガタ


人形(ひとがた)人間に似せて作った造形物にんぎょうともいう主に愛玩に使われるが呪いにや身代わりとしても使用され、時に霊の器にもなる





俺はネットの廃墟体験サークルに入っている

メンバーで集まって探検し、結果をネットにアップするものだ

大体が近場なのでメンバーも自然と顔見知りが集まる

お互いにハンネで呼びあっているので誰も俺の本名を知らない

俺のハンネはジュンジ

いつも一緒に行くメンバーはハンネでタクミとトモヤ

主にその3人で廃墟探検をしていた

今回もこのメンバーで廃墟探検をしていたが

「あれ?迷った?」

先導していたタクミが道に迷い

「マジかよ!タクミ、お前この辺知ってるって言ったじゃねーか!」

「言ってねーよ!」

真っ暗な山の中に3人で途方にくれていた

「元々トモヤが夜が良いって言うから夜にしたのに」

「人のせいにすんじゃねえ」

「止めろって!」

元々仲の良くないタクミとトモヤが喧嘩状態になり、俺が宥めても聞かない

「ともかく今夜は野宿だな。何処か屋根のある場所を探そうぜ」

目的を示唆し

「そうだな。ジュンジの言う通りだ。何処か良いところ…あっ!」

不意にトモヤが声をあげる

「あそこに何か光ってるのがある!」

「マジか!」

光を頼りにその場所に行くと

ボロい寺のようなもの

「寺?」


寺の山門と玄関?に貼られた紙

『百鬼庵 百物語会場』


「なんだこりゃ?」

「知るか!それより人が居るんならお邪魔させてもらおうぜ」

俺の提案に

「そうだな。布団はなくても野宿するよりはマシ」

トモヤは賛成し

「えー?こんな怪しい会に参加するのかよ!」

タクミは反対した

「じゃあタクミ、お前1人で野宿すれば?おれはジュンジとここに入れて貰う」

「はあ?そんなこと言ってないだろ?」

「どうせ俺のやること全部嫌なんだろ」

「その勝手に決めつける所が嫌なんだよ」

「もう止めろってお前ら!」

また喧嘩を始めようとした2人に

「ねーぇ!入るの?入らないの?」

可愛い声が響いた

「あ、ごめんなさい」

振り向くと水色のキャミソールにミニスカのギャル風の女の子

「君、ここに入るの?」

思わずタクミが女の子にたずねる

「だってメンバーだし」

スマホを弄り

「もう皆集まってるんだけど」

「あの、俺達迷子になっちゃって。もしよかったらここに泊めてくれない?勿論イベントの邪魔はしないから」

「良いよ~!飛び入り大歓迎だから」

にこりと笑い、中に入っていった

「あの子可愛いな。彼氏といるかな?まあ関係ないけど」

タクミがニヤニヤと笑う

この男はとにかく女にだらしがない

待ち合わせ場所で二股がバレて修羅場っているのを何度も見かけた

聞くところによると友人の彼女も奪ったとか

サークルの付き合いでなければ関わりたくもない

「こっちだよ」

案内された先には年代も性別も違う青い服を身に付けた男女がいた

「あ、自己紹介がまだだったね。あたしカナ。ハンネだよ」

「ノブヒロです」

と青いポロシャツに黒いズボンの細身の中年の男が頭を下げる

「この子はエリナだよ」

カナが紹介するもう1人の女子は白いブラウスに青いロングスカートのおとなしめの落ち着いた女子

「ヨシキっす!」

青いアロハシャツに青いハーフパンツを着た金髪の見た目からしてチャラい野郎もいる

そもそもこいつは百物語が出来るのか?

そんな場違い感が生まれる

Tシャツにジーンズのこちらも場違いだが

「初めましてのお客様がいらっしゃるので改めて自己紹介を。私は百鬼庵の管理人をしているヤギョウと申します。このサークルの趣旨は自分が持っている怖い話不思議な話を百鬼庵の主人であるおひいさまにお聞かせする会です」

時間になったのか青い着流しの長身の男が現れた

この会のルールはこうだ

メンバーは全員青いものを身につける

話すときはろうそくを持つ

語り終えたらそのろうそくに火を灯す

1人何話でも良いが実話であること

トイレはすぐ隣にあり、出入りは自由だが百物語の最中は外に出ることは禁止

飲食は自由だが、アルコールと喫煙禁止

最後に

「この会の主役は今からいらっしゃるおひいさまです。おひいさまは大きな物音や声を大変嫌います。なので大きな物音や声は決して出さないで下さい」

全員が頷き

「ではおひいさまをお迎えします」

部屋を出ていったヤギョウは本の1分程で戻ってきた

青い柄もない着物を着た大人の女性…いや人形を抱えて来た

「人形?」

思わず声を漏らす俺に

「…ふ…」

人形の口元に笑みがこぼれる

「…え?」

瞬きするも人形は無表情で

「今…笑った?」

思わず聞いた

「は?脅かすなよ」

「ジュンジ、お前早速俺達にどっきりを仕掛けてんのか?」

ビビるトモヤに吹き出すタクミ

「いや、見間違いかも」

恥ずかしくなって小さくなった俺に

「いや、本当に動いたかもしれないよ」

エリナがクスリと笑い

「これは幸先が良い」

ノブヒロも頷く

「ここは百物語の会場で、おひいさまが主役です。何が起きてもおかしくはありません」

更にヤギョウの放った台詞に唖然とした

「九十九話まで終わればおひいさまが一番面白い話を話された方を選ばれます。その人はおひいさまと一夜を共に過ごします」

「それってつまり…」

「そういうこと」

ヨシキがいやらしい笑みを見せる

「俺達は残念ながら選ばれた事は無いけど、スッゲー良いらしい」

「へー…って何で女子がいるんすか?女同士が好き?」

思わずタクミも聞く

「さあ?もしかしたらヤギョウさんとのチャンスがあるかもよ」

ムフフと笑うカナ

ヤギョウは確かに美形だ

悔しいが顔面偏差値ではここの全員が負け組だ

「それでは百物語を始めましょう。一話目は…」

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