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くちびるの会のココロミとトリクミ その1 〜オーディション編〜 実施経緯と募集要項の記載について


はじめに

2024年2月22日 (木)〜2月27日(火)
下北沢OFF・OFFシアターにて
くちびるの会の第8弾『猛獣のくちづけ』が上演します。

本記事は、本公演の開幕に向けて、くちびるの会が行なっている、「試み」と「取り組み」について、紹介を行うものです。
記事の末尾に公演詳細と、サポートについての記述がございます。ぜひご一読下さい。

くちびるの会第8弾『猛獣のくちづけ』が受けている助成について

本公演は、以下から助成を受けております。

・日本芸術文化振興基会 日本芸術文化振興基金 令和5年度 現代舞台芸術創造普及活動 演劇分野
・公益財団法人 東京都歴史文化財団(アーツカウンシル東京) 令和5年度(2023)年度 第1期 東京芸術文化創造発信助成 カテゴリーⅠ 演劇分野

助成金の性質としての多少の違いはありますが、上記の2つはいずれも「公的助成」に位置付けられるものです。
もちろん、事業終了後は、各機関に報告書を提出し、様々な(助成金の使途や、助成金によって実現したこと、今後の課題など)を報告します。

しかし、公的機関から「公的助成」を受けている以上、助成金によって可能になった事は、公的機関のみへの報告にとどまらず、多くの方々にお知らせする必要があるのでは、と思い、noteの筆をとった次第です。

助成金に採択されることで、事前に収入として見込める金額が確保でき、それにより事業における様々な取り組みを行うことができます。

「くちびるの会のココロミとトリクミ」に記載されている内容は、これらの助成金によって実現されていることも多々ありますので、その点をご留意いただき、ご覧になってくださいましたら幸いです。

オーディションを行った経緯について

くちびるの会は、『猛獣のくちづけ』の出演者を募るオーディションを2023年8月に行いました。

くちびるの会が、出演者オーディションを行うのは、2019年に行った、第六弾『疾風のメ』(於:吉祥寺シアター)以来です。

くちびるの会は、常に出演を約束された所属俳優を持たない団体です。
(※くちびるの会が、常に出演を約束された所属俳優を持たない理由については、可能であれば別の記事で触れようと思います。)

それ故に、基本的にキャスト陣は、常連客演の「いつものメンバー」と「新メンバー(新規客演さん)」で構成されます。

前回公演 くちびるの会第7弾『老獣のおたけび』では、「いつものメンバー」に加え、劇団猫のホテル/阿佐ヶ谷スパイダース所属の中村まことさんに出演していただきました。

演出家としては、常に「新メンバー」キャストを創作に迎えることで、新鮮な空気を取り入れ、豊かで刺激的な創作を行いたいと考えております。

加えて、プロデューサーを兼ねる劇団代表としては、新規客演さんを迎えることが、新規観客層の創客につながると考え、お呼びしている次第です。

また、昨今、コロナ禍も相まって、新たな俳優さんとの出会いが乏しくなってしまいました。

これらの経緯から、今回『猛獣のくちづけ』では出演者オーディションを行うことに致しました。

出演者募集の告知の際に、注意した点

「出演者オーディションを行う」と言うのは簡単ですが、告知文章や応募条件など、様々なことを考えねばなりません。

その中でも、くちびるの会として、最も意識したのが、
「参加者が、安心してオーディションに参加できるか」
ということです。

特に近年、舞台芸術界においては「ハラスメント」「やりがい搾取」が非常にデリケートな問題となっております。

・参加者の心理的安全性をきちんと担保すること。
・参加者の出演条件(労働条件)を可能な限り明確にすること。

この二点に関しては、特に注意を払いました。

当然のことではありますが、基本的に、すでに決まっている情報(稽古時間や稽古期間、取り扱う作品の内容等々)は可能な限り開示しました。

募集告知の際に注意した点、全てに触れていたらキリがありませんので、
この記事では、特に「最低ギャランティの明記」「出演役の性別表記」「ハラスメント対策の明記」について触れたいと思います。

以下に、くちびるの会の出演者オーディションのページリンクを記載させていただきました。参照しながらご覧いただけましたら幸いです。
※外部リンクへとびます


《最低ギャランティの明記》

今回のオーディションでは、告知の際に、出演ギャランティの最低金額を明記することにいたしました。
募集要項に記載した文章は、以下の通りです。

[報酬]
 110,000円(消費税・源泉所得税含む)をお支払いします。
 ※上記の金額は、稽古参加費と出演料を合わせた金額となります。
 ※上記の金額は、お支払いする最低金額とし、出演が決まった際には、劇団と相談の上、ギャランティを決定させていただきます。

これについては、オーディション告知をした段階から様々な反響がありました。
「出演金額の明記は珍しい」や「OFF・OFFでこの金額出せるの!?」などなど。

出演の最低金額を告知文に載せた理由としては、やはり
「参加者が、安心してオーディションに参加するため」
「参加者の出演条件(労働条件)を可能な限り明確にする」
ためです。

ギャランティの目安だけでも分かっていれば、俳優さんも安心して応募できる理由の一つになりますし、また、出演交渉の際に俳優さんと団体側と金銭感覚の齟齬も未然に防げるのでは、と考えました。

以上の理由から、出演ギャランティの最低金額を明記することにいたしました。

この金額表記を実現したのも、助成金に採択されたことが大きな要因です。
公演前に収入金額が判明している事で、出演料の目安を提示することが、可能になり易くなりました。

《出演役の性別表記》

今回、出演役の性別表記に関しては以下のように記載しました。

[募集人数]
 1〜2名。
・本オーディションで募集する役は、男性役となります。

記事冒頭に貼り付けた、オーディション募集要項をご覧になっていただければわかると思いますが、
「応募資格」の欄に「性別」を記載することはしませんでした。
そのかわり、募集人数の欄に「本オーディションで募集する役は、男性役となります」と表記を行いました。

理由としては、主に二点。

  • 「応募資格:男性」という表記に、山本として違和感と抵抗感を持ったから。

  • オーディション開催段階では、脚本が、長編化の構想・草案状態であったこと。

です。
オーディションでの出会いによって、新たな役の人物像が浮かぶのでは、という思いもあり、上記の表記をしました。

以上の理由から、「出演役の性別表記はする」が、「“応募資格”には、性別を明記しない」という選択を行いました。

この表記の仕方が果たして正しいのか、いまだに思考を巡らせている最中ですが、現在出せる結論として上記の表現を行いました。

《ハラスメント対策の明記》

ハラスメント対策についても、明記いたしました。文章は下記です。

【ハラスメント防止のための取り組み】
くちびるの会では、独自のハラスメント防止ガイドラインを有していないため、『(有)アゴラ企画、こまばアゴラ劇場、劇団青年団、江原河畔劇場「ハラスメント防止新ガイドライン」』を参考に、ハラスメント防止に務めます。本オーディションでは、恫喝、罵倒などの威圧的、暴力的な言動や、許可のない身体的接触は行いません。また、くちびるの会代表者・制作者は複数のハラスメント防止講座を受講しており、安心安全なオーディション・創作環境を整えるよう務めます。

代表者の僕も制作者も、機会があれば、ハラスメント防止講習に参加し、逐次、認識をアップデートしようと試みています。

しかし僕自身の男性性や、代表・脚本・演出という立場の兼任が、創作現場においての権力勾配の要因になることは、避け難い事実です。
常に、最大限の注意と、配慮を行いながら創作を続けていきたいと考えております。

ハラスメント対策の表記は、特にオーディションの際には、重要だと考えました。

参加者の俳優さんにとっては、「初めまして」の環境に飛び込む最初の一歩です。
参加者の俳優さんとしても、とても勇気がいることであると同時に、現場が「危険であるかもしれない」という不安にも満ちていることと思います。

その不安を少しでも解消できればと、表記をいたしました。

くちびるの会は、「新たな俳優さんと出会いたい」という思いでいます。
実際に出演に至ってないオーディションの段階では、俳優さんに応募をいただいただけで「ありがとうございます!」という気持ちでおります。
恫喝、罵倒などの威圧的、暴力的な言動は、もとより行うつもりはございませんが、改めて記載いたしました。

おわりに


さて以上で、
「くちびるの会のココロミとトリクミ その1 〜オーディション編〜 実施経緯と募集要項の記載について」
を終わります。

次回は、
くちびるの会のココロミとトリクミ その2 〜オーディション編〜 実際のオーディションで心がけたこと

です。
本番まで時間のある限り、noteを更新しつづけようと思いますので、よろしければご覧ください。

文)山本タカ

※以下の文章は、毎記事末尾に記載させていただきます。

【🐊猛獣のくちづけ 公演情報🐊】


最新の情報は、公式HPをご覧ください!


『猛獣のくちづけ』チラシ

第34回下北沢演劇祭参加作品

『猛獣のくちづけ』
2024年2月22日(木)〜2月27日(火)OFF・OFFシアター

あの『猛獣のくちづけ』が長編になってかえってきた!!
きっと誰かが待望の長編化!とりあえず、寂しがりやは全員集合!

作・演出|山本タカ

執筆サポート|須貝 英

出演|薄平広樹 菅宮我玖 倉島 聡 喜田裕也 近藤利紘 北澤小枝子

「猛獣のくちづけ」とは、2018年にくちびるの会が、仙台・東京の二都市で上演した、とっても変な40分の短編演劇。倉庫で働く派遣労働者の男の腰は悲鳴をあげるし、町では人がワニになる怪異が頻発する物語。

この変な演劇、初演上演後の反響は凄まじいものだった。「好きでしたよ、あのワニの芝居」と、作・演出の山本タカに、みんなが "こそっと” 伝えてくれた、くちびるの会の代表作品。

サポートのお願い

くちびるの会では、大人向けの劇場公演と共に、子ども向け演劇「紙おしばい」を創作しております。
「紙おしばい」は、コンパクトな道具料でどこへでも出張し、本格的な舞台芸術を体験できる演劇表現です。
子どもが舞台芸術に触れる機会格差の解消のために活動を行なっております。

紙お芝居については、公式HPをご覧ください↓

このnoteにお寄せいただいたサポートは、主にくちびるの会の

  • 大人向け公演のための試み、取り組み、創作資金

  • 子ども向け演劇「紙おしばい」のための試み、取り組み、創作資金

に充当させていただきます。
みなさまのサポートによって、公演単位の助成や、自己資本のみでは難しい試み、取り組みを行っていこうと考えております。

※サポートのためには、ノートへの会員登録が必要です。
※簡単な入力事項の入力とクレジットカードの登録をしていただければサポートが可能です。
※5分ほどのお時間で入力可能です。

舞台芸術界活性化のため、子どもの舞台芸術に触れる機会格差解消のため、未来の舞台芸術の担い手・観客の創出のため。

よろしければ、サポートのほど、よろしくお願いいたします。

◯noteへのサポートの仕方は、note公式ペルプページをご覧ください↓https://www.help-note.com/hc/ja/articles/360009035473-%E8%A8%98%E4%BA%8B%E3%82%92%E3%82%B5%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88%E3%81%99%E3%82%8B

◯noteへのサポートの仕方 動画説明(note公式ペルプページより)


いただいたサポートは、くちびるの会の活動(試み、取り組み、創作費用)に充当させていただきます。