見出し画像

くちびるの会のココロミとトリクミ その2 〜オーディション編〜 実際のオーディションで心がけたこと



はじめに


2024年2月22日 (木)〜2月27日(火)
下北沢OFF・OFFシアターにて
くちびるの会の第8弾『猛獣のくちづけ』を上演します。

本記事は、本公演の開幕に向けて、くちびるの会が行なっている、「試み」と「取り組み」について、紹介を行うものです。
記事の末尾に公演詳細と、助成金についての説明、サポートについての記述がございます。ぜひご一読下さい。

実際のオーディションに向け

前回の記事
「くちびるの会のココロミとトリクミ その1 〜オーディション編〜 実施経緯と募集要項の記載について」
では、実際のオーディションに至るまでの、募集要項等の表記に関して、くちびるの会が心がけたこと、「参加者が、安心してオーディションに参加できるか」に注意を払い、試み、取り組みを行なったこと等を記載させていただきました。

有難いことに、1ヶ月弱の募集期間であったにもかかわらず、想定の2倍以上以上の方々からご応募いただきました。

本当は、全てのご応募いただいた方にお会いしたいのですが、オーディションの時間は限られているため、人数を絞るために1次選考として書類選考を行いました。

書類での1次選考を経て、2次選考は、都内の稽古場を借りて3日間にわたって行いました。
オーディションの記載事項にある通り、審査は、「面談と演技」の2点で行います。

オーディションの記載事項、要綱はこちらのリンクよりご覧ください。

実際のオーディションにおいても「参加者が、安心してオーディションに参加できるか」に注意を払い、いくつかの試み、取り組みを行いました。
以下では、トピックとして「歯医者さん方式で手を挙げてください。」「相手役を用意」「不本意な身体的接触を行わないためのタオル」について、触れさせていただきます。

《歯医者さん方式で手を挙げてください。》

オーディションでは、まず、参加者と山本、及び制作の三者で5〜10分程度の面談を行います。
1ヶ月程度、同じ空間で創作を共にするわけですから、僕や制作、そしてくちびるの会という団体の雰囲気も参加者に伝われば良いなと思いますし、僕も参加者の方の人柄を知りたくてこの時間を設けております。

オーディション開始前には以下の様なアナウンスも行います。
「最後に参加者のみなさまから、くちびるの会、及び山本に聞きたいことがあればご質問ください」と
参加者からの質問をくちびるの会は受け付けました。

面談では、これまでに出演した舞台のジャンル、あてがわれることが多い役柄、演劇活動や演技で心がけていること、また俳優として課題に思っていることなど、ブライバシーに触れない簡単な質問を伺い、会話形式で進めていきます。

しかし、会話形式で進む以上、十分に注意を払ったとしても、僕の感知できない「本人にとっては、答えたくないこと」や「答えることで、本人及び他人のブライバシーに関わってしまうこと」を、質問してしまう可能性もあります。

答えたくない質問には、無理に答えさせるべきではありません。
そのため、予防策として、面談前に以下の様に全体アナウンスを行いました。

「答えたくない場合は、歯医者さん形式(痛くなったら手を上げるやつ)で手を挙げてください。それ以上その話題について触れることはありません」

この方法が正しかったかどうかは今も思考中です。
面談という形式上、なかなか手を挙げづらい心理があるだろうとは思います。
それでも、せめてこちら側から「答えないという選択肢を尊重する姿勢」を理解いただければと思い、「歯医者さん方式」を採用し、アナウンスしました。

《相手役を用意》

面談が終わると、演技の審査です。
演技の審査では、『猛獣のくちづけ』初演稿を使用して行いました。
既に短編として完結している、初演稿を使用しての審査ですので、役に対する理解の仕方も見ることができます。
また2人での会話のシーンを通して、参加者の方の立ち姿、演技への取り組み方、相手役への反応の仕方等々を見ていきます。

演技の審査では、参加者の「相手役」を、くちびるの会に出演歴のある俳優に依頼しました。

オーディションの参加者同士で演技をしていただく場合、オーディションで取り決めている様々なハラスメント対策(許可のない身体的接触の禁止や、暴力的、威圧的な言動等)を遵守できなくなることも想定されます。

「相手役」を務める俳優とは、オーディション開始前に、ハラスメント対策に関しての共有や、「演技審査の際に心がけるべきこと」をしっかりと打ち合わせ、オーディションに臨みます。

相手役を用意した意図としては、もちろん
「オーディション参加者同士での演技によって、参加者本来の力が出せないという事態を避けたい」という思いもあります。

オーディションの合間の時間にも、参加者の演技が引き出せるよう、細かく相手役の俳優とコミュニケーションをとりました。

くちびるの会が信頼を置く俳優に相手役をお願いすることで、少しでも安心して、参加者に演技をしてもらえれば、と思っての取り組みです。

《不本意な身体的接触を行わないためのタオル》

演技審査のパートでは、台本上に「手を握る」「背中をさする」という指示があります。
事前のハラスメント対策事項で「許可のない身体的接触は行わない」と明示しておりますので、もちろんオーディションではそれを遵守します。

この「許可のない身体的接触を行わない」というルールに関しては、もちろん、「暴力やそれに準ずる行為の禁止」、「性的な接触の禁止」という目的もあります。
しかし、まだまだ新型コロナウィルス、及びその他の感染症への警戒心は拭えません。
感染症の心配に対しての予防、という意味も込めて「許可のない身体的接触を行わない」というルールは徹底しようと考えました。

しかし、「許可さえあれば、どんな身体的接触を行ってもいい」という状態になることは避けたいです。
オーディションであるからこそ、参加者の、心理的、また身体的安全性は、しっかりと担保されなければなりません。

なので、オーディションの主催側としては
「許可のない身体的接触は行わない」
というよりも、
「”不本意”な身体的接触が行われない現場の安全性を担保する」
ことを心がけました。
相手役を務める俳優とも、共通の認識を持てるよう、事前の打ち合わせを行っております。

「背中をさする」に関しては、相手役が参加者の背中をさするト書き上での指示ですので、相手役の俳優には「さするフリ」にしてもらいました。
参加者の希望があれば、実際にさすることにしています。

「手を握る」という行為に関しては、参加者の手を、相手役が握るシーンです。
この台本上の指示が、参加者の演じる役の次のセリフのきっかけにもなります。

そこで、タオルを介在させるさせることで、身体的接触を行わない方法を用意しました。

演技審査前には、参加者のすぐ手にとれる位置に人数分のタオルを用意しておき。以下の様にアナウンスしました。

「手を握る場面が、気になる方は、タオルをお使いください。お持ちのタオルを相手役が握ることで、手を握ったきっかけとします」と。

これも、面談の時と同じく、参加者は手に取りづらい心理状態にあったかもしれません。
これに関しても「気になる、という感覚を尊重する姿勢」をご理解いただければと思い、実施いたしました。

さらに良い方法、アナウンスの仕方があるか、僕自身、考えていこうと思います。

実際、歯医者さん方式で手を上げる方はおらず、記憶の限りタオルを使用する方もほとんどいませんでした。
また、歯医者さんの説明やタオルの説明を山本がしている際に、参加者から「そんなに心配しないで大丈夫ですよ笑」とツッコまれたり、失笑をかうこともありました。
失笑をかえるほどで、本当によかったと思います。

ドキドキ固まって不安と緊張の面持ちで参加していただくよりも、笑えるぐらい安心して参加していただいた方が山本としては嬉しいです。

急遽、追加の三次オーディション

二次オーディションを経て、素晴らしい俳優さんには多く出会えました。
しかし、なにぶん短い時間で何人も見ていたために、山本の中で「この人だ!」と決めきることができませんでした。

大変申し訳ないのですが、何人かの方々には、追加の三次オーディションを行わせていただけないか打診しました。
「もっと稽古に近い形で、オーディションをさせてください」と。

本当に有難いことに、声をかけさせていただいた方々は全て参加してくださいました。

三次オーディションは、実際の稽古に近い形で、全編通した読み合わせと、ディスカッション、そして実際に2シーンほどを何回か返しての立ち稽古を行いました。

その際にも、くちびるの会の出演歴のある俳優にひとり参加していただき、稽古場作りを助けていただきました。

3次オーディションまで時間をいただき、出演をお願いできなかった方には、「本当に申し訳ない」と「ありがとうございます」。という気持ちです。
当初の予告にない時間を割かせてしまいました。

山本としても、恩返しをできないかと考えている最中でございます。

おわりに

さて以上で、
「くちびるの会のココロミとトリクミ その2 〜オーディション編〜 実際のオーディションで心がけたこと」
を終わります。

次回は、

「くちびるの会のココロミとトリクミ その3 〜執筆サポート編〜  新体制、執筆サポートについて」

です。
本番まで時間のある限り、noteを更新しつづけようと思いますので、よろしければご覧ください。

文)山本タカ

※以下の文章は、毎記事末尾に記載させていただきます。

【🐊猛獣のくちづけ 公演情報🐊】


最新の情報は、公式HPをご覧ください!


第34回下北沢演劇祭参加作品

『猛獣のくちづけ』
2024年2月22日(木)〜2月27日(火)OFF・OFFシアター

あの『猛獣のくちづけ』が長編になってかえってきた!!
きっと誰かが待望の長編化!とりあえず、寂しがりやは全員集合!

作・演出|山本タカ

執筆サポート|須貝 英

出演|薄平広樹 菅宮我玖 倉島 聡 喜田裕也 近藤利紘 北澤小枝子

「猛獣のくちづけ」とは、2018年にくちびるの会が、仙台・東京の二都市で上演した、とっても変な40分の短編演劇。倉庫で働く派遣労働者の男の腰は悲鳴をあげるし、町では人がワニになる怪異が頻発する物語。

この変な演劇、初演上演後の反響は凄まじいものだった。「好きでしたよ、あのワニの芝居」と、作・演出の山本タカに、みんなが "こそっと” 伝えてくれた、くちびるの会の代表作品。

【くちびるの会第8弾『猛獣のくちづけ』が受けている助成について】

本公演は、以下から助成を受けております。

・日本芸術文化振興基会 日本芸術文化振興基金 令和5年度 現代舞台芸術創造普及活動 演劇分野
・公益財団法人 東京都歴史文化財団(アーツカウンシル東京) 令和5年度(2023)年度 第1期 東京芸術文化創造発信助成 カテゴリーⅠ 演劇分野
助成金の性質としての多少の違いはありますが、上記の2つはいずれも「公的助成」に位置付けられるものです。
もちろん、事業終了後は、各機関に報告書を提出し、様々な(助成金の使途や、助成金によって実現したこと、今後の課題など)を報告します。

しかし、公的機関から「公的助成」を受けている以上、助成金によって可能になった事は、公的機関のみへの報告にとどまらず、多くの方々にお知らせする必要があるのでは、と思い、noteの筆をとった次第です。

助成金に採択されることで、事前に収入として見込める金額が確保でき、それにより事業における様々な取り組みを行うことができます。
「くちびるの会のココロミとトリクミ」に記載されている内容は、これらの助成金によって実現されていることも多々ありますので、その点をご留意いただき、ご覧になっていただけましたら幸いです。

サポートのお願い

くちびるの会では、大人向けの劇場公演と共に、子ども向け演劇「紙おしばい」を創作しております。
「紙おしばい」は、コンパクトな道具料でどこへでも出張し、本格的な舞台芸術を体験できる演劇表現です。
子どもが舞台芸術に触れる機会格差の解消のために活動を行なっております。

紙お芝居については、公式HPをご覧ください↓

このnoteにお寄せいただいたサポートは、主にくちびるの会の

  • 大人向け公演のための試み、取り組み、創作資金

  • 子ども向け演劇「紙おしばい」のための試み、取り組み、創作資金

に充当させていただきます。
みなさまのサポートによって、公演単位の助成や、自己資本のみでは難しい試み、取り組みを行っていこうと考えております。

※サポートのためには、ノートへの会員登録が必要です。
※簡単な入力事項の入力とクレジットカードの登録をしていただければサポートが可能です。
※5分ほどのお時間で入力可能です。

舞台芸術界活性化のため、子どもの舞台芸術に触れる機会格差解消のため、未来の舞台芸術の担い手・観客の創出のため。

よろしければ、サポートのほど、よろしくお願いいたします。

◯noteへのサポートの仕方は、note公式ペルプページをご覧ください↓https://www.help-note.com/hc/ja/articles/360009035473-%E8%A8%98%E4%BA%8B%E3%82%92%E3%82%B5%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88%E3%81%99%E3%82%8B

◯noteへのサポートの仕方 動画説明(note公式ペルプページより)

いいなと思ったら応援しよう!

くちびるの会
いただいたサポートは、くちびるの会の活動(試み、取り組み、創作費用)に充当させていただきます。