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アジャラカモクレンテケレッツノパー

私が好きなモノは美容とコスメと文章と落語と米津玄師だ。

そのうちの二つがコラボしたので今回noteに書いてみようと思った。


米津玄師×落語

私の好きなミュージシャンが私の好きな落語の演目を歌にした。

タイトルのみ公表されて歌詞が発表される前から落語の死神だろうと予測はしていたのでかなり楽しみにしていた。

カップリング曲が目的でCDを購入するのは別に良いと思う。
一番本人が自由に作れる曲で、シングルだからと買わない人にはなかなか知られないのがカップリング曲、楽しみにせざるを得ない。


ここで落語の死神のストーリーを知らない人に説明したいと思う。

妻子があっても金が無い男が生きる意味を失い自害しようとしている所に現れた死神が「お前を助けてやる」と言う。
「お前を死神が見えるようにしてやるから帰ったらすぐに医者をやれ。病人の床には死神が座っている。そうしたら『アジャラカモクレンテケレッツノパー』と唱えて手を二回打つ。そうすれば死神を追い払い病人を救う事が出来る。」

「ただしこれをやっていいのは死神が病人の足元に座っている時だけだ。死神が枕元に座っている病人、そいつ寿命だ。人間の寿命は変えちゃあなんねぇ。必ず守れよ、必ずだ」

死神に教えてもらった呪文を使い、すっかり金持ちの名医の先生となった男は妻子を捨て金目的で寄ってきた女達をはべらせ能天気に旅行に出掛けるが途中で旅銭が尽き女達も去りすってんてんに。
それでも男は「この辺りでまた医者をやればすぐに金持ちに戻れるだろう」とタカをくくっていた。
しかし呼ばれて行く先々の病人の床には枕元に死神が座っている。
病人を治せず金も無いままの男は焦り始める。
そこに大金持ちの家から「どうしても主人を治してほしい。金はいくらでも払う」と依頼され渋々行くとやはり枕元に死神が座っていた。男は必死に知恵を絞り打開策を思い付く。

「この家の男集で力持ちを四人連れてきてくれ。そして床の四隅に置いてくれ。俺が合図をしたら床を持ち上げて頭を足元に、足元を頭に入れ替えるんだ」

長丁場に疲れ始めた死神の隙を見て合図をし、床をぐるっと回した瞬間、男は呪文を唱えて見事死神を追い払った。
寿命で死ぬはずの病人を治し前金を受け取りホクホクと帰路に着く男に声を掛けたのは男に呪文を教えたあの死神だった。

「お前さん、俺の忠告を無視したな。やっちゃあなんねぇ事をしたな。お前さんに見せたいものがある、付いてこい」

無理矢理連れられて来たのは地下の世界。
沢山の蝋燭が燃えている。
蝋燭は人間の寿命なのだと言う。
ふと男は今にも燃え尽きんとする弱々しい蝋燭を見付ける。

「この蝋燭は誰の寿命だい?」
「そいつはお前さんの寿命だよ。床をひっくり返した時に病人とお前さんの寿命が入れ替わったんだ。お前さんはもうすぐ死ぬ」

慌てて命乞いをする男に死神は提案した。

「この蝋燭の燃えさしに火を移す事が出来たら助けてやろう」

男は燃えさしに火を移そうとするが手がぶるぶる震えて上手くいかない。

「早くしないと消えるぞ。死ぬぞ。消えるぞ、消えるぞ。
…ほら、消えた」

その瞬間、男はバタリと倒れ絶命しましたとさ。

めでたしめでたし。


落語の中でも知名度が高く人気もある演目「死神」、数ある演目の中でも一際辛気臭く後味も悪い。
笑う要素がまるで無いこのネタをどう披露するかは噺家の腕と方向性にかかっている。


米津玄師が歌う死神はどんな風に感じますかね。
諦め、皮肉、嘲り、怒り、惨めさに落ちぶれと絶望。
こんなにもマイナスの感情のオンパレードなのにとてもリズミカルでまるでミュージカル。
なんともシュールで楽しく聴ける。


落語の死神も米津玄師の死神も是非堪能してみてもらいたい。

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