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窪田製薬、眼科領域に限らず、ウイルス炎症に作用する新薬の研究を開始

こんにちは。
窪田製薬ホールディングス広報の市川です。

窪田製薬は、”世界から失明を撲滅する”ことをミッションとし、目に関わる創薬、デバイス開発を行っています。創業者の窪田については(こちら)にまとめてありますのでご覧ください。

今回は、先日お知らせさせていただきました、LEO Pharma社と共同研究を行うVAP-1阻害剤について、可能な限り、くわしくお伝えしたいと思います。

4月16日
LEO Pharma 社との共同研究契約締結のお知らせ

LEO Pharmaは、皮膚科領域の医療用医薬品の研究、開発、製造、販売に特化した、本領域での世界的リーディングカンパニーです。1908 年に創業し、現在は、デンマークに本社を置き、LEO財団が所有する製薬会社として、世界中の約6,000名の社員とともに、世界130ヶ国、9,200万人の患者様のもとに必要とされる医薬品を届けております。2019年度LEO Pharmaの全世界での売り上げは、108億500万デンマーククローネとなります。

VAP-1(バップ-ワン)阻害剤ってなに?

VAP-1 は、白血球接着分子とともにセミカルバジド感受性アミン酸化オキシダーゼ(SSAO)の酵素活性を併せ持つユニークな糖たんぱく質としても知られ、VAP-1 阻害剤は炎症が原因の疾患を治療するために有望な新しい薬剤として期待されています。(4月16日リリース文章参照)

白血球は、体を守る免疫細胞の一つで、外部から体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物の排除や、腫瘍細胞、役目を終えた細胞の排除などを役割としています。白血球接着分子(VAP-1)は、その白血球を患部に集合させる役割を持ち、全身に存在しています。

下の図は、わかりやすく、VAP-1をサイレンに、各種白血球をパトカーなどの車に例えています。

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普段は、白血球、VAP-1共に、静かに全身に存在していますが、例えば、転んで膝に擦り傷ができ、そこから細菌が入った場合、VAP-1がそれを察知し、周囲の白血球を集合させます。

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VAP-1の活動により、周囲の白血球を磁石のように患部に集めることができ、いち早くウイルスを排除できます。この白血球などが集合した状態を「炎症」と呼びます。

このように、炎症は免疫細胞が、有害なものを排除するために作用しているのですが、時には、反応しなくても良いものに対しても過剰に反応してしまうことがあり、その場合、自己免疫疾患と呼ばれる、アトピー性皮膚炎やループス腎炎、変形性関節症などの病気が引き起こされます。

そのため、過剰に作用するVAP-1を阻害するため、ステロイドなどを使用して抑制しますが、ステロイドには、炎症を抑える作用だけでなく、多くの副作用が存在しているため、副作用が少ない新しいタイプの抗炎症剤が求められています。

VAP-1阻害剤はいつから開発しているの?競合とは何が違うの?

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窪田製薬では、現在の主要パイプラインの一つであるエミクススタト塩酸塩の基礎研究時に、当社が独自に作った、数千もの化合物を対象にスクリーニングを行いました。

当時は、網膜疾患の治療薬に対するスクリーニングをおこなっていましたので、エミクススタト塩酸塩のように網膜のみに作用する化合物を探していましたが、実は、裏を返せば、数々の網膜以外にも作用する化合物が発見されていました。

その数千の化合物は、世界でも当社のみが保有する貴重な化合物ライブラリでありますので、当社は、水面下でその化合物の可能性を模索しておりました。

今回、LEOpharmaとの共同研究によりスクリーニング対象としているいくつかの化合物は、もともと、VAP-1を阻害する作用があることはわかっていましたが、改めて、調べれば調べるだけ、競合他社がしのぎを削って開発していた化合物よりも、少量でターゲットへの効果があることがわかり、さらに、オフターゲットへの作用が非常に少ないということがわかりました。

そのため、副作用が少なく、少量でVAP-1を阻害する薬を開発できる可能性が示されたので、本格的な研究開発へと移行することとなりました。(*ターゲットへの効果が高いことは事実ですが、それが動物やヒトに効果があるとは限りません)

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LEOpharmaとの契約は何をするの?

LEOpharmaには、化合物を探索するユニークな研究ツールがあります。今回は、その研究ツールと研究予算を使用し、我々によって数十にまで絞られた化合物のさらなるスクリーニングを行います。窪田製薬では、今年度は、開発資金の選択と集中により、エミクススタト塩酸塩の第3相臨床試験などに多くの資金を投じています。今回のように、できるだけ当社の開発費をかけずに、価値を見出すことができるパートナーシップを今後も進めてまいります。今回は、皮膚科領域の老舗であるLEOpharmaとの開発でありますが、今後は、皮膚科領域以外でのパートナー探しにも力を入れたいと考えています。

今、世界中に大きな影響を与えているCOVID-19も、新型コロナウイルスによる感染が原因で引き起こされた肺炎が、もし重症化した場合、死にいたる病として問題となっています。VAP-1阻害剤は、炎症を抑制することから、COVID-19に伴う急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などに対して有効な可能性があり、米国の研究機関とCOVID-19向けの創薬について話し合いをしています。今後も補助金を含む資金の獲得に向け力を入れてまいります。

選択性が高く、副作用の少ないVAPー1阻害剤の開発は、世界の製薬会社がアクティブに開発しているターゲットではありますが、いまだに成功はしていません。窪田製薬は、眼科領域の創薬に特化しているため、今後も、幅広くあらゆる領域のパートナーを検討し、企業価値の最大化を図って行きます。

”世界から失明を撲滅する”
患者様のご期待、多方面からの声援に応えられるよう、これからも日々精進してまいります。


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