文末表現の「た」について1:おはなしを書くこと7

こんにちは、くぼひできです。売れてない作家をやっています。ジャンルは児童文です(児童文学というほうが一般的です)。

創作論の7つめです。今回はYoutubeのとあるチャンネルから、大きな示唆を受けましたので、それをリスト化したものをまずここに載せます。

チャンネルは「ゆる言語ラジオ」

ここで最近(2022年1月)全6回で、日本語の「た」、いわゆる過去形と呼ばれるものについての談義がありました。
 いろんな論文から参考例出したり、かいつまんで説明してくれたりといういつもの手法なのですが、そこで「た」もっといえば、日本語の時制について語られていったのです。
 たいへんおもしろい動画でしたので、再生リストにして共有したいと思います。
 言葉に興味のある方はぜひチャンネルも登録していくと、へえと思われることが多いかなと思います。授業っぽくもありますが、基本的に雑談や脱線を交えた知的な高等会話といったものです。

再生リスト【ゆる言語学ラジオ様より、「た」について】

ここにはこういう惹句を書きました。

 創作でよく質問にあがる文末表現とくに過去形、完了形、現在形などの使い分けについて、たいへん示唆のある会話でした。
 もちろん全面解決ではありませんが、創作するうえで日本語をなんとなく使っているものの、何故そうなっているかはきちんと説明できません。これは言語学者でも同じで、ずーっと論争・究明をし続けている問題なのです。
 しかし創作においては、ずっと非確定にしておけるわけもなく、一文一文ごとに考えるわけです。
 そのとき、何故「た」のほうがいいのか、何故「ている」のほうがいいのか、何故「~する」のほうがいいのか。  基本的には勘でやっており、いちいち大きな決定はしていない。まれに決定に悩むときがある。  悩むとき、なにをもって決定するかと言えば、それが「自分(作家)の演出的にOKかどうか」。ここに尽きるわけです。
 この演出を考えるうえで、ゆる言語ラジオさまがアップされたこの『「た」を巡る物語』は参考になるものと思われます。

わたしのYoutubeアカウントの再生リストより

初心者がお話を書きはじめて悩むことがいくつかあります。大人向け子ども向け関係なく出てくる主要なものは…

  • アイデアの出しかた・まとめかた

  • 物語の構成

  • 言葉の使いかた・文章の書きかた

です。
 このうちの3つめ「言葉の使いかた・文章の書きかた」に、今回お教えしたい「た」など、文末表現が入ってくるんですね(ほかにも、読点の打ちかた、きれいな文・かっこいい文の技法、意味の通じる日本語の書きかたなどなどあります。セリフの方法とかもですね)。

上手な書き手、作家さんは、この文末表現がうまい。
 文末というくらいですから1文ごとに出てくるわけですが、それがいつも同じだと味気なく単調になる、だから変えたいと思う人が多いわけです。実際そのようにみんな書いている。
 文語では、過去にあたる文末は「き」「けり」「たり」「り」「つ」「ぬ」などあったわけです。
 しかし現代の日本語ではそれらが「た」一辺倒になってしまったのではないか。よくて「~~だった」「~~であった」「~~していた」などで、やっぱり「た」に収斂してしまう。
 そこで思いつきで「~~る」(する、である、している)に変えてみても、その位置はどこで決めればいいのか。体言止めや倒置法もしょっちゅう使えるわけではないし……
 多くの書き手は、勘でやっているのではないかと思います。そしてその勘が上手な人の文はうまく見える。
 ところが、ぜんぶ「た」で書いてるのに上手な作家というのもいるわけですよね、志賀直哉とか。

わたしが自分の教室では、上手じゃない人にはとりあえず全部「た」で書けと教えます。
「た」でばっかり終わるのは、たしかに味気ない。味気ないけど、間違いはないのです。
 じゃあ何故「た」で終わると間違いがないのか。これについて明確な回答が自分の中になかったんですね。勘で「それでいいから」と思ってたわけです。逆に「た」じゃないときは演出的にそうしろと教えるわけです(これはある意味、本回答です)。
 この明確じゃなかったことについて、これまでもいろんな本を読んで考えてきましたが、やはり明確にはなりませんでした。
 もちろん動画を聞きかじったからといって、それが本当に創作技術として確定したとなったわけではありませんが、自分的には納得がいったわけです。

その納得については、次の投稿で書こうと思います。

まずは「ゆる言語ラジオ」、見てみてください。超おもしろい。一見、お笑いトリオ四千頭身の都筑さんと、ミュージシャンのハマ・オカモトさんが対談してるのかなと思っちゃう感じ。

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