見出し画像

「テキスタイル」を学べばイラスト表現は無限大!デザインパターンと描き方を解説|紅木春

KUAイラストアドベントカレンダー、12月13日はイラストレーターの紅木春先生から『「テキスタイル」を学べばイラスト表現は無限大!デザインパターンと描き方を解説』です!


みなさんこんにちは。イラストレーターの紅木春(@Camellia_0x0)です。京都芸術大学通信教育部 イラストレーションコースで服飾に関する科目を担当しています。

突然ですが、みなさんはイラストを描く際、キャラクターの服のデザインに柄を取り入れたことはありますか?服の柄を描くことで、イラストの完成度をぐっと上げることができます。今回の記事では、柄を考える上で大切な「テキスタイルデザインの表現方法」と「イラストへの効果と取り入れ方」についてお話します。

実際のテキスタイルデザインから、イラストに応用する

「テキスタイルデザイン」とは、布製品における生地や柄のことで、服やカーテン、クッションカバーなど日常生活で目にする機会の多い、身近なデザインです。

この「テキスタイルデザイン」について学ぶことで、柄の表現方法の引き出しを増やすことができます。実際のテキスタイルデザインがどのような手法で布に絵柄を表現しているのか、紙に絵の具で描くのとはどう違うのか、いくつかの例をもとに見ていきましょう。

例えば布地に普通の絵の具で柄を描こうとすると、どうなるでしょうか。

▲布地に描いた際のイメージ図

布地は生地の目が紙よりも荒いことが多く、繊細な線を描くのには向いていません。水分を含んだ絵の具で描こうとすると繊維に沿ってどんどん滲んでしまいますし、逆に水分が少ない状態の絵の具では乾いた時に布や絵の具がパキパキにひび割れてしまいます。

その上、服のように形に沿う必要があったり、洗濯しても色が落ちないようにしたりと、実際の使用を想定した工夫が必要になってきます。

では、布地に柄を生み出す手法にはどのようなものがあるのでしょうか?

1. 織り

布地は経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を交差させて織られますが、この時に違う色や素材の糸を組み合わせることで、柄を表現することができます。1番イメージしやすいのはチェック柄だと思いますが、織り方を工夫することで絨毯の模様のような細かい図柄も作り出すことができます。

<織りから着想したテキスタイルの表現方法>

これをイラストで表現するとこのような感じになります。

ただ2つの色を置いて重ねるのではなく、経糸と緯糸が交差し互いの色の影響を受けている様子を表現しています。


2. 染め

染めたくない部分を様々な方法でマスキングし、染料で布を染めることで柄を作り出すことが出来ます。具体的にどのように柄を作り出していくのか、例の1つとして友禅染めの工程を紹介しましょう。


友禅染め

①模様の輪郭線に糊を置き、染料が滲み出すのを防ぎます。

②糊が乾いたら、輪郭線の内側をハケなどを使って染めます。

③最後に糊を水で洗い落とすと、防染していた部分が白いまま残ります(色のついた糊を使い、色のついた線を残す技法もあります)。


<友禅染めから着想したテキスタイルの表現方法>

境界線に糊を置いて染めた様子を表現しました。着物の柄によく使われる手法で、もし和柄を描きたい場合はこのように輪郭線の色をあえて抜くといった表現を取り入れてみるのも良いかもしれません。

その他、日本古来の染色技法として三纈(さんけち)と呼ばれる板締め・絞り染め・ろうけつ染め、さらには江戸小紋で有名な型染めなどもあります。興味のある方は調べてみてください。



3. 捺染(プリント)

シルクスクリーンやインクジェットなど、型やプリンターを使って生地に柄を作り出す技法です。織りや染めと比べて、同じ柄の複製や大量生産に向いています。

インクジェット

インクジェットは織りや染めと比べてかなり細かい図柄を印刷することが可能です。
中には色が綺麗に出やすく、生地に浸透させやすい(=色落ちしづらい)昇華転写プリントという方法もあります(ただし、ポリエステルの素材の生地にしか使えません)。

シルクスクリーン

▲4枚の版を使用した柄のイメージ図

版画のようにそれぞれの色ごとに版を作り、1色ずつ色を重ねていく技法です。同じ版を繰り返し繋げて刷れば、連続した図柄を表現することもできます(その場合、連続しても繋がる図柄にする必要があります)。


<シルクスクリーンから着想したテキスタイルの表現方法>

ピッタリと柄を重ねるのではなく、手仕事による版のズレを表現しました。

布に柄を生み出すのにも様々な方法があります。この他にも、今回詳しく紹介できなかった技法もたくさんあり、紙に絵を描くのとはまた違った表現方法の発見があるかもしれません。

テキスタイルデザインをイラストに取り入れる2つのメリット

ではテキスタイルデザインをイラストに取り入れた場合、どのようなメリットがあるのでしょう?

まず1つ目は、画面の情報を増やすことができる点です。

▲右は全体の雰囲気を残しつつ柄を描き加えた例

特にアニメ塗りなどの平面的な表現だと柄のデザインも分かりやすく、相性が良いでしょう。デザインの密度が上がるので、完成度も上がってみえますし、画面に新しい色を取り入れることもできます。「何か物足りない」「画面が寂しい」と思った時、その問題を解決してくれるかもしれません。

そして2つ目は、キャラクターの個性や設定を伝えることができる点です。

色やモチーフの持つイメージを利用することで「かわいい」「大人っぽい」などキャラクターの性格や個性を表現することもできますし、家紋や伝統柄、ユニフォームの番号など、柄自体が持つ意味を利用することでキャラクターの設定を表現することもできます。

ただし、キャラクターによっては無地のほうが設定に合っている場合もありますので、必要に応じて取り入れていくのが良いでしょう。

テキスタイルデザインを描く5つのポイント

1. 素材をうまく使おう

実際にテキスタイルデザインを取り入れていく場合、市販の素材を活用するという方も多いでしょう。自分で柄を考えたり描いたりするのが苦手な人でも取り入れやすく、作業の時短としても有効です。
ただし、実在する特徴的な柄をそのまま流用してしまうと著作権侵害にあたる可能性があるので気をつけましょう。

よく使う素材や細かい部分のデザインまでこだわりたい絵柄は、自分で素材を作ってしまうという選択肢もあります。

▲自作した素材とパターン柄


2. 配置と大きさを考えよう

キャラクターに合った柄のモチーフが決まったら、次は配置する場所と数(密度)、大きさを考えましょう。同じモチーフでも、どこにどのくらい配置するかで印象は大きく変化します。

①全体に取り入れて総柄にすると、賑やかな印象になります。また、柄のサイズを大きくするほどモチーフの主張が強くなります。

②柄を部分的に取り入れるとデザインにメリハリが生まれ、配置次第では動きの流れも表現できます(今回は下から上に上がっていくイメージで配置しています)。

③あまり目立たせたくないけれど何か欲しい時は、さりげなくワンポイントとして取り入れる方法もあります。


3. 柄を布地に合わせて配置しよう

▲右は布の形に合わせて自由変形で傾きをつけ、位置を微調整した例

服などの布はキャンバスと違ってやわらかく、柄は物体に沿うように形状が変化します。

そのため、布地に合わせて柄を配置したり変形させることで、より違和感のない柄を描くことができます。

形に合わせた柄を手書きで描けるのが理想ではありますが、慣れない方は柄の向きを変えたり、自由変形を使って傾きをつけるだけでもかなり違って見えますよ。


4. 複数の要素を組み合わせて、さらに華やかなテキスタイルデザインに

モチーフを複数使ったり、柄を重ねることでより華やかなテキスタイルデザインにすることもできます。

また、生地自体にテクスチャーやグラデーションなどの変化をつける方法もあります。

①複数のモチーフを組み合わせる 
例:花のみ→花+α(葉っぱ、つぼみ、果実など)

②柄を複数重ねる
例:花+比較的シンプルな総柄(チェック、ドット、ストライプなど)

③生地そのものに変化をつける
例:花+テクスチャー、グラデーション

5. 同じ柄を複数取り入れて統一感を演出しよう

小物や周りのモチーフに服と同じ色や柄を取り入れることで、全体の統一感を強められます。

▲左はそれぞれに別の柄を取り入れた例。右は同じ柄を取り入れた例。

別々の柄だとちぐはぐな印象になるこのイラストも、同じ柄で統一すると一体感が出るのでおすすめです。

また、別のキャラクターに同じ柄や色違いの柄を取り入れることでお揃い感を演出することもできます。

まとめ

<テキスタイルデザインとは?>

テキスタイルデザインは布製品における生地や柄のことであり、
紙に絵の具で描く場合とはまた違った表現方法がたくさんあります。

<イラストに取り入れるメリットは?>

テキスタイルデザインをイラストに取り入れることで、画面の情報を増やし完成度の高い印象を持たせることができます。
また、取り入れる柄を工夫することでキャラクターの個性や設定を表現することもできます。

<テキスタイルデザインを描く際のポイントは?>

・素材を上手く活用しましょう。
・柄の大きさと配置を考えましょう。
・布の形に合わせて柄を描くことで、違和感を減らせます。
・複数の要素を組み合わせることで、華やかな柄を表現できます。
・同じ柄を複数のモチーフに取り入れて統一感を出しましょう。


最後に

いかがだったでしょうか。
「テキスタイルデザイン」という言葉を初めて聞いた方も、中にはいたかもしれません。一見イラストとは直接関係のない分野に思えますが、違う分野だからこそ新しい表現方法やアイデアの発見につながることもあります。

今回紹介したテキスタイルデザインの技法や表現方法はほんの一部でしたが、何か1つでもみなさんの創作活動のお役に立てたら幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。


プロフィール
紅木春
イラストレーター
京都芸術大学通信教育課程イラストレーションコース 講師

https://twitter.com/Camellia_0x0


著書情報



【1/15〜3/30】Web出願受付中!完全オンラインでイラストを学びながら大卒資格を取得

京都芸術大学 通信教育部 イラストレーションコースが、2024年春入学の第4期生の出願受付を開始しました!

プロ講師による実際の添削や、学生作品などをご覧いただける公式HPもございます。入学から卒業までのイメージをしっかりと描くことができますので、ぜひチェックしてみてください。

▼京都芸術大学 通信教育部 イラストレーションコース 公式HP▼

▼出願はこちら ▼

4つのポイント
・“完全オンライン”で学士を取得
・大学ならではの専門的なカリキュラムで上達をサポート
・現役イラストレーターが講師
・年間学費は34.8万円。経済的負担を軽減し、学びやすさを実現

イラストスキルを向上させたい方はぜひご検討ください。

イベントなどの最新情報を知りたい方は京都芸術大学 通信教育部 イラストレーションコース公式X(旧Twitter)をフォロー!