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【数学】証明を書く心がけ

高校までは計算して答えを導き出すことが多かったかと思いますが
大学レベルの数学では証明してその性質を解き明かしていくことが多くなります。
したがって、高校までは数学が大好きだった人も
大学に入学して計算より証明ばかりで学ぶ内容の違いにギャップを感じ
躓いてしまう人は少なくありません。

そこで数学科で学んだ私が思う証明の心がけと手順をまとめていきたいと思います。

証明の心がけ

証明を1つの事柄を説明した文章だと思う

そもそも数式は文章でした。
ですから、数式は人に何かを説明する文章だと思って客観的に理解できるかを意識しながら書いていくとよいでしょう。

記号に説明をつける

例えば以下のような命題を証明するとします。

連続する3つの整数の和が3の倍数になる

この命題を証明するのに

$${n+(n+1)+(n+2)=3n+3=3(n+1)}$$
よって3つの整数の和は3の倍数になる.

と突然$${n}$$が何なのか分からず証明していくのは不十分です。
これでは$${3(n+1)}$$も整数に3をかけた倍数なのか保障できません。
なのでまずは使う記号が何なのかを示す必要があります。

ただ、積分の記号などをはじめ下記のような共通で認知されている記号に関しては説明は必要ないです。

$$
\int_{b}^{a}, \sum, \lim, \frac{d}{dx}
$$

仮定がどこで使われるかしっかり述べる

命題の仮定は証明するのに使われます。
それがどこで使われたのか、暗黙の了解と思わず文章でしっかり述べましょう。

接続詞を使いこなす

「したがって…である.したがって…」などと同じ接続詞を重ねて使わないようにしましょう。

証明の手順

では実際にどのような手順で証明をすればいいでしょうか。
基本的な証明の手順は以下になります。

証明の手順
1. 何を証明するかを明確にする.
2. 証明で使う記号や文字を定義する.
3. 何から何が示されたかを正確に過不足ない文章で述べる.
4. 何が証明されたかを述べ、証明を完結させる.

具体的な証明例はこちらもご覧ください。
また特別な証明の方法で「数学的帰納法」があります。
(こちらは高校数学でも学習しますね)

数学的帰納法

数学的帰納法を用いた証明の手順は以下になります。

1. 数学的帰納法で証明することを明確に述べる.
2. 一番元になるパターン(例えば$${n=1}$$の場合)などが成り立つことを示す.
3. $${n=k}$$の場合成り立つと仮定すると,$${n=k+1}$$の場合も成り立つことを示す.
4. 2と3から数学的帰納法で証明ができたことを述べる.

以下を証明してみます。

$${n}が自然数の時
$${\displaystyle 1^2+2^2+3^2+\cdots +n^2=\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)}$$

(証明)
すべての自然数$${n}$$に対して$${\displaystyle 1^2+2^2+3^2+\cdots +n^2=\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)}$$を示す.(1のステップ)
(i) $${n=1}$$のとき,
  $${左辺=1^2=1}$$
  $${\displaystyle 右辺=\frac{1}{6}\cdot 1\cdot 2\cdot 3=1}$$
  よって$${n=1}$$のとき題意は成り立つ.(2のステップ)
(ii)$${n=k}$$のとき,題意が成り立つと仮定すると
  $${\displaystyle 1^2+2^2+3^2+\cdots +k^2=\frac{1}{6}k(k+1)(2k+1)}$$
  $${n=k+1}$$のときを考えると

$$
\begin{equation*} \begin{split} 1^2+2^2+3^2+\cdots +k^2+(k+1)^2 &= \frac{1}{6}k(k+1)(2k+1)+(k+1)^2 \\ &= \frac{1}{6}(k+1)\{k(2k+1)+6(k+1)\} \\ &= \frac{1}{6}(k+1)(2k^2+7k+6) \\ &= \frac{1}{6}(k+1)(k+2)(2k+3) \\ &= \frac{1}{6}(k+1)\{(k+1)+1\}\{2(k+1)+1\} \end{split} \end{equation*}
$$

よって,$${n=k+1}$$のときにも題意は成り立つ.(3のステップ)
ゆえに(i)と(ii)からすべての自然数$${n}$$に対して$${\displaystyle 1^2+2^2+3^2+\cdots +n^2=\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)}$$が成り立つ.(4のステップ)

$${\square}$$

ここでも最後の2文で「ゆえに…ゆえに…」と重ねずに、接続詞を違うものにするのもポイントです。
最後の締めのところで「ゆえに」を使うことが多いですね。

最後に

証明は計算が好きだった人にとってはまどろっこしい面倒な作業になるかもしれません。
しかし、証明を通してその命題や公式、定義を本当に自分がきちんと理解しているか確認できます。
また、日常生活でも誰かに何かを説明しやすくなったり、論作文なども書きやすくなる一石二鳥の訓練になると思います。
ぜひ、証明を通して自分の説明力も数学の力も上げていきましょう。

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