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コツを編む

この間編み物教室に参加した。
ずっと編み物がしてみたかったから、お店でのワークショップとして企画して、編み物歴40年のベテランの先生に編み物教室を開いてもらうことに。
自分で企画して、自分で参加する編み物教室。
はじめて参加する編み物は、最初何が何だか分からず難しかった。
頭フル回転で、この紐は右巻き?左巻き?あれ?今って表?裏?今何してたっけ?どこまでしたっけ?と半ばパニック!
それでもやってみるうちに少しずつコツみたいなものが掴めてきた。

この間、NHKオンデマンドで"記憶のメカニズム"についてのドキュメンタリーを見た。
運動記憶というものは不思議で、初めてのことをする時、例えば自転車に初めて乗るときは、右足に力を入れて、右足が下に行ったら今度は左足に力を入れて、、と考えて行う。でも、それだと毎度考えながらやることになり、情報処理が追いつかないので、要らない記憶を整理し忘れることで、単純化して、自動化して無意識で出来るようになる(そしてそれは一度習得したら忘れない)という話があった。
編み物教室の時に、ドキュメンタリーのことを思い出しながらしているとたしかに、はじめての編み物も、
最初:頭で100%考えながらやる

だんだん50%頭で考えながらやる
50%手が覚えて勝手に動く

20%頭で考えながらやる
80%手が勝手に動く

といった具合に変化していくのが分かった。
人間すごい!


編み物教室の翌日、手に早く覚えさせようと、実家で覚えたての編み物をしていると、編み目を取り間違えて分からなくなってきた。昔ばあちゃんが編み物してたな、と思い出し、ばあちゃんに聞いてみることにした。
小学生の頃、家でばあちゃんが編み物をしていたぼんやりとした光景が頭をかすめる。
「これなんやけど、分かる?」
「もう何十年もしとらんけんね。でくっか分からんよ(出来るか分からない)。」
うちのばあちゃんは93才。
私は33才なので、ばあちゃんと私はちょうど60才ちがい。一還りちがいの蟹座だ。
ばあちゃんが編み物をしていたのはざっと見積もって20年前までということになる。
おもむろに編み棒を持ったばあちゃん。
ほぼノータイムでここが間違ってる、と間違った編み目を編み直し、
「ちょっとしてむーか。(してみようか)」と
一列を高速に編みはじめた。
そのスピード、、昨日教わった編み物歴40年現役編み物講師の先生とほぼ同じではないか。
編み棒の持ち方、糸のかけ方も先生と同じ。
私のきつい編み目と違う、ふわっとして揃った綺麗な編み目。
20年のブランクをものともしない、人間の運動記憶ってすごい。
ばぁちゃんすごい!


それはそうと、もう一つ私は編み物から学んだことがあった。
コツのつかみ方だ。 
5時間の編み物教室は、
まず「先生が言葉で説明する」+「先生がしているのを見る」

「自分でやってみる」
という工程の中で進んだ。
はじめて編み物をやってみる中で、最初先生がやっているのを見ている時は、何がどうなっているのか分からない!と感じるが、やってみるうち(あーこの上の棒に巻くってことか〜!)と、コツをつかんで、言葉が出ることがある。
そして、そのコツをつかむ言葉は人それぞれちがうのだ!
教室に参加していた他の人も、コツを理解した瞬間に突然「〇〇ってことか!!」と何か発するのだけど、いまいちその言葉の意味は分からないのだ(笑)
なんなら先生が説明する言葉も、動作と意味が一致して理解できることもあれば、説明の意味がどうしても分からないけど、よく見てたら分かったということもあった。
(おそらく先生の説明が分かりにくいとかそういう事ではない)
だから言葉は意味ないかというときっと違って、説明の言葉が全くなくて、動きだけ見て真似るのは、できなかったと思う。
でも、説明の言葉だけで理解しようとしても理解できなかったと思う。
編み物など動きがあるものを、本だけじゃ分かりづらいのも、ほとんど言葉だけで動きを見れないからかも。
言葉で説明されないとほとんど分からないけど、全部言葉だけで分かろうとしたら分からなくなるんだよなあ。

なんかこれって人の気持ちでも同じな気がする。
言葉というものがいろんなものを説明できるから万能のように感じてしまうことがある。でも言葉だけで理解しようとしたら分からなくなる。
言葉に助けてもらって、最後の最後、言葉で補えないところは、言葉じゃないところで見たりして感じて、自分なりに理解するべきものなのかも。

この数年、悩みがあって、いろんな人に相談して、生き方や考え方の指南をたくさん受けた。
その指南の言葉がピンと来て腑に落ちる時もあれば、ピンと来ないこともあった。
実践してはじめて、説明されていた言葉の意味が分かることもあった。
他人の言葉はあくまでヒントにしかなり得ないのかもしれない。
いろいろ考えたり実践してみて発見したことが、昔からよく言われてたことだったりもする。
何度も触れてきたような言葉でも、経験してから触れると、タイムカプセルみたいに急に意味が分かることもあるなぁと。
言葉のヒントと実践で、ピンと来て、コツを掴み、自分なりの言葉にして、腑に落としていく。
「そういうことか〜」と。
まぁ、この言葉も自分なりの言葉なので、読んだ人にはピンと来ないのかもしれない。
それとも、感覚が似ていたり、タイミングによっては、ピンと来たりもするのかもしれない。

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