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本の紹介: HIGH OUTPUT MANAGEMENT

「マネジャー業務に参考になるような本はないでしょうか?」という質問をいただくことが増えてきました。そうしたときにまず頭に思い浮かぶのが、こちらの本です。私は管理職になって3年半程度ですが、今も時折読み返す本です。

本書はインテル元CEOのアンディ・グローブが書いたマネジメント指南本です。経営視点でありつつミドルマネジメント力点を置いた内容となっていて、一般従業員から管理職へのトランジションを助けてくれた本でした。

私がこの本を購入したのは2017年で、マネジャーになる2年前のことでした。当時はAIやデータ分析のプロジェクトに実務に従事していたのですが、ふと「課長や部長って具体的にどんな仕事なのだろう? チームリーダーとは何が違うのだろうか。」という疑問が頭に浮かびました。一方、周囲の管理職の仕事を見ても今一つ深いところが分からずモヤモヤしていました。

そんなとき、本屋をフラフラしているときに偶然本書を見つけて購入したというわけです。その2年後に実際に管理職になるとは考えていませんでしたが、今に至るまで何度も読み返すことになりました。

本書が優れているのは、輪郭が見えにくい管理職という仕事を様々な観点で具体化していることにあると思います。特にミドルマネジメントに求められる重要な考え方や行動をストレートに表現していて何度も目から鱗が落ちました。ストレートであるがゆえに、自分が置かれた状況によって腹に落ちるポイントが変わってくるという特徴があります。つまり、読むたびに学びがあるという本です。

手元の本でドックイヤーや赤線を引いている個所をいくつか抜粋していきます。


まずは「ミドルマネジャーとは何をする人なの?」という問いへのヒントとなる箇所から。はじめに読んだときには「そういうものなのね」と分かった風に流していたのですが、実際に自分が仕事で直面すると一つ一つが重たいものになっていきました。私はプレイングマネジャー的思考に陥りがちだったので、悩みながら読み返した記憶があります。

マネジャーのアプトプットとは、その直後の監督下に会ったり、または影響下にある組織体のアウトプットである。

マネジャーは情報を集めるだけでなくて、情報の提供源でもある。

最後までトコトン、フォローしない権限移譲は”職務放棄”だという原則をよく考えておいてほしい。

HIGH OUTPUT MANAGEMENT, アドリュー・S・グローブ,日経BP


次に行動のヒントとなる箇所を引用してみました。今でこそ国内で企業でも1 on 1ミーティングというのは浸透してきていますが、本書を読んだ当時はあまりなかったように思います。
私は特段コミュニケーションが得意というわけではなかったので、管理職になった一年目から積極的に取り入れていきました。結果的にはマネジメントの要になり、特にコロナでテレワーク中心になったときに効果を発揮しました。

情報を入手するときに効率が良い方法で、ほんとんどのマネジャーが見逃しているものがある。それは社内のある特定の場所を訪れて状況を見て回ることである。

上司はワン・オン・ワンで何をするか。何が起こっているのか、部下は何に困っているのか、部下が表だって説明するのを助けてやればよい。上司はそれを知り、コーチするためにそこにいるのだ。

HIGH OUTPUT MANAGEMENT, アドリュー・S・グローブ,日経BP


最後にミーティングや意思決定について言及している個所を引用しました。何度読んでも「難しいなぁ…」と思うところです。しかし、組織活動をしている上ではもっとも重要な場面だろうと感じています。

ある意思決定にまだ議論の余地があると思うときは、議論を避けるために問題をあいまいにしようとしがちなのだ。

最後の段階においては、その問題の関係者は誰しもが、そのグループによってなされた意思決定に対して完全な支持をしなければならない。これは、必ずしも全員の同意を取り付けることを意味しない。参加者が意思決定を支持するとの約束をするかぎり、それは満足すべき結果なのである。

HIGH OUTPUT MANAGEMENT, アドリュー・S・グローブ,日経BP

この記事を書くにあたり本書を本棚から久々に引っ張り出してきたのですが、パラパラめくっていると気になる箇所がたくさんあり、読むばかりでなかなか手が動かない事態になりました。今もなお研究の余地がある本だと思います。

改めて読んでみると、ミドルマネジメントの話が中心でありながら、経営者の目から期待と課題を語られている点が重要なのだろうと気づきました。すなわち、これから管理職を目指そうとしている方にとってもよいガイドになる本だと思います。


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