#2 最初にやったこと編 - 経験ゼロからフェス「岩壁音楽祭」を立ち上げるまで
5月に立ち上げたフェス「岩壁音楽祭」について、運営未経験者がフェスを開催することのリアルな内情を連載。“オープンソースなフェス”として来年以降も継続していきます。
なぜ実情を公開するのか、フェスの概要、予算・赤字、スケジュール感など含め、連載はすべてこちらにまとめています。
前回のnoteでは、高さ50mの岩壁を目にして大興奮した次の瞬間フェスが立ち上がってますが、実際何から手をつけたのか。今回はフェス立ち上げのファーストステップとしてやったことを公開していきます。
また、岩壁音楽祭は信じられないくらい行き当たりばったりで約300万も赤字を出し、それでも助言をもらいながら何とか今年初開催した”出来たてほやほやフェス”です。自分たちの得た知見を公開しますが、欠陥も多いです。温かい目を向けていただき、適宜アドバイスなどもらえると嬉しいです。
最初の最初にやったこと
とにかく岩壁を目にした時の興奮が全ての始まり。なので、まずは会場の動画を見てほしいです。入口からの光景が1分にまとまってます。
動線、エリア分け、音の干渉、何もかもが完璧...。この岩壁に囲まれたロケーションを見てぶち上がり、次の瞬間にやったことは主にふたつ。
・写真を撮りまくり主催のもうひとり(東京在住)にテレビ電話
・Googleマップの航空写真から目測で会場図を作成
まずは東京在住のマイメンに写真をひたすら撮って送りつけます。岩壁が写真に収まりきらないほどでかいので、最終的にテレビ電話で実況しながら会場を駆け回って興奮をその場で共有。一緒に大はしゃぎしました。以降も岩壁音楽祭は「岩壁をみたときの熱量の共有」がカナメだったので、思い返してもこの時間はとても重要でした。
そして、もう絶対にやりたいと思ってしまったので「なんらかの形に残さねば」という思いが強く、Google マップの航空写真をスクショして会場図を作成。
この資料をいろんな友人に送りまくりました(何回も言いますが興奮してました)。いま見るとあまりにも稚拙で、何でこの図でフェスできると思っていたんだろう...。とはいえ、いくら陳腐でも"資料"が投げ込まれ、友人間でも「いよいよこれは本当にやりそうだ」という雰囲気に。最初はとにかく資料をつくることが大切だったと思います。
企画書も作成しました。載せていた情報は大まかにはこんな感じ。目次だと思ってもらえれば。
・開催概要
・会場アクセス
・アーティスト情報(確定 / 検討情報を分別)
・会場内イメージ(画像・エリア分け)
・問い合わせ先
見返すとめっちゃ簡単...。企画書と聞くと大それた感じがしますが、存外ごく普通の情報を束ねているだけでした。
ページをピックアップすると開催概要はこうなっています。「場所・日時・金額」って感じです。
会場アクセスはスクショを載せています。整えて配置しているだけです。
会場内イメージは写真や、さっきの即席会場図を掲載。一番テンションが上がるページです(みんな興奮します)。
このくらいの情報をまとめるだけで企画書が完成。これを持っていろんな人にフェスの話をすることができるようになります。
挨拶回り
ということで各所を回っていくのですが、こんな順番でした。これらのどこかがストップをかければ開催は困難です。
①会場の管理者
②行政(市役所・町役場など)
③警察・消防
④周辺住民の方々
岩壁の場合「①会場の管理者」にはすぐに連絡しましたが、「②行政」「③警察・消防」は思い至らず開催発表直前の挨拶となってしまい、冷や汗ドバドバでした。特にこのふたつは基本平日の訪問に限られます。会社員である手前ここの都合がなかなかつかず、学生の友達と協力しながら何とか進めました。挨拶は早いに越したことはありません。
①会場の管理者
ネットで検索すれば大体の場所は問い合わせ先が出てくるので、まずはコンタクト。不明な場合は役所に聞いてみるか、付近にお住いの方が知っていることが多いです。
・日程は問題ないか
・大きな音を出してもいいか
・会場費はあるか
・入場料をとってもいいか
・当日、一般の人が入れなくても大丈夫か
そもそも開催できるかも含めて、この辺を確認。スムーズに進めるために、その場所で過去に開催された催し物について徹底的に調べておくのがオススメです。例えばすでに音楽イベントが開催されていれば話が早いし、前例を踏襲すれば相手にとっても安心感があります。
岩壁音楽祭の会場の場合、「石工サミット」という石切体験会が毎年開かれていて、何と「石切山コンサート」なるクラシック演奏会も...。これになぞって、最初はフェスではなく”コンサート”と言って概要説明していました。コンサートと称するのはかなり抵抗があったのですが、"フェス"と言っても全く伝わらないのに"コンサート"と言った瞬間「それならやったことあるし、いいよ!」という感じ。前例の延長線上で、”ものすごく大きいコンサート”として相談を進めました。
岩壁の会場は地域の振興会の皆さんが維持・管理しています。フェス開催も快諾してもらい、当日にはエントランスで山形名物の芋煮をふるまってもらいました。ウェルカムドリンクならぬ「ウェルカム芋煮」です。
ふざけたネーミングですが、実はこれが超重要な「④周辺住民の方々」への説明に効いてきます。
②行政
市役所や町役場に開催を伝えます。「①土地の管理」が行政機関の場合も多いです。主にこんなことを伝えました。
・フェスの概要
・土地の管理者の許可がとれていること
・警察・消防と相談し、安全に開催すること
特に最後の安全面が肝です。地域や担当者によってイベント慣れの度合いも様々ですが、警察・消防としっかり相談しながらなら安心感があります。
また、特にローカルの場合は警備会社なども具体的な会社名を挙げられると、地域の方もなじみ深い社名の場合が多く、安心材料になります。
③警察・消防
警察・消防がイベントの存在を把握していることがとにかく大切。
口コミや問い合わせからイベントの存在を知るなどということがあると、不審に思われてしまうことも。開催決定時点で挨拶できると良いかと思います。
そして「安全面に最大限配慮しますが、アドバイスも頂けると嬉しいです」といった関係づくりができるとベストです。地域によって懸念項目も様々なので、この連携は必須です。
④周辺住民の方々
会場周辺やアクセス上で影響が出そうな場所にある住宅に挨拶に行きます。
音楽イベントの場合は騒音がネック。騒音のクレームとして警察に通報が入れば警察も動かざるを得ず、最悪、音を止めなければいけません。音楽イベントとしては最悪の事態...。本当の地獄です。
岩壁の場合、会場の目の前に民家があり、こちらへの迷惑がないかどうかがナンバーワン懸念材料でした。「音を止めさせられて全方位からぶちぎれられる」という内容の悪夢にうなされ泣きそうな日々の中、開催3か月前から挨拶回りを始め、開催前日も含めて計10周ほどご挨拶に訪問。さらに地域の区長さんにお願いして、無料招待券を配付していただきました。
ここで「①土地の管理者」に芋煮をエントランスでふるまってもらったことが功を奏しました。「招待券を手に、入口まで行ってみたら知り合いが芋煮を配ってた」という、地域としては何ともハートウォーミングな状況になっていたのです。イベントが地域に根差すことの重要性を痛感した瞬間でした。
思い立ったら共有
以上、やると決めたらまずはこの辺をやっておくと良さそうです。
・とにかくなんでもいいから資料化
・関係各所に挨拶
・周辺の方々と協力するのが一番
雑に一般化すると「やるってことをみんなに伝える」ってことです。文字にすると地味ですが、イベントの話をいろんな人に相談して、だんだん現実味を帯びていく過程は最高に楽しい。ドーパミンがいっぱい出るのでやった方がいいです。
次回はフェス運営チームの結成や役割分担などを書けたらと。岩壁音楽祭は東京・山形の2都市に運営メンバーが散らばり、リモートで連携していました。中にはフェス当日に初めて顔を合わせたメンバーも...。そもそもどういうメンバーをどう集めたのかも含め、公開していきます。
Info.
岩壁音楽祭のオフィシャルライブ映像 第1弾を公開しました。
岩に反響する音楽。多幸感あふれる日中の岩壁です。
来年6月6日(土)-6月7日(日)の第2回開催に向けた情報もTwitter・Instagramで発信していくのでチェックしてみてください。
*岩壁音楽祭2020の開催日は10/31(土)-11/1(日)に変更となりました。(2020/4/10)
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