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ドライブインの音楽イベントを開催しました - DRIVE IN AMBIENT

6/6(土)、ソーシャルディスタンスを確保した音楽イベントとして "DRIVE IN AMBIENT" を開催しました。全員が車で参加、開け放った荷台でくつろぎながら、アンビエント(環境音楽)を楽しむイベントです。

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6/6(土)の開催から1週間、念には念を、参加者全員の体調等を継続確認して何事もなく今日を迎え、初めて"成功した"と言えるようになりました。そこで、自分たちの企画・準備・開催について公開します。なかなか従来の音楽イベントが再開できない中、この知見が広まって各地でドライブインのイベントが開催されれば本望です(行きたい!)。また、アドバイスなども、あれば頂けると嬉しいです。
DRIVE IN AMBIENTは今後もブラッシュアップして規模を拡大し、次回は7月ごろに開催します。

移動する部屋としての車

自分たちは「岩壁音楽祭」というインディペンデントフェスを運営しているチームです。その岩壁音楽祭も4月には秋への延期を発表。延期によって生まれた時間で、どういった形式なら大人数での音楽体験が可能か、思索を巡らせていました。音楽イベント最大のネックは、飛沫が大量に発生してしまうこと。逆に参加者全員が壁で区切られ、いわば移動する部屋があれば開催は不可能ではない?.........全員が車にいればできる?

延期発表後、運営チームにアイデアベースで話してみたところ超乗り気に。よし、やってみよう!ということで4月中旬ごろからリサーチを開始。この時はドライブインシアターのレイヴ版ということで「DRIVE IN RAVE」と呼んでいました。出演したポッドキャストでも話しています。

その後、ベルリンからまさにドライブインの音楽イベントの様子が拡散されました。"hardstyle social distance"と言われてTwitterでバズっていたのを見た人も多いかと思います。

火柱とレーザーと花火のど派手な演出がすごすぎて、ただただ爆笑してしまいました。想像の100倍の規模ですが、チームのそれぞれが頭の中で思い描いていた光景を実際に目にし、これは絶対やるべきだと確信しました。

車中で聴いてて楽しいのか

とはいえ車でライブを見るとなれば、まず踊れない。従来の音楽イベントとはあまりにも前提が異なり、既存のライブをそのままドライブインにしても成立しないのは明白でした。

・体験をテスト
最初に、ロケハンも兼ねて「車中で音楽を聴く」という体験をテストしました。

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やってみた感想としては、不満のオンパレード。

「車に何時間もいられない」
「ダンスミュージックを流しているのに外に出られないという制約へのヘイトがすごい」
「FMカーラジオは低音が潰れてダンスミュージックに不向きで、外スピーカーの方が圧倒的に良い」

まず、車中にいることのストレスが半端じゃありません。走っていない車の中にいるのってこんなに窮屈なのか。閉塞感で爆発しそうで、ライブをみながら何時間もいるのは流石に過酷すぎます。

そして音響もカーステのみでは明らかに物足りない。あのベルリンのイベントも、実は音響はすべてFMで飛ばしてカーステで聴く"ドライブインシアター方式"だったようです。でも正直、カーステのみで聴くなら家にいて配信で楽しんだ方が良い。やはりせっかく現地に行くなら、車の窓を開け、大きいスピーカーから、配信では聴けない音量で音楽を感じたい

・ダンスミュージックはドライブインに不向き
音楽のジャンルについてもヒップホップ、弾き語り、ポップスなど色々試してみたところ、リクライニングしてチルい音楽を聴いた時がダントツで良かった。これを踏まえ、音楽性はダンスミュージックではなくアンビエント、「DRIVE IN RAVE」改め「DRIVE IN AMBIENT」という概念が誕生しました。

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あとはアンビエントをいかに楽しめるかにチューニングし、満足度を高めていきます。星空や夕焼けなど、自然が映えるロケーション。鳥の声など、天然の環境音が入ると尚良し。おのずと演出も決まってきます。
また、この頃には「ソーシャルディスタンスを確保したイベント形態」としてドライブイン・ドライブスルーの注目度が高まり、CNNが事例をまとめた記事が話題になりました。

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リサーチしてきたドライブイン事例の中で、この荷台を開け放ってくつろいでいるのが一番快適な車での過ごし方に思えた。DRIVE IN AMBIENTも「広々とした荷台で瞑想しに行く」というマインドで参加してもらうイベントとしました。

ドライブインの運営

音楽性と楽しみ方が決まったところで、あとは開催に向けて運営を詰めていきます。
まず前提情報として、イベント事業者向けに自治体がHPでまとめている情報を熟読し、そもそも開催して良いのかも含め、クリアすべき条件を把握しておきます。
また、あのベルリン発ドライブインレイヴのHPには詳細な注意事項などがまとまっており、こうした先行事例を参考にしました。日本のドライブインシアターの取り組みもとてもわかりやすく、勉強になりました。

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https://www.ditjapan.com/issue/1084

大まかな流れとしては以下のようになります。
参加者は入場から退場まで車で移動。1台ずつ誘導して接触を防ぎますが、万が一の場合にも備えて事前に情報を控え、追跡可能にしておきます。

・チケットは車1台ごとに事前購入
・車1台につき最大2名まで
・事前に全員の氏名・電話番号・居住地をリスト化
・エントランスで全員検温し、リストと合わせて控える
・エントランスで手指消毒、マスク配付
・原則トイレ以外は車から離れない
・トイレ等で降車する際は必ずマスク着用
・トイレは1人ずつ。待機列は距離を確保
・開催前後の参加者の合流防止の徹底

運営方針が固まったらあとは開催地の決定。実はこれが最大のハードルでした。
というのも、こんな時期に前例のないイベントを許可してくれる土地を見つけるのは相当難しいはず。というかそんな土地はないと思っていました。しかしなんと、岩壁音楽祭の音響の方が絶好のロケーションを所有しており、協力してくれることに。本当にお世話になりっぱなしです...(ヘラジカサウンドさん、TORUSさん、ほんとうにありがとうございます)。
今回、東京近郊で場所を見つけて許可を取り付けるのは困難だったかもしれません。構想から1か月半というスピードで実現できたのも、地域に根付いて協力していただいたからこそでした。

当日の発見

そして待ちに待った開催。この3か月、ライブハウスにもクラブにも行けなかったので、でかいスピーカーで大きい音を聴いただけで嬉しすぎて泣きそうでした。

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その他にも実際に開催してみると様々な気づきがありました。参加者・運営スタッフのアンケートと一緒に紹介します。

<観客>

「カップルが身を寄せ合いながら音に聴き入っててかなり良かった」

これは心があったかくなりました。車ごとに仕切られているので、周りの目が気にならず、自ずと距離も近くなる。イベントに来ているけど、まるで家にいるかのようにみんなリラックスしていました。従来のライブではなかなか見られない光景。
逆に1台2名までという制約があったため「車内でふたりきりでアンビエントを聴くのは相当親密でないと照れる」という声もありました。ちょっとプロムっぽいです。

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<音響>
当日は外スピーカーと同じ音をFMで飛ばし、ラジオの周波数を合わせてカーステでも流していました。ここの調整が難しかったようです。

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「FMはハイエンドと低音が弱く、そこを外のスピーカーから補う必要がありました。」
「バック駐車して荷台からFMカーラジオを聴いていると、スピーカーの左右が外のスピーカーと逆になってしまいます」

外のスピーカーで聴く音が一番良いということになってしまうと、トイレに行くために車を降りたときが一番良いといことになってしまう。それではドライブインの意味がないので、外ではなく車で聴く音が一番良い状態にしていきたいと思います。「FMカーラジオで足りない音を外スピーカーで補う」というバランスを作り出せれば、車内で聴く音が最高、かつ、ドライブインで初めて体感できる音楽体験を提供できるかと。

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<運営>

「緊急時以外で唯一 車外に出られるのがトイレに行くときですが『この人はトイレ行く人なのか』の判別が難しく、混乱に繋がりかねない」

地味ですが超大切。これは、次回はエントランスでパスを渡しておき、トイレに行く際は必ずそれを首から提げてもらうことにしました。

「車から全く降りられないのはしんどい。荷台に腰掛けていると『出てもいいかな?』と気が緩んでしまった。」

「車から出るな」と徹底しているとかなり窮屈さを感じてしまう。そこで車の周りにラインを引いて、むしろそこまでは出ても良いというバッファを設けることにしました。そしてこの各車のラインを2mずつ距離を確保します。

「スタッフが参加者に接触できないため、強行突破するなどのルール違反者が出ても直接止められない」

実際にあった事案ではありませんが確かにその通りでした。距離を確保しつつ止める手段...
これについて、合理的な解決策としては「セキュリティのさすまた所持」しかアイデアがないのですが、物騒&失礼なのでまだ検討中です。

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次回は規模を拡大

今回の様子は1分ほどのアフタームービーにもまとめています。
当日の温度感も感じてもらえたらと。

次回は7月後半あたりに、規模を拡大して開催します。
自分たちは巨大な岩壁を背にして開催する岩壁音楽祭のチームなので、次回は岩壁のある場所での開催に向けて進行中です。もちろん、開催については状況を見ながら慎重に検討をしていきます。
詳細は決まり次第、岩壁音楽祭のSNS等から発表するので是非チェックしてみてください。


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