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小説を楽しむ秘伝のタレ

文豪たちに笑われている。
私がそう感じるのはわくわくして読み進めた小説を楽しめている自信がないからだ。
読後に「おもしろかった~」と思えてもこのおもしろいは果たして小説のおもしろエキスを100%味わったおもしろいなの?どうなの?絶対もっとおもしろく読めたんじゃない?って考えちゃう。
名作の魅力をしっかり噛み締められていない、そんな私を指さして笑っている文豪たちを想像してしまう。

でも小説の「おもしろい」は個人の感性に帰結されがちなので、これを誰かに相談したとしてもおそらく「じゃあ、あなたにとってその小説はその程度なんじゃない?」みたいなことを言われて終わりそうじゃん。かなしい。
そうじゃなくて、もっとその小説の楽しさおもしろさ、魅力を味わいたいんだよー、相性もそりゃあるんだろうけど小説をもっと楽しむことをあきらめたくないんだよーとずっと思ってました。
そう思っていたらなんともありがたい本がこの世に誕生したんです。

(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法

この本はタイトル通り「小説の読み方」に関する本なんだけど著者の三宅さんがまえがきにも書いているようにこの世には「小説の読み方」に関する本って全然ない、本当に。
「本 読み方」で検索すると速読、精読、読書の効果、あと自己啓発ちっくな読んだ内容を自分のものにする、みたいなのはわんさか出てくるのに!!
だからこそこの本が発売されるときにタイトルを見て(これは絶対買わなきゃ…、私が求めてたやつじゃん…)と決意したのですぐさまAmazonさんでポチっと予約をした次第です。

こちらの本は20作品を挙げながら小説をおもしろく読むコツを授けてくれるんですけど、これを授けるにあたって取り上げてくれるつまずきポイントが(そうそうそう!)ってなるんだよね~。
小説を読むときのつまずきポイントが普遍的なのか三宅さんの掬い上げる力がすごいのか(おそらく両方)。
例えば20作品中の1発目が「カラマーゾフの兄弟」なんだけど私はやっぱり海外の作品は人名がぐるぐるしちゃう、ロシア文学は特に。
だってみーーーーんな○○○○フじゃん。この○○○○フさん誰だ???ってなる人絶対多いでしょ。あとは○○スキーとか。
私なんかは自分で相関図をメモしながらじゃないと何回もページをいったりきたりしちゃうんだ…。
そしてこの「カラマーゾフの兄弟」についてのコツ、一生懸命に読書に向き合う人ほどびっくりするというか(こんな手を使っていいのかよ…)って気持ちになると思う。ここ、気になる人は読んでくれ。
私は適当な人間なのでこのコツは長い作品を読むときにすでにやっていたことでもあったのですが、これを「小説の読み方を伝える本」に明確に書いてくれたことがけっこう大きいんじゃなかろうか。
本に書いてあったことだし、こういう読み方もOKだよね~♪って大手を振ることができるので。
三宅さんのコツは押しつけがましくなくて取り入れることへのハードルも低くて(よっしゃいっちょ真似してみるか!)って実践する気持ちにさせてくれる。

この本のなかで三宅さんは小説を読むうえで大切なことは日常生活を送ることと書いてくれている。
小説は現実逃避だけではなく日常と戦える、戦うためのものであると。
ということは、小説って別に読書好きな人のためのものではなくて日常生活を送るすべての人のためのものであるしすべての人が楽しめるってことだよなあ。
だって日常生活頑張ってるじゃないですか、みんな。
学校での勉強以外にも部活や塾に行く学生さんも社会人は仕事や家事があって子育て中の人は育児もあるし病気を抱えながら生活している人もいる。
そんな状況で小説を楽しめるようになりたくてもコツをつかめるようになるまで何冊も読む時間なんてないよー、ムリだよーって人は多いと思う。
それに忙しくても疲れていても勇気を出して(たまには読んでみるかー)って手に取った小説が楽しめないとか結局なに?とかわからなかった…ってなったらちょっとへこまないですか?私はへこんだ(経験談)。
そもそも意欲的にチャレンジしたことが上手くいかなかったことってどんなことでもへこむじゃん。
頑張り続けたくてそのために読もうとしたら逆にダメージ食らうというね。
だから、忙しく日常生活を頑張っている人にこそ私はこの本を読んでみてほしい。
この1冊で小説を楽しむコツをたっぷり教えてくれる。
日常や人生でのしんどいことがあっても小説を楽しめるしそこから癒しを得ることもパワーをもらうこともできる。
勉強や仕事や人間関係、家事でも育児でもなんでも、毎日くそー、こんにゃろーと思いながら過ごしている人はたくさんいるはずで、だからこそ手に取ってほしいと思うよ。

まあ、単純にめちゃくちゃ読んでて楽しいのでいろんな人に味わってほしいってのもあるんですが!
とりあえず個人的にこれは(!?!?)って気になっちゃうでしょ~という一文をいくつかをあげておくね。

正しくなくても、本が面白く読めたらいいのよ。
見てみろ太宰に芥川に三島に川端、と漱石ファンとしては言いたくなる。
主人公・溝口(あるいは三島由紀夫)は、今生きてたら、AKB48あるいはジャニーズのアイドルコンサートでサイリウムを振って、もったいぶった批評分をブログに書き連ねていたタイプだと思う。
「こち亀」読むくらいのテンションで、海外文学は手を出したい。
小説は、時折、嘘をつく。

気になる文がひとつでもあった人は読んでくれ、後悔はさせない(どの立場だよ)。
ひとまず私は綿矢りささんの「亜美ちゃんは美人」読みます…。
あれどう考えても好きなやつだ。
ちなみにこの小説を面白く読むコツって他の作品にも応用できる認識でいいのかな?応用する気満々なんだけど。


それとあとがき!三宅さんの本はあとがきまでおもしろく読めるからずるいのだ。さらにまえがきもおもしろいんだよな。
なので最初から最後までおもしろいんですけど、作品への愛がバシバシ感じるからね、そこが最高なんだよね。
愛のない言葉って響かないよな~と思っているので。
秘伝のタレを意固地に守りとおす頑固な店主じゃなくてありがたいです。
おかげで小説を楽しめそうです。

そしてこちらの御本、なんと2020年9月23日、本日発売なんですよ~!
イェーイ!ドンドン!パフパフ~♪
Amazonさん3日も早くお届けしてくれたので連休中で読んじゃいました。
最近ようやく秋めいてきたところですし、読書の秋のためにみなさんもいかがでしょ~?


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