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「構造化」という概念をリバース構造化する

UXデザイナーとして働き始めて、3年が経ちました。今では、マネージャーとして8人のUXデザイナーをマネジメントしているのですが、これまで関わってきたUXデザイナーが共通して持っている素養として「構造化」力があります。

新卒入社したメンバーにも「構造化能力をつけよう!!」とは言うものの、どこか心の中にひっかかりが残っていました。それは、そもそも「構造化」の抽象度が高く、人によって理解が異なるのでは?という懸念でした。

ここから、「構造化」という概念自体を構造化して、共通認識化する必要があるのでは?と思い、この記事を書くに致りました。

「構造化」ってよく聞くけど、実際なんのことなん?と感じている方に特に参考になることを祈っています!

構造化はUXデザインにおける必須となる思考であり、技術である

デザインの現場は常に不確実性との戦いです。そして、不確実が上がれば上がるほど「意思決定」が難しくなるという比例関係にあるのが実際のプロジェクトです。

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その中で、リサーチを通して情報の量を上げ、分析を通して構造化し、意思決定を加速させるのがUXデザイナーの役割の一つだと考えています。

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POや経営者に並走して、複雑な状況・情報を構造化して、意思決定を加速させる。その間にある「構造化」で実際に僕たちは何をしているんでしょうか?という点の解像度を高めるのがこの記事の趣旨です。参考にしているのは、自分自身の思考や、一緒に働くUXデザイナーを観察していて、こうやっているのでは…?という仮説から導いているので、ある程度のバイアスがかかっているのはご容赦下さい!

ここからが本題!

構造化とは意思決定を目的に、混沌とした情報を整理整頓すること

まず結論から述べると、「構造化とは、混沌とした情報の集合体に軸を与え、軸を組み合わせることで混沌とした情報を整理整頓すること」だと定義しています。

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特に重要な点が、「軸を与え、軸を組み合わせる」という点です。構造化と聞くと、因数分解や、3Cのようないわゆるフレームワークを思い浮かべることが多いのですが、それもあくまで軸の一つだと考えています。
軸の種類には、例えば

* 分類
 * 3Cのようなフレームワーク
 * 年齢などのデモグラによる分類
 * 属性
 * etc...
* 抽象⇔具体
* 因果関係
* 時間
* 因数分解

等があります。世にある構造化のフレームワークも、これらの応用や、組み合わせが多いように思います。


構造化をするためには「軸」がキモとなる

周囲を見渡してみて、「構造化力高い!」と思う人は、構造化の軸の引き出しが多く、またコンテキストに適した軸の選定も最適なので、状況に応じたスピーディな構造化が可能なイメージがあります。
フレームワークを単体で暗記するのではなく、それがどの軸で構成されているのか?という一段階抽象化したレイヤーで記憶に残しておくことで、応用が効く構造化力(引き出し)を付けることができます。
また、軸を知っているだけではなく、時々の「選定」も重要ですが、これは今の所意思決定が加速されたか否かという判断軸で、日々の経験を振り返り続けるしか磨く道は無いのではないかというのが現状の結論です。つまり、構造化の学習には、Feedbackを受ける機会が不可欠であると言えるのではないか?と考えています。

構造化を「軸」で考えた例

世の中にはたくさんの構造化の手段がありますが、ここで「構造化を軸で考える」とはどういうことなのかを例示してみようと思います。

例えば、CJM(Customer Journey Map)というフレームワークがありますが、これは
A(横軸): 時間(t)という軸
B(縦軸):人を因数分解(行動、思考、ニーズ、課題、感情 等)

という、時間×因数分解の軸を組み合わせたフレームワークだと考えられます。

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他にも例えばER図は
A:情報を分類(クラス生成)
B:関連性
C:因数分解(プロパティと属性)

という軸を組み合わせたフレームワークと言えます。

ER図概要

※若手プログラマー必読!5分で理解できるER図の書き方5ステップ より引用

また、構造化を深堀りするにあたり参考にしたこの記事(構造化とは|構造化の意味と【5つの構造化思考】を徹底解説)にある以下の図も

A(横軸):短期/長期の分類
A'(縦軸):目に見える/見えないという分類

という2つの分類軸を組み合わせた構造化だと言えます。

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最後の例は、価値マップです。
価値マップも、元々はユーザーの発言というカオスな情報を、まずは
出来事/心の声/属性 で分類し、更にその後、抽象と具体で 分類、最後に因果関係と関係性という軸で本質を見つける作業で、3段階の構造化が行われていることがわかります。

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KA 法を初心者が理解・実践するための研究(2016) 安藤他 より

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「価値マップ」で引き出すユーザーの潜在ニーズ より

このように、一件複雑に見えるフレームワークも、紐解いて見るとシンプルな軸の組み合わせであることが多いです。
これらはすべて、複数の軸の組み合わせでした。経験上、単一の軸のみで構造化するとあまり気づきが得られず、結果的に情報の不確実性が下がらずに、意思決定に寄与しない構造化で終わってしまうことが多いです。まずは〇〇を3Cで分析しよう!という単一の軸だけではなく、それに別の軸も組み合わせて分析することで深い洞察が得られるでしょう!

ここからも、軸のインプットの多さと、選定のセンスが重要なことがわかると思います。

フレームワークを生み出すとはどういうことか

ここで出した例は、既に世の中にある構造化の例をあげましたが、デザインの現場ではしばしば、構造化するためのフレームを自作する必要があります。そして、それを議論の過程で瞬発的に行う必要があります。
これまでのことを踏まえて、僕が定義している「フレームワークを自作する」とは、「コンテキストに適した軸を選定、組み合わせること」を指しています。なぜそんなことが出来るかというと、フレームワークの起点になっている単体の軸は普遍で、組み合わせ次第で新しい構造化を無限に生み出すことが出来るからです。

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例えば、Goodpatch Blogにある最新の構造化の事例↓も、リバース構造化してみると、

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価値の構造化で、プロダクトの未来を描く。FORCASとGoodpatchの共創 より

A. 1〜6というプロセス軸
B. 過去と未来という時間軸
C. プロダクトと価値という分類軸


の3つの軸の組み合わせで、全く新しいフレームワークが出来ているように見えます(構造化した本人に聞いたわけではないので、実際の思考プロセスとはもちろん異なると思います)

このようにして、リアルタイムで情報の解像度をあげ、意思決定をサポートしていくのが、構造化の重要な役割ですね。

さいごに:瞬発的構造化の価値

昨今、瞬発的な構造化力の需要がどんどん高まっていると感じることが増えてきました。

コラボレーションが基本となってきた現代では、熟考を重ねた上での提案⇔承認の関係(いわゆる、偉い人へのプレゼン)から生まれる意思決定も重要な一方、情報収集から意思決定の過程の共有、即時的な意思決定によってスピーディーに仕事を進めることの重要性も無視できない状態になってきているのではないでしょうか。

これまではホワイトボードとペンで構造化していたコトも、オンラインコラボレーションツールの普及によって、過程の共有の価値がより高まっています。どんどん構造化して、良質な意思決定を生んでいきたいですね!!


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