29歳フリーター

「では、結果は追ってご連絡させていただきますね。」
「かしこまりました。何卒よろしくお願いします。失礼します。」

 東京は7月、いよいよ慣れないスーツにジャケットというスタイルに嫌気が刺してくる暑さとなったが今日も書類を片手に都内を奔走していた。
 何を売っているのかも作っているのかもわからない会社に頭を下げ、労働意欲をアピールし、結果祈られる。この日々が始まり半年は経っただろうか。本心は働く意思など無いが金が無ければ生きていられない。働くか死ぬかの二者択一で前者を選んだのだから仕方がないと言える。
 日々のアルバイトと数ヶ月に一度の親からの援助でなんとか生活をしている。「死んでない」というのが正しい言い方かもしれない。
 今日はアルバイトの休日として代わりに面接を2件こなす予定で、これから2社目に向かう所である。大学の入学式に袖を通したスーツは十年の歳月を経て今また汗を吸わせられているのである。
 帰宅後、度重なる連敗があまりにも応えたのか、面接時の自己PRの内容が薄いのではないかと改めて自己を鑑みる時間を設けた。

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