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「分断を煽る」という言葉を、声を上げるマイノリティーを黙らせたいがために 誤用・悪用する人たち

「Divide et impera(分断して統治せよ)」という慣用句が歴史的に存在するように、「分断」というのは本来、行為主体は「権力者」です。

近年ですと、たとえば、ドナルド・トランプというアメリカ大統領の地位にあった者が、移民を自分たちの仮想敵に据えて社会の分断を煽ることで、一部の層から絶大な支持を獲得したのは、事例として最も分かりやすいかと思います。

また、特定の個人ではなくとも、格差社会や搾取構造のように、社会全体の構造が人々の分断を深めることもあります。ですが、そういう構造ができあがる過程で様々な意思決定をしているのは、結局のところ権力者たちであり、分断の主語は「権力者」であることには変わりません。

◆分断の結果、社会的弱者が生まれるのである

確かに、民が分断を煽ることもあります。ですが、それは権力者によって分断構造が作られたのちに、それを支持する者や既得権益を持つ者たちによって行われます。つまり、前提に「権力者による分断」が必須条件です。

ですから、たいした権力をもっていない(=社会構造を決定する上で十分な意思決定ができる地位に無い)社会的弱者・マイノリティーは、社会の分断を深めることや煽ることは構造上不可能です。

むしろ、社会的弱者が存在すること自体、これまでの権力者たちの意思決定の積み重ねによって、社会が分断されてきたその結果に過ぎません。


◆「過激なフェミが分断を煽る」という矛盾言説

ところが近年、現状の社会の理不尽に対して異議申し立てをする社会的弱者やマイノリティーに対して、「分断を煽っているー!」「分断を深めるだけ!」という言葉をぶつけるケースが非常に多くなったように感じています。

たとえば、フェミニズム関連だと、「過激なフェミニストが社会の分断を煽っているー!」「フェミニズムなんて男女の分断を深めるだけ!」なんて言ったりするわけです。

まるで、セクハラを訴えた被害者に対して、「職場の空気を悪くした!」と矛先を向けるかのように。

◆権威主義者が「分断」を悪用し始めた

でも、先ほど指摘したように、それは「分断」という言葉の本来の意味を完全にはき違えています。

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現代の新しい社会問題を「言語化」することを得意とし、ジェンダー、働き方、少子非婚化、教育、ネット心理等の分野を主に扱っています。社会がちょっとでも良くなることを願って、今後も発信に力を注いで行こうと思うので、是非サポート頂けると嬉しいです。