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実地指導 初動対応② 「運営法人へ報告すること」の3つのメリット

実地指導は、介護保険に係る地域の管轄部署からの案内から始まる。

どの地域でもおそらく実地指導を行う担当者から電話があり、実施月から事業所の都合の良い日を打ち合わせして実施日が決まる。その後、改めて実施日時のお知らせとともに、事前提出又は当日準備しておく書類などが文書として届く・・・といった流れになるだろう。

この対応をするのは管理者や施設長だろうが、過去に実地指導を受けたことがあっても初めて受けることになっても心理的動揺は避けられない。

2度の実地指導を受けたことがある私でも、実地指導の連絡を受けたときには自分の心臓の音をハッキリ感知できるくらい心が乱れたことを覚えている。オリンピックの間隔より長いのだから仕方ない話だ。

さて、電話のやりとりで実地指導の日取りは決まり、詳細は後日文書で届くことは分かっていても、気持ちは一向に落ち着かないもの。現場の話しやすい職員やキャリアのある職員に「〇月に実地指導があることになってさー」などと言葉にして落ち着かせようにも、こればかりは役職ある立場でないと緊迫感は分からないので、さらに孤独感を抱くかもしれない。

そうして「何からやればいいだろう」という焦りや不安は募るばかりで、インターネットで実地指導に係るワードを検索したり、介護ブログの体験談からヒントを得ようとするだろう。

・・・しかし、ここで本当の意味での安心感を得たいならば、孤独に戸惑うよりもインターネットの情報に救いを求めるより先に行って欲しい、具体的なアクションをお伝えしたい。
それは昨日の記事でお伝えした、実地指導の初動対応として重要な「実地指導の担当者との対応は管理者が直接行う」と同じくらい重要なことである。

運営法人に実地指導があることを報告する


「そんなことは当然だろう」とおっしゃるかもしれないが、キャリアのある管理者であっても、現場スキルが高い施設長であっても、意外に頭から抜けてしまうものである。

上記のように、どんなに現場では冷静に対応できる管理者であったとしても、実地指導の連絡は完全に寝耳に水の話だ。現場対応のように蓄積された経験も少ないため、不安や焦りだけが一気に溢れて冷静さを欠いてしまう。

優れた管理者だって人間だ、取り乱すことだってあるだろう。
しかし、いつまでも動揺していても以降の業務に支障が出るし、実地指導の正式な案内が文書で届くまで取り乱したままなのも精神的に不健全だ。そのため、その後にもちゃんとつながるアクションとして「運営法人に実地指導があることを報告する」を推奨したいのだ。

では、なぜこれを推奨するのかというと、その理由は次の3点だ。

① 報告するというアウトプットにより、事態を客観視でき冷静になれる。

② 実地指導の準備にあたり、第三者の視点として協力してもらえる。

③ 報連相はビジネスマナーとして基本かつ重要。

1つ目の「報告するというアウトプットにより、事態を客観視でき冷静になれる」は何となく分かるだろう。他人に自身の状況を話すことで落ち着きを取り戻したり、課題に対しての方向性が見えることはあるものだ。
確かに実地指導は少し先の話であり不安点はあるだろうが、特に運営法人に報告することにより、経営陣も管理者と同様(いや、それ以上)の危機意識をもって共感してもらえるはずだ。
あるいは、経営サイドが管理者以上に動揺する様子ならば、それはそれで良いだろう。人間はなぜか自分よりもパニックになっている人を見ると冷静になれるものだ。経営陣が動揺により落ち着きを取り戻せるならば、それはそれで有益と考えよう。

2つ目の「実地指導の準備にあたり、第三者の視点として協力してもらえる」というのは分かりにくいだろうが、割と重要な話だ。
実地指導だけでなく日常においても、管理者は事業所の体制を整備するうえで「自分一人で何とかしよう」と思う人たちが少なくない。そのため、客観的視点が乏しくなり、「自分はできている」と思っていることが運営基準の解釈と違っていたり、「自分なりにやっている」と思っていることが不適切だったりする。
せっかくの頑張りが報われないというのは悲しい事態だ。最悪の場合、実地指導で指導内容により介護報酬の返還などに至ると、運営法人から「何てことをしてくれたんだ!!」と言われてボロボロになってしまいかねない。
・・・まあ、そのようなことは稀だろうが、このような事態を避けるためにも、自事業所の現状と課題分析を客観的に行う意味でも、比較的現場との関りが少ない立場を第三者に据えて、実地指導の準備を進めることは大切だ。また、後から文句を言われないようにする意味でも、第三者視点んとして経営陣を最初のうちから実地指導の準備に関わせたほうが良いだろう。

3つ目の「報連相はビジネスマナーとして基本かつ重要」は、そのままだが・・・意外に実地指導の日取りが決まってから数日後に運営法人の耳に入ることがある。
これは上記のように実地指導が決まったことに動揺して、うっかり報告を忘れていたということもあるが、「実地指導は法人全体に関わる話」という認識の浅いままに自事業所だけの話という認識をもつ管理者も少なくない。
そのような認識で、特に経営トップが実地指導があることを何かのタイミングで管理者以外から知ったとしたら・・・どうだろう?
運営の不備を隠したくて、ある程度の目途が経ってから報告しようと考える人も全くゼロではないかもしれないが、事業所や施設を任せられている管理者も雇用されている立場だとしたら、そこはビジネスマンとして運営に係ることは報連相するのは基本であり、リスクヘッジとしても重要である。
ちなみに私は管理者であり経営サイドの面もあるが、実地指導があるとなったら他事業所や施設に対して、その日のうちに周知した。それは法人全体に係る話であり、全体で共有するべき内容だと思ったからだ。

・・・と、何だか仰々しい内容となったが、要は「実地指導が決まったら、とっとと運営法人に報告したほうがメリットがある」と言うだけの話だ。
確かに上層部に報告すること自体がストレスであることは理解できる。しかし、管理者のメンタルとして、協力体制として、そしてビジネスマンとして色々なメリットを考えたら、一本電話を入れるくらい何てことないだろう。

実地指導の担当者とやりとりしたばかりで疲弊しているだろうが、ここはもうひと踏ん張りして運営法人、もっと言えば経営トップの耳にちゃんと入るように報告していただければ損はないだろう。

ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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