見出し画像

なぜ介護記録は必要なのか?

■ 介護サービスは記録作成も仕事の1つ


介護サービスの実施後には介護記録を作成する。

しかし、この介護記録の作成が苦手な介護職員は非常に多い。
肉体労働だと思って介護の仕事に就いたのに、書き物がいやに多いことにうんざりする声を上げる者もいる。

そもそも、介護記録どころか文章を書くのが苦手な社会人は多い。
それは学校では「文章の書き方」を教えていないのに、誰もが社会人ともなれば文章くらい書ける力量はあるという間違った前提を持っているからだ。

介護記録となると、介護の専門職としての視点からサービス提供中の出来事や気づきを報告書としてまとめる必要がある。

それは介護サービスを提供した本人しか報告書を書けないためであり、いくら文章を書けないとか書類作成が苦手と言っても、そんなのは言い訳にはならない。

介護は利用者に直接的な介助だけしていれば良い、というわけにはいかない。介護記録の作成もまた、立派な介護の仕事の1つなのだ。

しかし、介護記録の作成を面倒くさがる人はいる。
それは、「サービス後は記録を書くのが普通」とか「みんな書いているから自分も書かなければいけない」という理由になっているからだ。

本記事では、介護記録が必要な理由をまとめていきたい。
内容は介護の教本などに書いてあるような基本事項もあるが、あくまで仕事という観点を基本にした視点で記録作成の意義をお伝えしたいと思う。


■ 介護記録が必要な理由①:サービス提供の証明になる


その目的の1つは、サービス提供を証明するためである。
介護記録がないと介護報酬や利用料を受け取ることができない・・・というわけではないが、結果的に違法となってしまう。

いくら「私たちはサービスは提供しました」と口で言ったとしても、その記録が残っていなければサービス提供をしていないと同義となる。そのまま介護報酬を受け取ろうものなら、返還あるいは摘発ものだ。

もちろん、これは介護サービスに限った話ではない。他業種でもモノやサービスを提供した事業所やお店は、納品書や作業報告書などを顧客へ発行することで仕事の成果を示し、それによって料金を請求することができる。

内容によっては顧客から署名も貰うこともある、介護記録は仕事の対価を正当に受け取るためには必要な証明であることを忘れてはいけない。


■ 介護記録が必要な理由②:今後のサービス提供の情報になる


もう1つ目的は、サービス提供時の利用者の状況を記録するためにある。

利用者の状況とは、心身の状態や生活環境の様子、会話の内容といったサービス中に介護者が確認した利用者に関する総合的な内容である。

サービス中の状況は、今後のサービス提供にとって貴重な情報となる。
そのとき担当した介護職員だけではなく、それ以降に対応することになる介護職員にとっても、支援計画を立てるときにも有益である、サービスに関わる者にとって共有されるべきものだ。

それは単発的に誰もが「おかしい」と分かりやすい出来事もあれば、そのときの介護サービスでは気づかなくても、時系列で並べることによって1つの情報として大きな気づきとなることもある。

介護サービスは、色々な角度での視点が必要であり、カンファレンスといった話し合いで見てくる利用者の情報もあるが、介護記録という媒体を通すことでしか見えてこない全体像もあるのだ。


■ 介護記録が必要な理由③:ご家族への状況報告になる


昨今では高齢者の独り暮らしは珍しくはないので、そのような親の生活を心配したご家族が訪問介護サービスなどを依頼することも少なくない。

また、そのご家族だって仕事や自らの生活があるので、ずっと親のことを気にしてはいられない。しかし、一方でふとしたときに「介護サービスをお願いしているけれど、大丈夫かな・・・」と心配や不安になる。

仮に同居していても、介護サービスの提供は、介護職員と利用者のマンツーマンとなることが多い。特にオムツ交換や入浴介助などの、利用者の体に直接関与する介助となるとプライバシーに配慮する必要があるので、いくらご家族であっても席を外していただくことになる。

このように介護サービスの提供の状況に際して、利用者本人の満足度も大切ではあるが、ご家族が安心感を持てるよう配慮することも必要がある。

そのようなとき、ちゃんと依頼した介護サービスが行われて、かつ利用者たる高齢者の生活が(一応)問題なく成立しているかどうかの証明をすることは重要だ。

そのご家族が安心感を抱いていただく最低限の証明として、介護記録は効果を発揮する。

これは訪問介護サービスであれば、サービス後に作成した記録用紙に記入して複写された用紙を配布したり、端末に入力したものをその場でレシートのように印刷して配布することもある。

介護施設であれば、施設独自に利用者の近影を報告書としてお送りしたり、しかるべき書式にまとめたサービス状況や経過をお送りする。

何を持ってご家族が安心できるかは定めにくいが、ひとまず介護記録という形ある媒体がその役割を担っていることは間違いない。


■ 介護記録が必要な理由④:事業改善につながる


ここまでは介護サービスをちゃんと提供しているという前提で、介護記録の意義をまとめてきた。

しかし、介護記録は事業運営にという視点から重要な要素がある。
それは「サービス漏れの確認」である。

言いかえれば「作業漏れ」であり、本来やるべきことをやっていない・・・という不備を見つけることである。

これは毎月初めの請求業務において、1つ1つの介護記録を大まかに見ている中で、記入漏れとともに「サービス漏れ」が発覚することがある。

例えば、他の介護職員はちゃんとサービス提供して項目にチェックされているのに、1人の介護職員の記録には未記入が続いていることがある。
そこで「これは記入漏れですか?」と確認すると、「え、やるのですか?」と返ってくることがあるため、一緒に支援計画や手順書を確認したうえで是正するように促す。

大抵は軽微であり、支援計画の根幹に抵触しないレベルの話であるが、一応利用者本人やご家族には謝罪する。また、介護職員ひとりの責任ではなく、周知不足として事業所にも責任はあると重く受け止める。

大切なことは介護職員の不手際を責めることではない。そのサービスが利用者にとって何のためにあるのかを再共有し、事業所として事業改善につなげることである。それは再発防止となり、信頼回復につながる。


■ 最後に


お読みになった方々にとっては、とりわけ変わった内容でもなく、本当に基本的なことしか書かれていない記事であったと思う。

しかし、「介護記録はなぜ必要か?」について本質的な意義を答えられる人は少ない。

それは介護という仕事が、現場で汗水たらして介助することというイメージがあるとともに、記録というものがどの業種でも重要な要素になっていることを知らないことに原因があるように伺える。

当たり前だが、介護も仕事である。
仕事においては、作業報告があって仕事が終わる。
その作業報告1つの形が、介護においては介護記録というだけの話だ。

その仕事としての当たり前のものに、色々な付随した有益性があるのだ。

介護記録を書くのが面倒くさいと思ったならば、ぜひ仕事として大切なものであること、そして自分も含めた今後の介護サービスの提供にとって意義があることを思い出していただければ幸いだ。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。







この記事が参加している募集

この経験に学べ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?