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介護記録につながる「文章の書き方」の基本

介護職員の「介護記録はどう書けばいいのか?」という悩みに対して、昨日の記事では「文章の書き方が分かっていないから」という根本的な原因をお伝えした。しかし、文章量が増えると頓挫する読者もいると思ったため具体的な書き方までは割愛したが、今回はそのお話をしたいと思う。

改めてお伝えすると、介護記録を含めて私たちはなぜ文章を作成するのかというと、その目的は「伝えること」である。それは紙媒体だとしても電子媒体だとしても「伝えること」という目的は変わることはないはずだ。
つまり、文章を作成するときは「伝えることを最低限の目的」と定めることが大切なのである。

このようなことを言っても、即座に文章を書くことへの苦手意識はなくならないと思われるので、このまま介護記録に焦点を当てて話を進めたい。
・・・と、本質的な書き方の話をお伝えする前に「伝えること」という目的を達成するための介護記録を作成するうえで、次のことは言っておきたい。

・尊敬語や謙譲語の使い方は知らなくてもいい
・文章構成は気にしなくていい
・表現力なんて求められていない
・漢字は小学校レベルあればいい

・・・1枚の介護記録を書きあげるまでに上記のようなことを気にするあまり、スマホで漢字を調べたり、内容に納得できずに書き直したりすることに時間と労力をかける介護職員は意外に多い。
その努力は尊重したいが、介護記録もとい文章の書き方における「伝えること」という目的を達成するうえで、残念ながら上記のような要素は二の次・三の次である。これらを徹底したところで、残念ながら「伝えること」という目的に直接つながるわけではない。もちろん、介護記録であっても読みやすさや敬意の表れは必要であるが、だからといって基本的な目的である「伝わること」に寄与することはないため、ひとまずここに時間をかける必要はないと思ったほうが良い。

さて、前置きが長くなって申し訳ないが、ここから本題に入る。
「伝えること」を達成するための文章を書くうえで、一番最初に気にすることは何か? それは・・・

「”誰に”伝えるのか?」
「”誰に”向けて書くのか?」

・・・である。

介護記録の意義について考えるとき、「何のために介護記録を書くのか?」となると、記録の種類や役職や立場によって色々な見解が出るだろう。
「介助した実績」「事業所への報告」「利用者の経過観察」「ご家族への報告」「介護報酬の請求」など、1つの記録だけでも、視点の変化や別な記録との組み合わせによって意味や活用は色々である。
しかし、介護記録を作成する理由が「何のため」ではなく「誰のため」と問われたら、即座に返答できるだろうか?
おそらく、キャリアのある介護職員でも、管理職でも、はたまた実地指導で事業所に立ち入る指導員も「?」となるはずだ。

しかし、介護記録だけでなく文章作成において「誰」というターゲットを定めることは非常に重要である。
事業所か? 管理者か? 現場リーダーか? 現場の全職員か? はたまた利用者本人やその家族か? 管轄の市町村か? あるいは自分自身か?

この「誰」を定めることは「何のため」につながり、「伝えること」という目的を達成することに直結する。
例えば、スーパーで夕食の買物をするとき、レシピや分量などを色々と考えて買い物カゴに食材を入れていくと思うが、その際にも実は潜在的に「誰」を考えているはずだ。
夕食を食べる対象である「誰」が自分の子供だったら、好き嫌いも考えるだろうし、アレルギーなども注意するだろう。部活で腹ペコで帰ってくることが多いと自分が食べるよりも分量も増やすかもしれない。何より美味しく食べて欲しいし、ちゃんと栄養となって大きく成長して欲しいという願いもあるはずだ。
これが独身だとしたら、「誰」が自分自身となる。健康診断の結果を考慮して野菜を多めにしたり、仕事で忙しいときのために作り置きすることを考えるかもしれない。あるいはカップラーメンやお惣菜を手に取り「独りだし、これでいいか」と思うかもしれない。

このように物事には「誰」というターゲットを定めることが非常に重要であり、「何のため」を考えることも大切だが、それ以上に「誰」という登場人物が明確になることで、その先に行うべきことも自ずと定まってくるのだ。

このような物言いをすると頭を混乱される介護職員の方々もいると思われるが、介護の仕事そのものは「誰」が起点になって行われているという事実に気づいていただきたい。
介護サービスは、利用者という1人1人異なる「誰」が定まっているからこそ、ADLやアセスメント、これまでの暮らし方、家族構成という情報も知ることになり、課題や希望を踏まえて介助計画を検討していくはずだ。
極端な話だが、介護記録において「誰に伝える」「誰に向けて書く」ということを定めないということは、介護サービスにおいて「誰にサービスをするのか」も分からないまま介助計画を練るのと同様の話と言える。
(まぁ、本人不在で介助計画を作らざるを得ないケースもあるだろうが、今回は置いておいて・・・)

しかし、介護記録という業務になったとたんに急に「誰」が不在となってしまうため、結果として出来上がった記録から「何を言いたいのだろう?」「何を伝えたいのだろう?」「もっと書くことがあるはずだ」と読み手に混乱や不安を抱かせてしまう恐れもある。
実際身近にあったケースとして、利用者の近況をご家族へお知らせする文書なのに、担当した職員によってはまるで業務日誌のような内容で、専門用語や略語を平気で多様してくることもある。これもまた「誰」を想定していないことの弊害であると言える。

さて、本稿では介護記録において大切なことであり、かつ文章の書き方のスタートは「誰に伝えるのか」「誰に向けて書くのか」という「誰」を定めることをお伝えした。あくまでスタートなので、これだけで文章の書き方、介護記録の書き方の悩みが解消されるわけではないが、「ああ、なるほど」と思っていただけたならば幸いである。
介護記録もとい文章の書き方については、色々と書けることがあるので、別途ご紹介できればと思う。

ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのを止めたとしても、感謝。

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