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【介護】管理者が本質的な役割を果たすうえで意識すべき4つの要素

昨日の記事では「現場を回すこと」は介護事業所の管理者や介護施設の施設長の本質的な役割ではない、とお伝えした。不快に思われた方もいらっしゃるかもしれないが、本記事では管理者の本質的な役割を果たすうえで意識すべき要素をお伝えするので、少しでもご理解いただければ幸いである。
とは言え、実践することを除けば基本的に難しい話ではないうえ、経営や運営において誰もが耳にしたことのある言葉が中心となる。

結論から述べると、
管理者がその役割を果たすうえで意識するべきは「ヒト・モノ・カネ」、
そして「情報」である。

いきなりビジネス本に出てきそうな話となったと思われただろうが、それは当然だ。在宅系だろうが施設だろうが、介護サービスはビジネスである。
利用者やご家族へ必要な介護サービスや生活環境を提供して、その対価として介護報酬や利用料金を受け取る立派なビジネスである。決してボランティアではない。「福祉に金銭の話を持ち込むものではない」と考える人たちもいらっしゃるようだが、働いている介護職員は何を糧に生きていけば良いのだろう? と質問を投げかけたい。

さて、介護事業における経済となると脱線してしまうので話を戻すとして、現場を大切にする管理者でも良いのだが、本質的な役割としては事業所や施設に対して「ヒト・モノ・カネ」そして「情報」も踏まえたビジネス視点が必要なのである。

「ヒト」は当然、現場で奮闘する介護職員であり、欠かせない存在だ。運営基準に沿った人員配置を整備するだけでなく、事業所の方針、現場の事情、将来のビジョンからそれなりの職員数を揃えなければいけない。

そして施設は建物や設備が当然あるもの。そして介護事業所のサービス形態によってパソコンや車両などの備品、事務用品や消毒液・使い捨てグローブなどの消耗品などは入り用は多種多様だ。在宅介護などでは身近なものでやりくりするというスタンスはあるものの、社会的なニーズへの対応やビジネスという観点から見ると必要な「モノ」はたくさんある。

そして、これら「ヒト」「モノ」は事業所からの”支出”であり、そしてサービス提供をした対価として得られたものが”収入”である。そして「カネ」という要素に集約され、また「ヒト」「モノ」へ循環していく。(利益という要素もあるが本記事では割愛する)

このような話をすると「それは運営法人の話ではないのか?」「管理者は現場を統括する役割だから関係ない」「介護職員まではわかるが、お金や数字の話をされても困る」と眉間にシワを寄せられる方もいるだろう。
そのようなご意見には理解を示したいところだし、介護における管理者や施設長は現場が大好きな人たちもいるため、管理者経験もある介護の経営側にいる私としてもそうであって欲しいと考えている。

しかし、管理者の本質的な役割における、「ヒト」「モノ」「カネ」の最後の「情報」によって、これは覆されてしまう。

・・・と、その前に介護における「情報」とは何かを考えてみたい。
介護という仕事は利用者への直接介助や生活支援というサービス業であるとともに、介護で困っている人たちの社会的窓口という役割もある。その中において当然、利用者本人や家庭環境も踏まえた個人情報もあるし、事業所や施設内における社内的な機密情報も多くある。(介護に携わる人たちの情報管理の緩さも言及したいが、これも話が脱線するので本記事では割愛する)これらは一般の介護職員が取り扱う「情報」であり、情報管理という観点でいけば現代では顧客情報も社内情報も、どの業界においても厳格な扱いが求められている。

では、介護事業所の管理者における「情報」とは何かと言うと、それは法令・法律、介護事業所においては「運営基準」と呼ばれるものが軸となる。
おそらく業界ごとに法令は定められているだろうが、介護においては介護保険制度(言ってしまえば税金)にて運用されていることもあり、基準を満たさないことが発覚すると改善要請や指導だけでなく、介護報酬(売上)の返還という事態になったり、事業停止・廃止という事態になる。
特に「実地指導」と呼ばれる数年ごとに行われる地域の管轄部署による定期検査には、どの事業所も施設も戦々恐々となる。

ここで重要なことは、この実地指導の指導監査員も含めて検査する側は「管理者は法令や運営基準を理解しているもの」という前提がある。
それはそうである。介護事業所における法令や運営基準というのは「その事業所を運営できるための要件」が明記されているからである。逆に言えば、運営基準に明記されている要件を満たしていないということは、介護事業所を運営できない、つまり「職場がなくなる」「働き口がなくなる」ということなのだ。引いては管理者が運営基準を知らずに要件を満たしていないばかりに「介護職員たちの職場がなくなる」ということにもつながる。

では、運営基準には何が書いているのかと言うと、ざっくり言えば「人員基準」「設置基準」「説明責任」と言った体制作りが定められている。上記でお伝えした管理者が意識する要素に照らし合わせると「人員基準」は「ヒト」、「設置基準」は「モノ」と言って差し支えないだろう。
そして「説明責任」においては介護サービスを提供する前の契約において料金形態に係る説明をすることも含まれている。つまり、「カネ」の話だ。
また、「カネ」について言えば会計区分に関しても言及している記載もある。もはや「カネの話は経営者や事務員の担当だろう」などと悠長なことは言っていられないのだ。

話を戻すと、このようなことを理解・把握するためには「情報」すなわち法令や運営基準といった制度を管理者は抑えておき、しかるべき体制作りを整備しなければいけないのだ。そうしないと、現場に注力したいと言っても、その現場そのものがなくなってしまうリスクを自ら招いてしまうのだ。

つまり、総合的に「ヒト」「モノ」「カネ」そして「情報」を押さえておくことは管理者の役割であり、これらをないがしろにして現場に注力してばかりの管理者は「本来の役割」を果たしていないということである。

「ヒト」「モノ」「カネ」そして「情報」では分かりにくいと思うので、違う視点の伝え方をすると、管理者の本質的な役割は「現場を現場として成立させること」「職場という日常を守ること」である。

利用者の笑顔、日常の介護サービスは介護職員に任せることができる。しかし、その基盤を守るのは管理者しかいない。そのためには、ビジネスの観点である「ヒト」「モノ」「カネ」、そして法令や運営要件としての「情報」と向き合うことが大切なのだ。

・・・とは言っても、これまでも法人内の管理者らにこの手のことを伝えても、なかなかピンとこないのは分かる。私も上記の視点に至るまで時間を要した。
また、上記は長いし具体性に欠けるということも分かっている。そのため、もう少しイメージ的に表現できないものかと画策している。それがまとまったら、また管理者の役割についてまた投稿できればと思う。

ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。


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