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「法令遵守の整備」と「介護計画作成」基本的な進め方はほぼ同じ

介護現場で的確な対応や指示ができる管理者であったとしても、法令遵守となると「何から始めればいいのか分からない」となってしまう。

このような状態になる理由は、運営基準などの法令やそれに関わる通知文やガイドラインなどに苦手意識を感じているということもあるだろが、もっと根本的な要因がある。

それは上記の「何から始めればいいのか分からない」と嘆くことからも分かるとおり、法令遵守の整備に対しての「進め方が分からない」からだ。
これはもはや介護スキルではなく、むしろビジネススキルの話である。

法令遵守に不慣れなうえに、運営基準の理解も浅い(と言うか読んでいない)人に対して「法令遵守の整備をしっかり行ってください」と言ったところで、そりゃあ「何から始めればいいのか分からない」となるのは当然だ。

これは料理を作る機会がないうえにカレーライスを知らない人に対して「カレーライスを作って」と言っているようなものだ。料理の心得もなくカレーライスも知らない人が作るカレーライスとは、一体どのようなものだろう。(ある意味で楽しみだが、まあ恐ろしい)

しかし、このように法令遵守の整備の進め方が分からないのに、その法令すら見ようともせずに自分なりにやってしまう管理者は少なくない。そして、形だけ整えて満足し、結果的に実地指導などで手痛い指摘をされて恥をかくことになる。

・・・何だか絶望的な状態に思えるが、これは見方を変えれば、法令遵守の整備の進め方が分かれば良いという話とも言える。特に介護職とは言え、一般常識やビジネスマナーなどを身に付けおいて損はないはずだ。

・・・が、介護に係る知識や技術は大好きなのに、法令どころかビジネススキルといった馴染みのないテーマになると、現場の人たちは嫌がる。
「現場では使う機会がないから」「こういうのは、やっているうちに分かるもの」といった理屈や謎理論を展開して、いつまでも法令遵守どころか仕事の進め方が分からないまま時代遅れのキャリアを積み重ねることになる。

では、強制的にでもビジネススキル修得として、法令遵守の整備の進め方を教えれば良いのだろうか? それとも嫌がるならば諦めるしかないのか?
・・・いや、強制的に1から整備の仕方を教える必要もないし、教えることを諦める必要もない。

なぜならば、少なくとも介護事業所の管理者であれば、介護業務を通じて一連の進め方を身に付けているからだ。
そして、その最たるものとして「介護計画の作成」が挙げられる。

介護計画は介護サービスを行うにあたって重要なものである。介護を必要とする人がいたところで、「じゃあ、明日から介護サービスに行きますね」と簡単にいかない。介護が必要と思われる当人を知り、支援方針(計画)を定めて、実際のサービスを通じて課題解決になっているかを振り返る・・・という、いわゆるPDCAサイクルのもとに展開される。
この流れを具体的にすると・・・

【介護計画作成の流れ】

  • 利用者の現状把握をする(ADL、既往歴、生活状況など)

  • 現状から課題分析をする(アセスメント)

  • 課題解決のため、介護計画を立てる

  • 関係者で話し合い、役割分担をする

  • 支援を行う

  • 本人やご家族へ聞き取りする(モニタリングなど)

  • 関係者で話し合う(カンファレンス、サービス担当者会議など)

  • 介護計画を見直す ・・・to be continue

最近は介護計画を作る機会が少ないので、現職の方々からすれば色々と突っ込みはあるだろうが、大筋は間違っていないだろう。
・・・さて、上記のどこが法令遵守の整備の進め方と同じなのか? 
ここで法令遵守の整備の進め方を大雑把にまとめると、次のようになる。

【法令遵守の整備の進め方】

  • 事業所の現状把握をする

  • 事業所の課題分析をする

  • 課題改善のため、整備計画を立てる

  • 職場内で話し合い、役割分担をする

  • 整備事項が機能しているか点検する

  • 職場内で話し合う

  • 整備事項を見直す ・・・to be continue

これもあくまで私の認識を形にしたものだが、PDCAサイクルとして見るとスタンダードな進め方と言える。

ご覧いただくと分かると思うが、上記の介護計画の作成の流れと見比べても、それが法令遵守の整備になったところで、結局は「現状はどうなっているのか?」「現状の問題点は何か?」から始まるのは変わらない。
また、それを整備計画として期間を定めたり、職場内で解決すべき課題として役割分担をして取り組むこと、そして整備を進め、以降にちゃんと機能しているのかを確認して、必要に応じて見直す・・・というのはほぼ同じだ。

つまり、介護事業所の法令遵守は「事業所の整備計画」とも言える。

・・・とは言っても、何だか腑に落ちない点があると思う。
おそらく「流れは確かに同じということは分かったが、何か足りない」「これだけでうまくいくとは思わない」と眉をしかめる人が多いだろう。

さて、1つここで謝罪したいことがある。それは上記の介護計画の作成の流れには、とある「前提条件」が抜けていることだ。

それは計画作成のためには「知識」「情報」が必須である点だ。

介護計画の作成にはそれなりに知識が必要だ。役職や資格も経験も要する。
認知症や高齢者介護の知識、排泄介助や更衣介助などの技術、現代社会の動向、介護保険制度を始めとした法令や社会資源の情報、そして介護現場での実務・・・こういったものがあってこそ、現状把握や課題分析を行い、支援の提案などの介護計画を練ることができる。

これは法令遵守たる「介護事業所の整備計画」においても同様である。自分たちの事業所の法令遵守についてイシュー分析をし、それに対しての仮説や方針付けをするためにも、それなりの基礎知識が必要なのだ。
それこそが、介護に携わる多くの人たちが苦手とする運営基準、解釈、通知文、ガイドラインといった基礎知識であり、そして社会や業界の動向といった情報も必要になるのだ。

ここで一度まとめると、法令遵守の整備においてはPDCAサイクルに沿って考えると、介護計画も法令遵守の整備の流れも、大まかな概念は同じであることはご理解いただけたと思う。
しかし、あえて相違点を述べるならば、介護計画は作成するにあたって、その場にいる介護従事者が専門的な知識や情報などを有しているのに対して、法令遵守の整備計画においては、まずは運営基準などの基礎情報を適切な解釈をもって理解しなければならないことだろう。

結局のところ法令に即した事業所の体制を整備するためには、運営基準やガイドラインを要むのが苦手だの何だのと言っているわけにはいかないということになる。こればかりは介護現場で積み重ねることもできなければ、自己解釈で「まあ、これでいいだろう」というわけにはいかない。
面倒なのは分かるが、ひとまず本記事では「介護計画と同じ流れで法令遵守は進めれば良い」ということ、そしてその基本として「まずは運営基準に目を通そう」ということをご理解いただければ幸いである。

ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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