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介護の仕事は現場だけで成立しているわけではない、たまには事業理念を振り返る意義

介護の仕事は、計画性が大切である一方で柔軟性も問われる。

スキルや手順を念頭にしつつも、利用者たる高齢者の支援を第一にする気持ちも大切である。

これらはバランスがが大切である。

「介護現場は流動的だから計画とか手順なんて通用しない!」と言う介護職員がいるが、流動的だからと言って個人プレイに走られても困る。

かつて某ドラマの劇場版で「事件は会議室で起きているんじゃない、現場で起きているんだ!」というセリフが注目されたが、経営や運営の立場になってみると少し違うと思うようになった。

そもそも、介護の仕事は介護現場だけで成立しているわけではない。

介護現場とは、在宅サービスであれ施設系サービスであれ、それを成立させるための法人が必要である。

人事、会計、財務、労務、法令遵守・・・様々な要素が基盤としてある。

介護現場や職場のことを「事業所」と呼ぶことがあるが、事業所は個人商店というわけではない。ちゃんと母体となる法人という組織があるのだ。

そして、法人は事業理念を定める。これが運営している事業所の方針であり、それによって介護現場のあり方が決まる。

――― 少し上から目線な物言いをすると、介護現場だけで事業が成立しているわけでないということは念頭に置いた方が良いと思う。そうしないと介護現場の独断で事業の方針が決まってしまう恐れがあるからだ。

これは介護現場の考え方を尊重しないという意味ではなく、介護現場は法人の理念によって事業の一部を担っているのであって、介護現場の理念で事業全体が進んでいるわけではないという意味だ。

例えば、法人の事業理念が「地域に根差した介護サービスを提供する」と定めているのに、介護現場で「この事業所ではグローバルな介護サービスを展開しようよ」と言ったらチグハグになってしまう。

このようなチグハグさは面白いと思うが、事業においては統一した理念や方針がなければ空中分解してしまう。

現場は現場、運営は運営と分類化してしまうと組織は崩壊する。
どんなに個々のスキルが高くても、どんなに素晴らしい理念をもっていてもつながりが重要である。

このうような話をすると「じゃあ、上の人の言いなりになれば良いってことですか? それって奴隷じゃないですか」と言われる。

これは大きな誤解である。上の言いなりになる必要はないが、その法人の事業理念に即していることが大切だという話だ。

もしも介護現場を「こういう感じで盛り上げていきたい」と思ったならば、それが運営している法人の理念に適合しているかを見極める必要がある。

例えば、前述の「地域に根差した介護サービスを提供する」という事業理念に対してグローバル化を進めるのはミスマッチだが、「近所の人たちに声をかけてワークショップを開催する」とか「地元の中学生に職場体験をしてもらう」というならば適合するだろう。

このような事業理念に即した考え方ならば、運営者や経営者だって「いいじゃないか」「援助しよう」と言ってくれるはずだ。

もしも所属している法人の事業理念と違えるならば、そのときはすでに実行している事業所に転職したり、どこにもなかったら独立して実行すれば良いだけの話だ。

――― 介護現場は介助などの表面的な出来事に目を向けてしまいがちだが、実際は多様なテーマが存在する。

それに気づいたときに「こうしたい!」「こうしたらどうか?」という発想が必ず出てくる。しかし、それは事業として考えたときにミスマッチになるということもある。

それはそれで仕方ないと思ったほうが良い。介護とは言え事業であり、金銭を介している立派なビジネスである。発想や行動の自由さはあっても、組織としての不自由さがあることは社会の理(ことわり)でもある。

常識やルールをぶっ壊すことで掴めることもあるが、いきなりそれをやっても味方になってくれる人はいないと思ったほうが良い。まずは、自分がいる場所において「この法人はどんな理念があって事業をしているのだろう?」と振り返ってみることから始めてはどうだろう。

そして、事業理念に即したアイディアや提案をすることで、周囲も耳を貸してくれるのではないだろうか?


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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