見出し画像

介護サービスに「ケアプラン」は必要なのか?

■ ケアプラン作成のプロセス


介護保険制度のもとに介護サービスを行うには、基本的に介護支援計画(以下、ケアプラン)を作成する必要がある。
これからサービスの利用者となる高齢者の生活や現状、ご本人やご家族の課題や希望などを受けて、ご本人ができること・できないことを分析し、ご本人にとって必要と思われるサービス内容を立案する。

その役割を担うのはケアマネージャーや計画作成担当者などである。
(在宅や施設などサービス提供する場所やサービス形態によって、ケアプラン作成者の呼び方や必要な資格は異なる)

ケアプランには、ご本人の基本情報や課題や要望、そして短期目標および長期目標が記載され、それらの目標を達成するために実施するサービス内容、各サービスを担う事業所名も記載されている。
訪問系などであれば、ケアマネージャーが立案したケアプランをもとに、役割分担された各事業所それぞれで計画書を作成しつつ、詳しい情報を確認しながらサービス提供に備えていく。


■ ケアプランは利用者とともに見直しするもの


このように作成されたケアプランをサービス提供前にご本人やご家族へ説明し、同意および書面にサインしてもらうことで成立する。もしも、納得できなければ都度修正することも可能だ。

なお、ケアプランは一度作成したらそれっきりではない。上記で短期目標・長期目標とあるように、一定の有効期間が定まっている。定期的または随時見直し(更新)をする。

当然ながら、高齢者の状態は変わっていく。老化の進行はもとより、一時的な怪我や病気による身体状態の変化も考慮するものだ。
また、サービスを継続していくと、ご本人もご家族も慣れてくるし、サービス提供している事業者としても見えてくる実態も出てくる。
そのため、定期的あるいは随時、課題や要望をモニタリングなどを通じて確認したり、サービス担当者会議などを通じて関係者間で意思統一を図ることも必要である。
基本的には、サービスを利用するご本人とご家族が中心となるが、ときにはサービス提供をしている事業所からの視点をもって見直しすることもある。

このような流れは、いわゆる「PDCAサイクル」と同じ考えと思って差し支えない。それは、人間というものは最後の最後まで、心身状態に合わせて生活そのものを変化していく必要がある生き物だからだ。


■ ケアプランって必要なのか?


・・・と、ここまで読んでいくうちに「手続きが面倒くさそう」とか「何でもやってあげればいいじゃん」と思われた方々もおられよう。

その感覚は間違っていない。実際、介護従事者の中にも全く同じ感想を抱く人たちはいるし、何ならケアプランを作成している担当者ですら類似のことを思わずにいられないこともある。

身も蓋もない話になるが、「本当にケアプランって必要なのか?」と介護のプロであってもと思うことがあるという話だ。

もちろん、上記のようなプロセスを見ることで、その必要性や意義はご理解いただけると思う。実際、介護サービスを利用するまでの流れをほとんど知らないまま現場で働いている介護者も少なくない。

だからと言って、ケアプランの意義を説明したり、介護サービスはケアプランがベースとなると説明したところで「その都度対応を変えるのがプロ。介護は計画通りにいくわけない」と鼻で笑う介護者もいるくらいだ。

まぁ、言わんとすることは分かる。
そもそも、失礼ながら介護サービスを要するという高齢者に対して「目標を立てる」ということ自体に違和感がある(この後も色々と述べるが、これ自体は個人的な本音である)。
しかも、その目標はご本人が積極的になって立てるものではなく、介護サービスを提供する側が立案するものだから違和感は加速する。

では、いくら介護サービスを提供するための前提条件(義務と言って良い)とは言え、ケアプランなんて必要ないという話になるのか?


■ ケアプランのない介護は混乱する


もしも、「ケアプランなんて必要ない」「必要な介護サービスは現場で考えるもの」とするならば、それでサービス提供は成立するのか?

もちろん、サービスは成立する。・・・が、それはあくまで表面的な話。
それは介護者の視点であって、言い方を変えれば「現場が回っていれば問題ない」と言っているのと同義である。

もっと言えば、ケアプランのないサービスとは、利用者の存在を無視した、介護者個人の自己満足となりかねない。「自分がやってあげたい介護」を介護者が行うことが、本当の介護サービスなのかと問えば、それは誰もがノーと言うだろう。

それでも、上記のように「介護は計画通りにいかない」という矛盾した発言を自信たっぷりにする介護者がいる。それはつまり、自己満足できる仕事をすることがプロであると言っているのと同じだ。

また、自己満足的な介護サービスを介護者それぞれが行っていたら、介護職員同士でケンカになるのは間違いない。
「あなたの介護は間違っている!」「せっかく私がやったことを無駄にしないでよ!!」といった骨肉の争いになるだろう。それは介護サービスの方針が全くないから起こることであるのは、言うまでもない。

そもそも、そんなサービスを受けるご本人もご家族も不満に思うだろう。
それはその日・そのスタッフごとに好き勝手なサービスを行うのであるから、それを受ける側はたまったものではない。
それに自分たちが何で介護サービスを受けているのか分からなくなるし、課題や要望を叶えられないならば、いっそお金を出してサービスなんて受けないほうがマシと思うようになるだろう。


■ ワンチームの軸として、ケアプランは必要


このようにまとめていくと、冒頭からのプロセスからケアプランの意義は何となくでもご理解いただけたと思う。
しかし、ケアプランの必要性を細かく見ていくと、一部においては不必要という意味ではなく違和感や疑問が残る部分があるのが正直なところだ。

一方、だからといってケアプランを全否定するのは早計である。実際、介護サービスも事業でありビジネスである。かつ、介護はワンチームで行うべきものであるから、その指針および統制としてのケアプランは必要なのだ。

確かに現場で臨機応変に的確に対応することは介護では必要だ。しかし、常にそのような場面があるわけではない事はご理解いただけると思う。

そのような平時のサービス提供のため、そして高齢者の変化に適したサービスをその都度見直すためにも、「やはりケアプランは必要である」という結論に至るわけだ。

ケアプランを作っていると「何でこんなものが必要なのか」「日付とちょっとした文言を変えるだけで、いつも同じ内容の書類作りが嫌だ」と思うこともあるだろう。

そのようなときは、「本当に大事なことは目に見えない」ということを思い出していただきたい。ワンチームとしての軸として、ケアプランはちゃんと機能していることを思い出していただければ幸いである。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?