見出し画像

野菜直売所

私たちが住んでるのは、東京の西側で、比較的空が広く、歩けばところどころに畑がある。

コロナによる自粛期間では、最初のうちは玄関先でラジオ体操をするのを日課にしていたのだけど、蚊が出てきた頃からしなくなった。
つまり運動不足が極まっている。
だから、たまに近所の知らない道を、探検がてら散歩をする。

すると、近隣に3か所ほど、野菜直売所を見つけた。
コインロッカー形式で、買いたい野菜のところにお金を入れると、アクリル扉を開けて取り出せる。
ここにもビギナーズラックというものがあるのか、初めて見つけた日は3か所ともに種類が豊富に揃っていて、トマト、ジャガイモが100円、枝豆が200円で買えた。(他にもナス、トウモロコシ、ピーマン、ミョウガ、大葉などがあった。)
大型スーパーで買えば、余裕で2倍以上の値段はする。
形や大きさは不揃いであるけれど、それ以上に、とても美味しかった。
ご飯茶碗4杯分ほどの量があった枝豆は、塩茹でにして食べたら、あっという間に消えた。

味をしめた私たちは、散歩がてら直売所に立ち寄るようになったのだけど、タイミングが悪いのか、初回のようなラインナップに巡り合えていない。
近隣に住んでいる常連さんもたくさんいらっしゃるだろうしなぁと思いつつ、またラッキーが巡ってきますように。

(カ)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

STAY HOMEと言われる前から、妻の仕事はずっと在宅なので、運動不足の彼女が少しでも歩くよう、かねてからふたりで歩いて食料品を買いに出かけていた。それが今や私も基本は在宅、たまのランニングでさえも疎かになった。ふたりをGPSマップで見たらきっと、ふたつの点がほぼ微動だにせず、じっと地図上に穿たれているのだろう。

これはまずい、ということで、以前よりは頻繁に、散歩に出かけるようになった。その道中で見つけたのが、いくつかの野菜直売所の自販機だった。お金を入れて、ダイヤルをひねれば、野菜が手に入る。「買えるものがハッキリ見えているガチャガチャ」のような趣がある。

新鮮なのは野菜だけではなくて、その野菜を口に入れるまでの過程もまた、精神的な意味で新鮮な体験でもある。たとえば、ミョウガ。スーパーで買ったときにはついてこない、ミョウガの「花」がくっついている(というより、初見は「なんだかフワフワしたものがついている」と、すぐに「花」とはわからなかった)。
その花を丁寧にとり、見慣れた形になったミョウガを夕方、水に晒す。しばらく放っておいて、夜。いざ刻もうと見てみたら、水の表面に、小さな、小さな毛虫が一匹、浮かんでいた。
これもまた初めてだな、と思いながらミョウガを洗い、刻んで、みそ汁と冷奴の薬味にした。

(文)

画像1


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?