見出し画像

小説書きの文学賞と締め切りまでの話

ようこそ、ケイです。小説を書いています。

この秋、文学賞に2つの作品を応募したので、その記録をここに残します。
手ごたえも結果もまだ何もありません。

書き始めは夏の初め

創作小説を初めて公開したのは2018年夏。
2019年に文学賞に初めて応募して、2020年の今年も文学賞の応募を目標の一つに定めました。

ターゲットは秋に締め切りのある文学賞です。

応募作の構想を立てたところで、山籠もりをして集中して小説に向き合う時間を持ちました。

本格的な着手はこの時になります。

今回の応募作

一つ目は元々、ショートショートガーデン(SSG)という400字SS投稿サイトへの投稿予定で書き始めた話で、とても400字に収まらなかったことから保留になっていた話。
ちょっと不思議なことが起きる、ファンタジー寄りの作品です。

二つ目は、誰もが自分の容姿や仕事に劣等感を持つことなく自信を持って生きていく社会だといいなという想像から発生した話。
未来なのか軸の違う世界なのか分からないところから、SFっぽいパラレルワールドが舞台です。

どちらも登場人物はいつもと同じくその辺に暮らしていそうな普通の人たちです。舞台が現実世界とは違うため、その世界ならではの理屈とルールが矛盾しないように設定や定義についてはとことん考えます。

地図を書きます。相関図を書きます。職業を書きます。登場人物の背景を書きます。
どの位置関係でどちらから誰が来て別のどの角度から来た人と出会って会話を交わしたのか。その人はどういう経緯でここにいるのか。
小説本体には一言も出てこない設定を、本文より長いくらい書きます。

思いついたエピソードはEvernoteに書いて追加していくので、一つのストーリーが複数のノートブックにまたがります。タイトルもその都度違います。

画像1

便宜上、「ファンタジー」「SF」としておきます。

締め切り迫る1週間前

9月の連休を利用して、薄明さんが長野まで遊びに来ました。
実は長年のリアル友人であり、私が小説を書いていることを明かしている数少ない知人の一人でもあります。

当初アカウントを教えていなかったので、後に彼がnoteを始めてうっかり発見されてから1年ほど。

画像2

(戸隠鏡池、本人承諾済)

文字を書く人としては薄明さんの方が私よりずっと長く携わっていて、写真のようにブログや詩で独自の世界観を発信し続けています。感覚的に私の小説は畑違いなので、張り合うことなく気楽に創作話ができる貴重な友人です。

第1回教養のエチュード賞では、お互い20選に取り上げていただいたことも良い記念。

今まで友人同士であることは触れずにいたので、教養のエチュード賞つながりということで今回ここでカミングアウトしました。

画像3

戸隠神社奥社への参道を歩きながら、今何を書いているのかという質問をされたので「ファンタジーっぽいやつと、SF?っぽいのと、商店街が舞台の」という感じで答えました。

文学賞の締め切りが近付いている2作品、口に出すとやっぱりそれぞれ「ファンタジー」「SF」とは少し定義が違う気がしてしてしまうけど、ちょっと不思議な出来事が起こる世界、そして今の社会とは仕組みが違う世界、それぞれを簡潔に表現するためにはこれしかなく、そこで当たり前に暮らす人たちを描くという点では、現代が舞台のストーリーと同じです。

商店街が舞台のショートストーリーは、年内にnoteで無料公開予定です。

最後の週末

全体像が大方書き上がったこの頃、急に作品と向き合えなくなっていました。
仕事中も常時、締め切りまでのカウントダウンが頭から離れない毎日。
でも、帰宅すると「やらなきゃ」と「よし、やろう」のタイミングが合わず、別のことをして時間ばかり消費してしまう毎日。

締め切り前最後の貴重な週末、この日は出かけた先の近くにあった姨捨の棚田に立ち寄りました。
気分転換という名の逃避です。

姨捨の歴史と景観は、大人になってからより深みを感じるようになりました。

画像4

【姥捨伝説】
この地域では口減らしのため60歳になった年寄りは山に捨てなければいけないというお触れが出ていました。男も年老いた母を背負って泣く泣く山に向かいました。道中、母が「息子が道に迷わないように」と目印のため枝を折るのに気付き、そのまま連れ帰って自宅に匿うことにしました。
この国に危機が訪れたとき、男が母から受けた知恵を進言し見事に乗り越えることができました。事の成り行きを知った殿様は感心し、年寄りは役立たずという考えを改めて姥捨の習慣を廃止したのでした。

実はSF作品の方、どうもしっくりきていなかった点が年配の登場人物でした。
書きながら、どういうきっかけでこうなるんだろう、何か思うことはないのだろうか、というのが、おそらく腑に落ちていなかったのです。

「善良」という言葉は時に無知や愚かさを包含するニュアンスがあるのですが、たとえ人からそう言われても、私は彼らに善良であって欲しかった。

ここで、根本から設定が変わり、夏前に立てた構成が変わりました。

賞を取るのが目的なら明らかな悪手です。でもそうするしかなく、頭の中では立て直したストーリーが一気に流れ始めました。

最後の平日3日間

私の平日スケジュールを簡単に紹介するとこんな感じ。

画像5

残り3日となってしまった平日の、この赤い時間帯に掛けることになります。

◆9/28(月)

SF作品の修正。
といっても、これまで書いたものをベースにした手直しでは流れがちぐはぐになってしまうので、ほぼ最初から書き直しになりました。

これが正直かなりキツくて、諦めてしまおうかって何度も弱気になる瞬間が訪れました。
普段ならしたくない甘え、恥ずかしながらツイートしてしまったのはこの夜です。

ありがとうございます。おかげさまでこの日を乗り越えることができました。

0時を回って就寝。
えっ、こんな瀬戸際に寝るの!?って思う人もいるかもしれません。でも私には日常と健康が壊れたときの助けがないので、生活リズムと睡眠を守ることは夢を叶えることと同じくらいの優先事項なのです。

◆9/29(火)

ファンタジー作品の最後の見直しをまず行いました。
少し時間を置いてから読み直したときに分かる誤字脱字、言い回しの重複とくどさの修正、説明不足の補足と不要文章の削除。

そして最初から最後まで音読をしました。

「声に出してみる」というのはどこかで読んだ手法で、文字列を目で追うだけでは分からない引っ掛かりに気付く良い手法です。

余った時間で、就寝までSF作品の執筆と見直し。
この時点でまだ書いています。

◆9/30(水) 締め切り日

20時頃、ファンタジー作品を完成させて応募。

22時頃、SF作品を完成させて応募。

ネット応募が可能になった今の時代だからこそできるスケジュール。
不備はなかっただろうか、ちゃんと受理されただろうか。

結果が出るまで分かりません。

これからすること

一度手放して文学賞にゆだねた作品に対してできることはありません。
私の手元に戻ってくるのは結果が出たあとです。

今はまた次のターゲットを見つけて、取り組んでいます。本業と睡眠時間を確保した残りの中で、趣味の楽しみと時間を取り合って創作をしています。

気が付いたら2020年は残り2ヶ月。

最後に、教養のエチュード賞への参加について

嶋津さん主催の #教養のエチュード賞 、今回で3回目の参加になります。
「教養とは何か」「エチュードとは」と言葉の意味まで調べても答えが見つけられず、自分なりに手探りで小説書きとしての経緯を書いてきました。

◆第1回「この手から物語が生まれるとき」

◆第2回「工学と文学の親和性」

正解は分からないままですが、嶋津さんからのコメントに肯定を感じて勇気をもらって、今回も参加を重ねました。

お読みいただきありがとうございました。

【追記】
嶋津さんから1000文字の手紙をいただきました。

聞いたこともないような美しい言葉が並ぶ、最高のご褒美です。
ありがとうございました。

【追記2】
文学賞の結果と振り返りをまとめました。

それぞれの応募作品はnoteで無料公開しています。記事内からリンクはってありますので、よろしかったらぜひ読んでみてください。

この記事が参加している募集

私の作品紹介

スキやシェア、コメントはとても励みになります。ありがとうございます。いただいたサポートは取材や書籍等に使用します。これからも様々な体験を通して知見を広めます。