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東京証券取引所、社長辞任と業務命令改善

 本日、東京証券取引所(以下、東証)の宮原社長が辞任するという発表がありました。10月1日に発生した、東証arrowheadの終日システム停止した責任を取るという形での辞任のようです。

 何か問題を起こしたら、大将の首を差し出すという戦国時代のような後始末のやり方はどうにかならないのでしょうか。確かに今回の件について、ベンダーである富士通のお粗末さもありましたし、東証側のマニュアル不整備にも問題はありました。

 しかし、「辞任」以外に決着を着ける術は無いのだろうか。こういった時、海外だとどうなるのか気になります。ヨーロッパ諸国の大統領なんかは、不倫が公になっても知らん顔していますね。問題の種類も文化も異なるので、比較にはなりませんが・・・。

 社長辞任と合わせて金融庁からの業務改善命令のお達しも出ていたので、本日は簡単に業務改善命令の中身を見ていきたいと思います。(業務改善命令と合わせて社長辞任の発表が正しい良い方ですね)

東証arrowhead終日停止トラブル

 10月1日に発生したトラブルの件ですが、内容については以下の過去noteをご覧ください。

 システムに「絶対」大丈夫は存在しないから、万全を期する必要がありますね、と10月1日にnoteを書きましたが、蓋を開けてみたらとんでもなくお粗末な原因でシステムが故障していた、という話になります。

業務改善命令のポイント

 業務改善命令とは、日本の官庁が監督対象の事業者に対して行う行政処分の一つとなります。東京証券取引所は、金融庁の監督下であるため金融庁から東証に対して行ったものとなります。

 また今回は、システム障害ということでの行政処分となりますが、その他にも法令違反や財務の悪化などのケースにおいても発せられることがあります。記憶に新しい事件だと、スルガ銀行の不正融資の件でも、金融庁から処分が下されていました。

 今回は金融庁から、㈱日本取引所グループ(以下JPX)と㈱東京証券取引所の2社に対しての処分となります。ちなみにですが、JPXは東証と大阪取引所を参加に抱えている日本の取引所の親玉となります。

 それでは実際にどのような内容であったのでしょうか。

東証に対する業務改善命令(内容要約&項番いじっています)
①システムにおいて使用する機器等に仕様変更が行われた際の確認プロセスの見直し
②特定箇所の故障が全体機能の停止に及ばないようにするための方策への取り組み
③東証と投資家(取引参加者)間での、トラブル発生時におけるルールの策定
④ネバーストップに加え、レジリエンス(障害回復力)向上のための施策
⑤東証は、障害により取引が開始できず、その後も当日中に取引が再開できなかったことにより投資者等の信頼を著しく損なったことを踏まえ、市場開設者としての責任の所在の明確化を図ること。
→責任の所在の明確化
(JPX)清田CEO 減給
      宮原COO 辞任
    横山CIO 減給
(東証)宮原社長 辞任
    川井執行役員 減給

※JPXに対しての内容もほぼ同じような内容なので今回は割愛します。

 ①~④に関しては当然すべき今後の対処が書かれていると思います。しかし、⑤だけ違和感を感じます。責任の所在の明確化とはいったい何者なのでしょうか?

 社長が辞任して、「よしよし、それで勘弁してやろう」と思う人が一体どれほどいるだろうか。証券会社や投資家など、多くの人が今回の件で損害を被ったかと思いますが、社長の首よりもシステムの安定稼働とリカバリー対策プラン策定の方が重要なはずです。

 私はトレーダーでも無いし、どこかの大株主でも何でもないので、なんら被害を被っていないからそんな軽口を叩けているのかもしれません。もしも、社長辞任だけでは大甘対応だ!と思われている読者の方がいたら、是非コメントを頂きたいです。対決しようというわけではなく、なぜ大将の首を差し出す必要があるのかを知りたいです。

 確かに責任の所在は東証の社長というポジションにあるとは感じていますが、責任を取る=辞任(しかも今日付け)なのだろうか。事故発生から2か月間、システムやルールやマニュアルなどの見直しや改善を不休の作業で進めてきたかと思いますが、完遂できているとは思えませんし、いまだ道半ばで辞めてしまう方が責任という意味では無責任な気もしています。

 辞任するにしてももう少し先でも良いのでは?と思いつつ、もはや文化とも言える悪しき文化の中、山の中腹まで来たら辞めざるを得ないのが日本なのかもしれません。

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