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私たちのすぐそばにある、「社会的孤立」について考えてみた

「社会的孤立」。
普通に生活しているとなかなか聞き慣れない言葉かもしれない。

先日2020年9月9日に、「日本が抱える社会的孤立」について、あるイベントで考えた。

このイベントは、NPO団体「抱撲」の代表理事 、奥田知志さんをお招きし、身の周りに潜んでいる社会的孤立について学び、そこから私たちに何ができるか考える、というものだった。TOMODACHIアラムナイが主催した。
コロナ期間でより身近になったようにも感じる「社会的孤立」問題。ここでは、イベントでの奥田さんの言葉、そしてそこから浮かび上がってきたものについてまとめたい。

コロナで見えてきた、私たちの本来のすがた

奥田さんが最初に言及したのは、パンデミックにより見えてきた、私たちの本来の姿である。

一つ目。奥田さんの印象的だった言葉を引用する。
「一人で生きていけると言うのは、猿に戻ることと同じだ」。

世界的な流行を見せるパンデミックは私たちの生活の多くを変えた。ドラッグストアでマスクを買う、スーパーへ最低限の食料を買い出しに行く、宅配フードサービスを利用する。他の人が仕事をしてくれるからこそ自分の暮らしが成り立っていることに気づいた人も少なくないだろう。

二つ目。生命の大切さに気づいたこと。これまでは仕事を一生懸命することが美徳と考えられていた社会が、「生命」をより重視する社会に変化したことも、コロナがもたらした変化だろう。

奥田さんと抱撲について

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NPO法人抱撲は、北九州を拠点に、生活困窮者や社会からの孤立状態にある人々の生活再建を支援してる認定NPO法人だ。88年12月に活動を開始し、これまで30年間で27個の事業を展開している。これを設立されたのが、今回話をしてくださった奥田さんである。

ある男性との関わりを通して見えてきたもの

抱撲での活動を振り返る中で、奥田さんが説明してくださった印象的な出来事があった。話は、奥田さんの活動開始当初に遡る。

当初、ホームレスの男性に家を支給した奥田さんたち。問題はそれで解決すると思っていた。しかし、数ヶ月後に奥田さん達が男性宅を訪れて目にしたものは、部屋でゴミの中に埋もれる男性の姿だった。

「これは自分たちが望んでいたものではない」

男性が真に必要としていたものは、家という、お金により得られる「ハコ」よりも、社会とつながることだった。

HouselessとHomeless

奥田さんによると、Houselessとは「金銭的、経済的」、Homelessとは「社会的な人との関わり」の不足を意味する別なものだという。

先ほどの男性の例で言えば、彼はHouselessではなくてHomelessだったのだ。人は「何=もの」のために働くのではない。「だれか」のために働く。その源泉が、「社会での人との関わり」なのだった。

『孤独は山になく、街にある。一人の人間にあるのではなく、大勢の人間の「間」にあるのである』

世界諸国でも、孤独は問題として取り上げられており、想像した以上にその被害は深刻だ。イギリスでは、「孤独問題対策機関」なるものがあるらしい。そこによれば、「孤独は、1日に15本のタバコを吸うより健康に悪影響を及ぼす」。

そこら中にあり、私たちの健康を蝕むもの、それが「孤独」なのである。

つながっている孤立と社会

社会的孤立と経済的孤立はつながっている。

「あの人のために仕事を/日々の暮らしを頑張ろう」というインセンティブがない人は、ある人に比べると経済的に困窮する場合が多いそうだ。その逆も然り。経済的に困窮している人は自分から人と関わっていくモチベーションも高まらず、結果として社会的に孤立してしまうという。

家族機能の社会化

そこで抱樸が行ってきたのが、「家族機能の社会化」である。
この仕組みはボランティアで成立し、地域の互助会的な立ち位置である。そして、身寄りのないホームレスの方が亡くなった際にボランティアの方がまるで本当の家族のように最期の別れを執り行うなど、「家族」を社会的に作りだす。

こうして、「Homeless」の人を少しでも減らそうと日々活動しているのが、抱樸である。

奥田さんとの対話〜Q&Aコーナー

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①困っている方が支援にたどり着くまでの経緯は?
outreach型である抱樸は、困っている人のもとに直接訪れる。相談所があったとしても、そこに行く人はほとんどいないからである。

②活動を始めたきっかけは?
大学生の時に釜ヶ崎での活動をしていたことがあるが、人を救うのに、ドラマチックな理由は必要なのだろうか?人の人生は小さい何かの出会いの積み重ね。特別な理由はない。

③ホームレスの方は、社会への信頼をどのように取り戻すのか?
まずは社会がその人を捨てないということを誰か一人が示すこと。それで、ホームレスの人が社会は信頼に足るべき場所だと思えるようになることを待つしかない。

④裏切りや絶望の経験はあるか?
ある。しかし、あらゆる人は不完全で罪を持つ存在。自分もどこかで裏切りをしてきた、という感覚を持つことが大事。

イベントを通して見えてきたもの

「社会的孤立」

興味のあるテーマだったが、ここまで身近なものだったとは思わなかった。奥田さんのあたたかい話し方とその人柄に惹かれ、あっという間に時間が過ぎていった。

他の参加者とのディスカッションも通して、孤立というのはホームレスだけではなく、子供、高齢者、家庭にいる父親(!)、私たち自身など、どこにでもあるものなのだと知った。

皆ができる、今後のアクション

孤独は良くない。それは分かった。

でも、何をすればいいの?「人と関わりを持とう」と言われても、すぐにその方法を思いつく人は少ないだろうし、そもそも人と関わりたくない/孤独を楽しんでいる人だっているだろう。正直、抜本的な解決策を出せ、と言われても難しいと思うかもしれない。

しかし、小さなことからでもアクションしてみよう。これを行動につなげてみよう。

私は、朝走っている時に通りがかった人に挨拶をすること、そして、「社会的孤立」というものがある、ということを少しでも多くの人に伝えることから始めようと思う。

ホームレス支援のボランティアに参加する、本を読む、そして次回のこの企画に参加する。このような他の方法もたくさんある。

実際に行動を起こせるのは、0.5%の人だけ。だから、何かの行動を起こすことができれば、それで満点だ。
その原点に、他者の存在があると尚更良い。だって、人が一番頑張れるのは「あの人のために頑張りたい」と思えるような存在がある時だから。

これを読んだことで、あなたが少しでも「社会的孤立」を他人事でないと感じるようになったら嬉しいです。

参照資料
・認定NPO法人 抱樸(ほうぼく):https://www.houboku.net/
奥田さんの著作『いつか笑える日が来る」
ホームレス支援のボランティア

次回TOMODACHIイベントにも是非ご参加くださると幸せです!


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