見出し画像

「王子様」

シナセン課題⑩非常口

非日常的なストーリーの中での、人の普段と違う行動とか心理描写を映像でみせる練習のようで、、いつも通り、悩みましたよね
タイトルなんて、今まで以上に安直なもので…誰かにタイトルつけて欲しい…


人物
寺本 希(31)主婦
寺本優也(34)希の夫
寺本百合(7)希の子供
有馬 樹(29)会社員


○寺本家・寝室(夜)
寺本希(31)と、眠たそうな顔の寺本優也(34)がベッドの上に仰向けで寝転んでいる。

希が天井を見つめながら、
希「……ねぇ」
寺本「…んー、なんだい?」
希「(少し震えた声で)貴方が、居てくれて…よかった…」

寺本、横向きの体勢になって希を見る。
寺本「…泣いているのかい?」

希、目を瞑って涙を堪え、口角を上げる。
希「泣いてなんか、ないわ…。汗が冷えて、少し寒いだけよ…」
寺本「可哀想に。でも、もう泣かないでくれ。僕は君を不安にさせたりなんかしないさ、絶対にね」

希が天井を見つめ、言葉を確かめるように、
希「わかってるわ。…貴方を、愛してる」

寺本が上体を起こして、希を見下ろす。
寺本「僕も愛してるよ。…そうだなぁ、明日は、映画でも観に行こうか。百合も観れるやつをさ」
希が視線を寺本に移し、にこりと微笑む。
希「うん、嬉しい。ありがとう」
寺本が微笑み返し、希の髪を撫でる。


○デパート・外観
年季の入ったデパートが映る。


○デパート・映画館内
寺本、寺本百合(7)、希の順で横並びに椅子に座って映画を見ている。

百合がポップコーンを食べている手を止めて、希の手を掴む。
希が百合の手を握り返し、微笑んだ後、チラリと寺本をみる。
寺本はスクリーンに釘付けになっている。


○デパート・映画館入り口(夕)
寺本と希と百合が映画館から出てくる。

希が足を止めて、百合に目線を合わせ、
希「面白かったわね、百合」
百合「うん!!!お姫さまいいなぁ、ゆりもあんなお姫さまになりたい」

希「百合はもうお姫様みたいにかわいいわよ」
百合「ちがうの!ゆりにはまだ、おおじさまがいないもの」

寺本が希の隣にしゃがみ、希の肩に手を回して百合をみる。
寺本「百合にもいつか現れるさ」
百合が寺本を見つめて、
百合「………ママには?」
希の顔から笑顔が消える。

寺本「もちろん、もうママに王子様はいるさ。ここにね」
寺本が自身の胸を叩きながら、百合にウィンクする。
百合「…」
百合が眉を垂らして希を見つめる。
希「(笑顔で)そうよ。百合、そろそろお腹空いたんじゃない?ご飯食べに行きましょうか」

百合「…うん!!!あのハンバーグのお店がいい!」



○デパート・映画館前の通路(夕)
寺本、百合、希が並んで歩いている。
3人の後姿を有馬樹(29)が立ち止まって見つめる。



○デパート・ハンバーグ店前(夜)
店の入り口に行列ができている。

希「結構並んでるわね」
百合「…お腹すいたぁ」

希「百合、他のお店にする?」
百合「いや!ハンバーグがいい」
寺本「他のお店でもハンバーグは食べれるさ」
百合「ここがいいの!!」
寺本と希が顔を見合わせる。

突然大きな地響きが鳴り、床と辺りのものが激しく揺れ、音を立てる。

周りから、悲鳴や混乱した声が聞こえてくる。
寺本「うわぁっ、」
百合「きゃーー」

希「百合!!」
希がよろめきながら百合を抱き寄せる。

館内アナウンスの声「ただいま地震が発生しました。倒れそうなもののそばから離れて、揺れがおさまるのをお待ち下さい。繰り返しますー」

寺本が希の耳元で、
寺本「(指差しながら)あそこに非常口がある。エレベーターは使えないから、揺れがおさまった後のアナウンスで恐らく非常口に人が殺到するだろう。それよりも前に非常口に向かおう」


揺れが小さくなる。

寺本「いまだ!」
寺本が早足で非常口へ向かう。
希が百合を抱えて寺本の後を追う。



○非常口・階段(夜)
揺れがおさまる。

寺本「よし、今のうちに一気に降りるぞ」
寺本と、百合を抱えた希が階段を急いで降りる。すぐ後を追ってくる足音。


再び地鳴りが響き、階段が細かく揺れる。

百合が希にしがみつきながら、
百合「きゃーー」
寺本「希、急げー!」
寺本が我先にと階段を降りる。

希が降りている途中でよろめき、階段を踏み外す。
希「あっ…!」
希の体が傾く。

希が百合の頭を庇うようにして抱きしめ、目をぎゅっと瞑る。
有馬の声「のぞみ!!!」

有馬が希に手を伸ばし、庇うように抱きしめる。

階段の踊り場に倒れ込む音。
揺れがおさまり、辺りが静まる。

希「いたたたた…。ゆ、百合、大丈夫!?」
希が目を開けて、抱きしめた百合の顔を確認する。
百合が恐る恐る顔を上げる。
百合「ママ…うん。ママは?」
希「(ほっとした顔で)ママも、大丈夫よ」

百合「………パパ、???」
百合が首を伸ばして希の腕を抜けだそうとする。
希「…えっ?」

希がハッとした表情をして、後ろに顔を向ける。
希「い、樹…?」
有馬「ゔぅぅ…」
有馬が唸った後、パッと目を開ける。
有馬「っ、希!!!」

希と有馬の視線が至近距離で交わる。
希「…」
有馬「…」

百合「パパだーー!」

有馬がふぅ、と息を吐き、
有馬「…よかったぁ、間に合って」
有馬と希が上体を起こす。

希、目を潤ませて、
希「な、なんで…何してるのよ、こんなところで…」
有馬「(困ったように笑いながら)館内で、希を見かけてさ…」
百合が希の腕から抜け出し、有馬にぎゅっとしがみつく。
有馬「おわっ!?」

百合「……パパだよ。ママの、おおじさまは」

有馬が少し驚いた顔をした後、しがみつく百合の背中に腕を回し、希に目を向ける。fin


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?