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決して消えない最高に素晴らしいもの
先日、SNSのリマインダーで、昨年公開の「タイタニック ジェームズ・キャメロン25周年 3Dリマスター」の記事が上がっていた。
それは、私にとっても25年ぶり、劇場2回目のタイタニックだった。
一人で救命ボートに乗り込むのを頑なに拒んでジャックと一緒に残ろうとするローズ。
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(何があってもローズを助けるんだ)
死を覚悟したジャックは、悟られないように気丈に振る舞い、とにかくローズをボートに乗船させようとする。
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「大丈夫。ま、なんとかなるさ」ㅤ
「知ってるだろ?僕はしぶといヤツだって」ㅤ
「だから心配いらないよ」
一般に、タイタニック最高のシーンは夕陽の中、舳先で手を広げたローズが
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「私翔んでるわ、ジャック」ㅤ
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だと思うが、個人的にはそこではない。
(BGMはドリームのテーマ)
ようやく救命ボートに乗り込みボートからジャックを見つめるローズ。
ゆっくり降下するボートの中で視線を移すと、ジャックと同じく
「必ず次のボートに乗るから」
と、船上で言い聞かせた父親を泣きながら見上げる幼い姉妹に目がとまる。
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「ハッとして」
遠ざかる甲板を見上げたローズは、ずっと自分を見つめていたジャックと目が合った。
ちょうど打ち上がった海難信号弾に照らしだされるジャックとローズ。
「待って。次のボートって本当にあるの?」
「もしかしてジャック、私を騙してる?」ㅤ
咄嗟の判断でローズは船に飛び移り、驚いて駆け下りるジャックの下へ駆け寄った。
もう飽きるくらい、何度も何度も何度も、機内やネットで見てきたはずなのに、大画面の3Dで見ると50半ばのオヤジでも胸に迫るものがあった。
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私とタイタニックの接点は小学校時代からよく読んだ
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『銀河鉄道の夜』(アニメもよかった)
と、中学時代の教科書にあった
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『Miss Evans on the Titanic』
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英語の授業で覚えさせられたために、まだ記憶に残っている。
ミス・エヴァンズ、エディス・コース・エヴァンズはジャックやローズとは違い、実在した犠牲者だ。ㅤ
映画のクレジットでは確認できないが、グレーシー大佐がローズにボートのありかを教えるシーンで、エスコートしていた2人の女性のうち、落ち着いた雰囲気の向かって右の女性がエヴァンズだと確信した。これも大スクリーン3Dリマスターの為せる業だろう。
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今は自宅でも気軽に映画鑑賞できる時代、それでも劇場で見る映画はやはりかなり違った。
ラストシーン。
すべての約束を果たしたローズはジャックと再会をはたす。
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「今を大切に」
「時計の前で待つ」
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最初のデートの時と同じく、ジャックはホール大階段の踊り場でローズを待っていた。
ジャックが見つめている時計は2時20分で止まったまま。
あの日あの時。
そして、84年もの間止まっていた時間が、今また静かに刻み始めた。
『銀河鉄道の夜』のジョバンニ少年が生者として乗車したように、ローズが生者として乗船したのかは映画ではわからない。
でも、そんなもの、どうでもいいことなのだ。
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ローズがホールに入ると、そこでは先に旅立ったみんなが笑顔で温かく出迎え祝福する。
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タダのアニヲタだった25年前は全然気が付かなかったのだが、これらは全部ローズが願っていたことだった。
極限状態で生死の境をさまよいジャックと辛い別れをしたのに、ローズにとって、タイタニックの記憶とはかけがえのない宝物だったのだ。
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約束を守ったご褒美でローズの願いはかなえられ、ジャックの生前の言葉どおり、乗船切符は人生で最高の贈り物となった。
「希望とは素晴らしいもの
たぶん最高のもの
素晴らしいものは決して消えない」
そう、決して消えない。
だから84年たっても残っていたのだ。
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階段を昇ったローズがジャックに近づき、名曲『主よ御許に近づかん』を演奏した音楽隊と、責任感が強く誠実なアンドリュース設計士、そしてローズの肩ごしに、上階のスミス船長がやや遅れて祝福の拍手をし始めたのが目に入ると、もう堪えきれなかった。
何度も見ているネットでなら何ともないのに。
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繰り返しになるが、巨大スクリーンのタイタニック3Dリマスターの威力は絶大だった。ジャックの言葉ではないけれど、2週間限定公開のチケットは最高の贈り物になった。
かなり無理をして観にいった、昨年の自分に感謝したい。
(終)
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