見出し画像

インボイス制度を見据えた 電子帳簿保存法対応とは

やっぱり電帳法対応は徒労に終わった(小(幡)並感)

前回書いた記事は早くも現実のものとなってしまった。
まさか法律が施行される前にこうなるとは思ってもみなかった。

11/12に国税庁が公開した追加QAについては多くの人が詳報しているので、ここでは割愛する。とにかく「マジメにやるだけ損なんじゃないの?」と思えるぐらいには迷走していることが窺えた。

以前にも述べた通り、近年の(特に今年度の)改正はスキャナ保存の緩和が特に推し進められ、逆に電子取引は採りづらくしているのだが、これは二年後に施行されるインボイス制度のことを考えると、非常にマズいミスリードである。なぜならインボイス制度における適格請求書要件は、紙取引よりも電子取引、もっと言えば電子インボイスとの親和性が非常に高いためである。親和性が高くなる理由は2つある。

理由1、適格請求書を満たしてるかのチェックが手間
インボイス制度下では、「適格請求書」と認められるために必要な要件がいくつかある。下のサイトにわかりやすくまとめられているので、知らない人は見てほしい。

全く新しい要素として出てくるのが「適格請求書発行事業者番号」の記載だ。これは複数書類の合わせ技(契約書や納品書等)で要件を満たすことも可能ではあるが、受取り手のチェックがさらに煩雑になることから、ほとんどの場合は請求書に一律記載することで合意することになっていくと思う。ただこの番号が本当に正しいかどうかは国税庁の公表サイトにアクセスしてチマチマ調べるか、API連携で自動チェックできる必要があり、前者は件数が多いとアッという間に業務が破綻することとなる。取引量の小さな零細企業でもない限り、自動チェックは必須になると予想している。
また、今日現在使用されている区分記載請求書等保存方式は任意(受け取り側が追記可能)であるのに対して、適格請求書等保存方式は義務である。ここに大きな違いがある。つまり正しく要件を満たした請求書を受け取っていないと仕入税額控除に直接影響してくるため、経理はこれまで請求内容と仕訳伝票の整合性チェックだけやっていればよかったのが、適格請求書要件の満足をチェックする業務が純増するのである。果たしてこれを紙でできるだろうか?僕はやりたくない

理由2、経費債務支払システムの多くは電子インボイスが標準化していく
直近の電子帳簿保存法改正に対するシステム会社の反応を見るに、必ずこうなると予測している。スキャナ保存時のOCRは近年素晴らしく正確化しているが、やはり100%でない以上は万全を期そうと思うとチェックは必要になってしまう。確実かつ早く処理するにはデータ自体をやり取りするほかなく、そこで国が定める共通フォーマットを利用することのメリットは極めて大きいはずだ。そのうえ、インボイス制度導入まで2年を切った今日現在、万人にわかりやすい仕様公開は行われてはいないため、中小企業が自前で対応することは不可能と思われる。専用のシステムを導入して利用することが最適解になるだろう。
※電子インボイスについて、英文ではあるが公開されている情報自体はあるので下にリンクを貼り付けておく。これの存在を知っている人、いるのかな…?


インボイス制度の、そのまた先の未来について

電子帳簿保存法改正、そして次に来るインボイス制度。過去に比べて電子取引が中心になっていきつつある現在、税務調査の在り方も変化させざるを得ず、そのためには帳簿(書類)の保存ルールを今とは違う形にしなければならないというのは理解できる。ただ此度の法改正のような、不合理かつ実務者の都合を完全無視した法改正は進めることができないこともまた、課税庁は思い知ったことだろう。

それでは双方にとって無理のない制度はどのようなものだろうか。
個人的に考えている仮説はある。それは、帳簿の立証責任を納税者側に移管していく方法である。

この論点を語る人は多くない。今回の電子帳簿保存法改正では多くの人がその法律のマズさを口々に述べてきたが、税務調査における立証責任について語る人は観測した限りでは唯一、松嶋氏(@yo_mazs)のみである。氏は以前からこの点に言及している。

立証責任を納税者側が持つとはつまり、「保存方法は各社好きにして良いけど、帳簿内容が真実だということは自分で証明できるようにしてね」ということだ。課税庁は納税者より帳簿情報を電子で収集し、型通りの典型的な改ざんや同業界・同規模企業と比較して突出した部分につき、納税者に関連資料の提出を依頼する、というのが将来的な税務調査の在り方になるのではないかと考えている。
これはインボイス制度施行後(早ければ施行を待たずに)議論されることになると思う…というか議論されないと、2年の宥恕期間を設けても今年と同じ状況が再現されるだけになると思う。


と、ここまで様々に語った通り、目先の法改正に振り回されないためにも、業務効率化のためにも、合理的な対応が不可能な法律には最低限のみの対応としつつ、自社内においては電子情報のインプット・アウトプットが容易な運用方法を模索するのが正解だと確信している。


まさか今回の宥恕規定を見て紙運用に戻してる奴なんて居ねぇよなぁ?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?