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vol.2 サガ フロンティア

 筆者は幼少期から少年期にかけて致命的にサガシリーズが苦手であった。根本的に根気が足りないのである。だからサガのじわじわ成長するシステムについていけなかった。

 ドラクエやFFのようなレベルアップ時のわかりやすい能力値増加がないとなんだかテンションが上がらないのである。そんなだからFF2もスクウェアのトム・ソーヤも投げた。

 さらに、目減りするものが苦手だった。RPGでは少しのHP低下でもすぐにホイミをかけて手動「まんたん」を実行してしまうプレイスタイルである。

 MPの目減りですら受け入れたくない中で、絶対に不変でなくてはならない「武器」が使用するたびに目減りする、というサガのシステムなぞ受け入れられるわけがなかった。

 そのうえ、サガの敵は逃げればエンカウント数にはカウントされて敵が強化されていく仕組みであったと思う。早くストーリーの続きが見たいがために敵との戦闘すらかったるく、目標レベルより下なのにダンジョンを逃走で進み続けるプレイスタイルではサガのクリアなど夢のまた夢であった。

 そんな筆者が初めてまともに遊んだサガがサガフロンティアである。なぜ急にサガフロンティアから入ったかといえば「ファイナルファンタジータクティクス」のディスクに体験版が付属していたからだ。

 当時といえば体験版ディスクはワクワクの詰まった宝石箱みたいなものであるから、当然すべての体験版を遊ぶわけだ。

 ちなみにこの体験版、収録されているのはT260Gとクーンの序盤である。よりによってこの二人(一機と一匹?)、これからサガに入っていこうという新規プレーヤーにサガの洗礼を浴びせるにはいいかもしれないがやや尖ったチョイスではなかろうか。

 話を戻して、体験版を通してサガに興味を持ったのは筆者よりも弟であった。よって筆者は弟が入手したサガフロンティアでおこぼれにあずかった状態であるが、しかしサガフロンティアは他のどのサガシリーズよりも遊びやすく、サガに不慣れなJRPG愛好家に優しいつくりであった。こうしてようやく筆者もサガシリーズへの入門を果たしたというわけだ。

 筆者が選んだキャラはリュートであった。サガフロンティアからサガに始めて入った人間がするチョイスでこれがベストかどうかは読者にゆだねるとして、当時は「ひとまず扱いやすそうな人間にする」「男にする」「でも主人公っぽい奴は避ける」そんなあたりでブルーもレッドも選ばずリュートになったのではなかろうか。そのくらいのひねくれた年ごろである。

 サガフロンティアのプレーヤーはご存じの通り、リュートには他のキャラクターのような長さのメインシナリオはなく、本編開始で即自由行動がスタート、その後はいつでもラストダンジョンに突入できるという作りである。

 そのためサガフロンティアの味であるフリーシナリオを豊富に、メインシナリオにさえぎられず好きに楽しみ、キャラを育成できるという利点がある。いっぽうでラスボスはやや強く、タイムアタックをしようとするとメインシナリオが短くても育成が必要なためやや苦労する(当時の攻略本「裏解体真書」の記載参照)のである。

 そんなシナリオを選んだ筆者が何も知らずにすることは探索であった。探索することで当然ラストダンジョンに飛び込み、そしてダンジョンに入れば当然セーブをした。

 RPGをたしなむものとして危険な場所では当然セーブをするのである。そしてこれまたサガの洗礼「敗北してもラストダンジョンから帰還はできない」に阻まれ初回のプレイを終えたのだった。

 それでも心折れ、投げることがなかったのはやはりサガフロンティアが良作だったからだ。特に自キャラの技が自由に連続して専用の名前がつく「連携」がかっこいい。特に四連携以上になれば連携時にビカビカ光りだす。さらにダメージも極大。気持ちいいことこの上ない。

 また、周りにプレーヤーが多くいたことで強いキャラの情報が得られたことも良かった。今でも「ゲンさん」(剣の達人で、ほぼどのシナリオでも味方にできる)には足を向けて寝られないと思っている。ゲンさんの神速三段突きが無ければ今の自分はない。

 定石が判れば賢くプレイできるのもサガフロンティアだ。朱雀先生に技を閃かせていただいたり、生命科学研究所で能力値を挙げたり、ジャンク屋でパーツを仕込みまくったり、ルージュに術より剣を振り回させたり、全体的にヒューマンに頼り切ったヌルいプレイだったがしっかり楽しんだ。

 弟と協力して攻略したので、最終的に自身でクリアしたのはリュート編、アセルス編、それとT260G編だっただろうか。サンダーが急に巨大なスライムになったことに驚き、幻魔のエフェクトのかっこよさに痺れ、白薔薇姫と入れ替わりで入った赤カブをマジで憎んだ。

 なんだかんだ、弟とデータを合わせて開発室までたどり着くまではプレイしたのだから、それなりに遊びつくしたと言える。

 そしてサガフロンティアと言えば攻略本「解体真書」「裏解体真書」である。データだけでなく設定資料、やりこみ、小説まで収録されたこの攻略本は90年代を象徴するゲームの関連書籍と言えるだろう。

 サガシリーズは本編のテキストが簡素なので、これらの書籍によって物語に厚みが与えられている。小説をしっかり読んだので「タイガーランページ(二連携)」を達成してニヤリとすることもできたわけだ。時の君のことをトキノクンと呼んだりもするわけだ。

 確実に心のベストゲームのひとつには入るサガフロンティアである。裏解体真書の読者であるので当然リマスター版でのヒューズ篇の追加には大喜びした。

……のだが、もう一度あの7キャラを攻略するとなるとなかなか骨である。ソフトを買いはしたが、積んだままになっている。でもいつか、いつかはIRPOでチームを組んでストーリーを攻略したいと願うのだ。


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