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台北バスキングデイズ

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記事一覧

台北・バスキング・デイズ vol. 0

台北・バスキング・デイズ vol. 0

 台湾に行きたいって君が言うから

「平成最後の〜」なんて言葉が飛び交う三月、今年は比較的暖冬だと言われた京都の冬も終わり、徐々に暖かくなってきたのを肌に感じつつ、京都は河原町通りをふらふら歩いていた。

思えば、二年前のちょうどこの頃は失意のニュージーランド縦断バスキングを終え、帰国後すぐに京都府庁に履歴書を送っていた。その結果、金曜日に履歴書を提出したのに、次の月曜日には府庁の人事課から連絡が

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台北・バスキング・デイズ vol. 1

台北・バスキング・デイズ vol. 1

ただの旅行記回

 台湾は、日本列島の南に位置し、時差は1時間ほど、緯度で言えば石垣島と同じぐらいで、飛行機を使えば関空から3時間ほどで来れてしまう。

昔、沖縄で地元のうみんちゅと釣り対決したことがあったが、その時と変わらない移動時間だったと思う。何せ夕方5時に関空を出発して夜の9時には台北のホテルに着いていたのだから、オーストラリアやアメリカよりもお手軽に遊びに来れる国じゃないだろうか。

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台北・バスキング・デイズ vol. 2

台北・バスキング・デイズ vol. 2

台北芸人誕生!! 前編

 台北についた翌朝、といっても昼前、まだ新しい元号が発表されていない時間帯に目覚めた私は買い物に繰り出した。

バスキングに必要な機材は全て持ってきているが、どうしても飛行機で運べないものがあった。それは、バッテリーだ。

飛行機に搭乗する際に安全性の問題から持ち込めない規則になっているが、厳密にいうとあるサイズまで持ち込み可能である。しかし、私の機材を満足な時間稼働さ

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台北・バスキング・デイズ vol. 3

台北・バスキング・デイズ vol. 3

台北芸人誕生!! 後編

 新システムで鳴らした音はとてもクリアだった。いや、この音でいいんだろうか。

スピーカーの位置は私の前に置いているギターケースの横。西門駅の外壁を横に「西門町へようこそ」と書いていある門に向けて音を出している。よって、演奏中はスピーカーの後ろ方向に出ている音でしか、セッティングの良し悪しが確認できないわけだが、身を乗り出して適切な音が出ているのか、確認してみるもよくわか

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台北・バスキング・デイズ vol. 4

台北・バスキング・デイズ vol. 4

台北芸人と愉快な仲間たち

あたりは熱気に包まれていた、というフレーズは、あまりにも常套句すぎて、現実味がわかないかもしれない。しかし、道行く人々は体からはエネルギーが溢れ出しているかのようで、決してただ単に夜のわりに気温が高いからというわけではなさそうだ。

まだ肌寒い日本から南国の島、台湾へと脱出してから一週間弱。日中は確かに半袖にならないと暑すぎるほどだが、かといって南国と言えど、京都の夏ほ

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台北・バスキング・デイズ vol. 5

台北・バスキング・デイズ vol. 5

雨が降るって君がいうから-前編

「ケイスケさん、ちょっといいですか?」

と、昼前に目覚めた私に、プライベート保護のためベッドの端に天井から垂れ下がっている幕の隙間から、テゥさんが声をかけてきた。

テゥさんは私の下側のベッドを占有している台湾人で、日本での滞在歴もあり、ある程度日本語が話せる。あと、日本語の他に、アメリカやオーストラリアにも住んでいたので英語が話せ、韓国語も少し話せるそうだ。同

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台北・バスキング・デイズ vol. 6

台北・バスキング・デイズ vol. 6

バスキング飯 !!

異国の地に長期間滞在する際にもっとも重要なことのひとつとして、自分がその土地で満足な食生活を送れるかどうか、ということが挙げられるんじゃないだろうか。

物価の高いメルボルンでは、ラーメンセットが30ドル(2400円)もするので、自ずと自炊に行き着いたが、マーケットで安くて良質の食材が豊富だったので、全くもって不便は感じなかった。

しかし、今回滞在しているこの台湾は、食事も

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台北・バスキング・デイズ vol. 7

台北・バスキング・デイズ vol. 7

雨が降るって君がいうから -後編

「雨っていうのはとても憂鬱な気分になっちまう。こう雨が続くと気持ちが沈んでしまって、学生時代の雨の日に、傘を忘れた気になる女の子に傘を渡せなかったなんていう、遠い昔の記憶をふと思い出したりして、感傷に浸ってしまうもんだ、コノヤロー」

なんて、若かりし頃の淡い思い出を台湾語で語ってそうな飯屋の親父さんも、さすがに元気がなさそうだった。

本日も雨。

台北はちょ

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台北・バスキング・デイズ vol. 8

台北・バスキング・デイズ vol. 8

西門の片隅で愛を叫んだのけもの

 「スーパーイタコモードが使えなくなってきている。」

ふと、そう思ったのは台北生活にもすっかり慣れてしまった頃だった。

1日のルーティンがほぼ決まっていて、昼前起床、156飯包で昼食、スタバで読書、この流れは天候に関係なく、夕方からは、晴れの日であれば5時ごろから西門町の片隅で二時間ほどバスキングをして、雨の日は宿のオープンスペースで読書、もしくは文章を書く作

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台北・バスキング・デイズ vol. 9

台北・バスキング・デイズ vol. 9

最終回

「これでなんとか35kgに納まりそうだ。」

受付で借りた手のひらサイズの電子計量器で、最後の荷物の重量測定を終え、私は安堵感に胸をなでおろした。

荷造りの真っ只中であるが最も気を使うのが預ける荷物の重さである。毎度お世話になっているジェットスターでは預ける荷物の重量によって料金プランが変わってくる上に、予約の段階であらかじめ重さを指定しておく必要がある。なので宿で軽量ができるのはとて

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