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ゼロから作った会社とサービスで、初めてお金をいただけた日の記録

2022年8月30日。きっと僕はこの日を生涯忘れないと思う。

ゼロから作った会社で、ゼロから作ったサービスが、
初めてお客様に選ばれ、お金をいただけた日。

嬉しい。でも怖い。ドキドキするけど、なにか胸のあたりが温かい。
この感情を忘れないように、なるべく克明に言語化しておきたい。



今日のアポは、共同創業者の相棒たちが担当だった。

アポ開始時刻は11:00。
10分前にはアポ現場に到着した旨のチャット、
11:00ぴったりには、お客様側に急な対応が入ったため
開始を20分遅らせる旨のチャットが届いた。

僕は緊張でパリパリになった唇をなめたり、
何もしていないのにどんどん乾く喉に
とにかく水やコーヒーを流し込みながら、
時計とチャット画面を交互に凝視していた。

途中で、売上計画の資料を作らないといけないことを思い出した。
Excelを開く。
Excelを開くけど、何も考えられてない。セルを行ったり来たり。

何も考えられてないことにも気が付かないまま、
顔つきだけは真剣に、時計とチャット画面とExcelのウィンドウを交互に凝視していた。



11:46。

アポ開始から26分後。



第一報が

社内チャットで

来た!

受注の瞬間


「9/15からの年間契約で初受注」


…初受注!



以下、その時のワタシ。

おっ


…あ 9/15?
…あトライアル期間か

…初受注…おお〜

…おっふ(照)

…おお。おお。おお。うん。

…うん。うん。おし。おし。おし!
おっしゃ!おっしゃああああああ!!!
うおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!
うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!
あ、
とりあえず返信して電話しよ

8/30 第一報を受けてのワタシ脳内

電話した。すぐ電話した。
今まで使ったことないLINEのグループ通話ボタンをためらいなく押して。
「ああ、LINEのグループ通話ボタンって、こういうときのためにあるのかもな」そんなふうに思いながら。

相棒がふたりとも、出る。
以下、誰がどれというわけでもないけど、その時のワタシ達。

「おっす〜〜」
「いやーいったね!!」

「いやー」
「いやー。いいね」「よかったね」「ありがとね」
「ひとまずアポ、お疲れ様」
「いやー」
「お祝いしたいね」

「機能に価値を感じてもらえたみたい」
「おお、、嬉しすぎ、、」

「今後の期待も込めて契約だから」
「本当にありがたいね。応えないと」

「でも間違ってなかったね、おれたち」
「お金、出してもらえるんだね。おれらのサービスに」
「やってきてよかったね」
「やってきてよかった」

「お祝いしたいね」

「いやー。もう引っ込みつかないよ」
「お金もらっちゃったたからね」
「ガンガン行くしかないね」

「もっともっとやりたいね」
「そうだね、もっと便利にしよう。もっと喜んでもらおう」

「お祝いしたいよね。こういうときリモートだと困るよね」
「お祝いしたすぎ笑」

8/30 初のグループ通話する相棒たちとワタシ

思考がついてこなくて、言葉は口から出てくるけど、何ものっかってない。

なんとなく、胸のあたりが、熱い。
脳が、熱い。
目頭のあたりが、熱い。
大きく息を吸って、ゆっくり吐く。
少しずつ思考が追いついてくる。

こういうとき、きっと最初にお客様への感謝とか、仲間への感謝とか、そういうのがまず来るのが正しいんだろう。
でも僕はまだ、こういうとっさのとき、自分のことばっかり考えてしまう。

正直に言うと、まずは「やってきてよかった」と思った。
自分を労った。


2020年に、前職を飛び出して、会社を作った。
僕が大好きな自転車を、もっとたくさんの人に手にとって欲しくて。
そのために僕ができることはなんだろう、と考えて。

最初は自転車図鑑を作った。

一緒に図鑑をつくってくれた人たちは、今はどこかへ消えてしまった。
ひとりは何かあって怒って去ってしまい、もうひとりは急に音信不通になった。
音信不通になったほうが技術者で、SSH接続のパスとか全部把握してたので、その後の対応には超困った。

やる前に気づけよって話だけど、自転車図鑑をお金にするのには、ちょっと時間がかかる。そこで、自転車図鑑の資産を活かしながら、自転車をもっと手に取りやすくするために、次のことをやることにした。

それが今回初受注に至った "バイク:ストック" になる。

ロゴ

一言で言えば、「街の自転車屋さんに使ってもらうための、タスクや顧客、在庫を一元管理できるシステム」を作った。

作った。って簡単に言ってみたけど、構想からリリースまで、
思ったよりもめちゃめちゃ、時間もお金もかかった。
遅れていく計画。なくなっていく資金。
心臓が休まらない日々だった。

けど、構想、開発中に、新たに仲間も加わった。
それでなんとか、なんとか持った。
そもそもバイク:ストックの構想も、「こんなんあったらどうかな!」と仲間が言い出したものだった。

自転車屋さん向けのWebサービス開発、意思決定したのは2022年3月頃だった。
開発はSalesforceを使うことにしたが、少し触ったことがあったので、なんとなく自力でできるだろう、という甘い見立てのもとスタートした。

なんだけども、そうだ僕はエンジニアじゃなかったし、仲間たちにもエンジニアの人はいなかった。
やってみると、そもそも概念の理解が難しい。用語や設定も超複雑。

今となっちゃ慣れたけど、なにか機能を実装しようとすると、絶対に何か引っかかる。ヘルプページを見たり、都度営業担当に聞きながら、ひとつひとつ潰していく。

でもヘルプページも営業担当も、基本的には一問一答。
そもそも概念がわからん。全貌が見えない、という課題は解決できない。

「一度通った道しか見えない。全貌は見えない。
 ドラクエで最初に持ってるマップみたい。」

Salesforceの開発について、仲間とワタシ談

というのが僕と、一緒に開発してくれた仲間の共通認識になった。
一緒にやりながら、ちょっとずつエンジニア化していくしかなかった。

だけど、歩みは遅かった。何もできないまま、2ヶ月、3ヶ月と過ぎていった。このままだと1年経っても完成しない。

仕方ない。
ある程度コストをかけてでも、しっかりしたものを早く作るために、
Salesforce経由で開発会社を紹介してもらう。
どんな思いで創業したか、どんな世界を目指しているか、どんな状況にあって、何を協力してほしいか。
なるべくわかってもらうために、熱っぽく説明する。

すると、事前に伝えていた予算の10倍の金額の提案をされた。
やりたいことを実現するには、通常これくらいかかります。と。

お伝えしたとおり、提案の10分の1くらいのコストしかかけられないので、こちらで手を動かせる部分はこちらでやるなどして、なるべくコストを圧縮したい、と伝えてみた。

「ではそれで提案持ってきます!」と言ったっきり、なしのつぶてに。
なんでだ。いやわかってるけども。

6月。
計画ではβ版の開発を終えて、テスト運用を始めたかった、そんな時期が来た。ほぼ全く、何もできていなかった。
仲間は、テスト運用に協力してくれるショップ様をすでに集めてくれている。いつでも始められる。

でも開発待ち。どうしたらいいかも、わからない。

心臓がぎゅーーーーーーっとなるのを、毎日感じた。
明るく「お店には俺が説明しとくから大丈夫」と言ってもらえて、
それでなんとか、持った。


仕方ない。
この会社は諦める。
前職のつてを辿って、手伝ってもらえそうな人にアプローチしてみた。

結果的に、ここで加わった仲間が、全てを好転させてくれた。
営業担当に聞いても開発会社に聞いてもバシッと出てこなかった概念を一瞬で僕らに理解させ、僕らのやりたいこと、世界観、状況、残タスクを一瞬で理解して、実装の方法や難易度を一瞬で整理してきた。強すぎた。

社内で彼を「神」と呼ぶようになったのは、
彼が加わって2日目だった。
そのうち彼との打合せは「謁見」と呼ばれるようになり、
彼がWeb会議に入ってくると、「あ、ご降臨あそばされた」と多重敬語を使うようになった。


彼の指示と教えのもと、僕と仲間たちも開発を進めた。
お客さんを待たせている。仲間に謝らせている。早く作りたい。

最初は僕のほうが詳しかったSalesforceを、仲間もかなり覚えてきた。

「ここで決めよう」
学生ぶりに、深夜にファミレスに集合した。
一緒に開発を進めた。眠気と戦いながら、場所を変えながら。神もリモートで付き合ってくれた。

キリがついたところでサウナに入ったら、当たり前というかなんというか、一周目の外気浴中に意識が落ちた。
白んできた空を背負って、マックのコーヒーを二人で飲んだ。
きっと今日という日を懐かしむ時が来るだろうと思った。


というところまで思い返して、ようやく。
仲間のことを思った。

彼らがいなかったら、ここまで来られなかった。
ということに、僕はようやく改めて気がついた。

そう思って、ありがたい気持ちが胸に溢れてきた。
自分のことばっかりだな、おれ。と思った。

「ありがとう」
LINEで送ってみた。

「こりゃけーすけ、泣いてんな」

と言われた。気持ちは伝わってるようだった。

泣きたいような気持ちは、たしかにあった。
でもなんだか、まだ涙を流すようなときではない、ような感覚があった。
それで涙は出なかった。



サービスを使ってくれるお客さんのこと、その先にいる自転車ユーザーのことを思う。

僕らは会社として今日、大きな一歩を踏み出した。
僕らがゼロから生み出したサービスを、お金を払ってまで使ってくれる人は、いる。それを証明できた。

でも。
まだ、一歩目でしかない。

日本の自転車店全てに、僕らのサービスを使ってもらいたい。
僕らのシステムを使ってくれるお店が増えれば増えるほど、
もっと多くの人が、自転車を便利に手に取れる世界がかならず来る。

そのために作った会社。そのために作ったサービス。
道のりは、果てしなく遠い。

もっと喜んでもらえるサービスにしたい。
もっと楽に便利に使えるサービスにしたい。
もっとめんどくさくないサービスにしたい。
もっとカッコイイサービスにしたい。

もっと多くのお店に、見てもらいたい。使ってもらいたい。

でもその前に、不便をかけちゃいけない。
お金を頂いて運営しているサービスを、止めちゃいけない。

兜の緒を締め、ふんどしも締めなおし、

また明日から!

一歩ずつ!

大股で!!!


精一杯やります!!!!!
一緒にやろう!!!!!!

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