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【前編】ド素人が知識経験ゼロから半年でアパレルブランドを立ち上げた全記録

僕は2019年11月1日、サイクリングアパレルブランド「vélo tokyo」を立ち上げた。役所に行って登記も済んでいる。

ブランドを立ち上げた、という話をすると、「自分のアパレルブランド」とか、そこまでいかずとも「オリジナルのプロダクト」を作ってみたい、と思っている人は意外と多いことに気がつく。

思いを持ってる人はいるんだけど、なかなか最初の一歩が出ない
最初の一歩が出ないのは、きっと最初の一歩をどう踏み出せば良いか分からないからだろう。

なので、僕がブランドを立ち上げるまでの道のりを、割と細かく書いてみることにした。全く同じことやれば全く同じブランドが作れるレベル。

ものを作るって、楽しい。
それが人に喜ばれて、さらにお金までもらえるなんて、めちゃ嬉しい。
そんなステキ体験を、これを見ているあなたにもぜひしてみてほしい!

※あくまで「僕はこうした」という行動録であり、「こうすればうまくいく!」という成功のハウツーではない。

ただし、「こんな服を作りたいな」というイメージを持ってるくらいの人が、実際に作って販売開始できるところまでは、同じ行動をすれば確実にできる、くらいの粒感で書こうと思う。
不明点はDMかTwitterでご質問いただければ補足する。

実際に僕が発注したときのメールなんかもそのまま貼り付けておくので、
就業経験のない学生さんなんかにもイメージがつきやすいはずだし、
何をするのにいくらお金と時間が必要だったかも公開するので、これから始めたい人は大いに参考にしていただければと思う。

ちなみに、リンクから僕のブランドのショップに飛べるので、
ぜひチェックをお願いしたい

クリエイティブの民主化+既存の枠組みの価値の薄れ→個として強い奴が勝つ時勢へ

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僕が言うまでもないけど、いまやスマホひとつあれば、高品質な映像作品も、美しいイラストも、文章も、音楽も、なんでも作れる。

そしてyoutubeでもnoteでもなんでも、プラットフォームにのせて世の中に発信できる。

その一方で、国や銀行がなくてもお金を発行して取引を管理できるブロックチェーンの仕組みが開発されたり、逆に年金制度は破綻するんじゃないか、みたいな論調が激しくなってゆくにつれ、「国家」や「企業」みたいな近代的枠組みの意味合いがおぼろげになって、存在感を失ってゆく。

自分を表現することへの物理的/心理的ハードルがとんでもなく下がったことと、近代的枠組みの存在感の薄れがあいまって、
有象無象の中から「個」としてスタンドアウトしたやつがすごい、みたいな風潮が、最近かなり強いように感じる。

ひと昔前が、堀江貴文さんとか落合陽一さんみたいな「天才」を礼賛する風潮だったとすると、最近は田端信太郎さんとか箕輪厚介さんみたいな、最初は普通にサラリーマンやってたんだけど、その中からスタンドアウトした「突出サラリーマン」が新しいヒーロー像として取り上げられるようになった。

会社に入ることは、つまるところ他人が作ったビジネスを手伝ってるだけ。言われたことをコツコツ続けても、会社への依存度が上がるだけで給料は上がらない。
それよりも、いかに自分をユニークに、唯一無二にできるか。それが、天才でない僕たちが、天才でないまま豊かになるための論点の一つになった。

ではユニークさとは何によって生まれるか。
それは経験以外の何物でもない。人がしていない経験をしていること。それを発信すること。それ以外に自分がユニークであることを証明する手段はない。

「何かに挑戦したいけど、自分が何をしたいのかわからない」なんて言っている人がマジで多い飽食の時代。

だからこそ逆にチャンスはある。

何かを作りたい、やりたい、って思ったら、
とにかく心に従ってかたちにしないと、もったいない。
せっかく芽生えたあなたの気持ちがもったいないし、
豊かになる機会を失っているのももったいない。

さらに言えば、もしかしたらあなたのプロダクトを待ってる人がいるかもしれない。
だからもし、「こういう服とかあったらいいかもな」と思ったら、とにかく形にした方が絶対いい。

ということをはじめに言いたかったのです。

【ド素人が知識経験ゼロから半年でアパレルブランドを立ち上げた全記録】
<前編>→今ここ
①ぼんやりでOK どんな服を作りたいか思い描く
②ブランドロゴを作る(つっても自分では作れない)
③OEM業者を探す


<後編>
④業者と打ち合わせして決める3つのこと
⑥サンプル作る→修正→サンプル作るを繰り返し、完成へ
⑦ビジュアルを整え、ネットショップを作って販売する

①ぼんやりでOK どんな服を作りたいか思い描く

僕が作ったのはサイクリングアパレル(=自転車用ウェア)ブランドなので、自然と自転車の話になる。
最初の構想を思いつくまでの経緯は、下記の通りだった。

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まず、僕は自転車が好きだ愛していると言ってもいい。
↓の記事をご覧いただければわかる。

【過去記事】僕と自転車と、自転車の可能性

それくらい自転車が好きなので、自転車に常に乗っていたい。
毎日の通勤も、ちょっとその辺にラーメン食べに行くときも、コンビニ行くときも、自転車に乗りたい。
ただ同時に、ガチのロードバイク(ハンドル曲がってるやつ)に乗っているので、トライアスロンに出たりもするし、4日で400キロ走破!みたいな旅に出たりもする。

では自転車に乗る人は、どんな服を着るのか、と言うと。

ガチ勢はピッチピチのジャージ
を切るし、
そうじゃない人は私服を着る、くらいの選択肢しかない。

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▲ピチピチのジャージで疾走する僕。本人はかっこいいと思っている

僕もガチで練習するときはピチピチジャージを着るし、通勤の時は私服着るし、みたいな感じだったんだけど、ある日思った。

自転車乗って運動して、そのままご飯食べて帰ってきたい、
みたいな時とか、
1泊の自転車旅で、道中グルメも楽しみたいな、
みたいな時に着る服がない。
つまりガチ勢と私服勢の中間がない。

「ガチ」の時=ピチピチジャージなので飲食店とか入りづらい。
「私服」の時=汗だくになるのが嫌なので中距離乗れない。

なので、間をとって「どこからどう見ても私服に見える、かつ、ジャージが持つ素材や機能を兼ね揃えたウェア」があるといいな、と思った。

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▲いきなりだが完成品を披露。私服にしか見えないが、吸水速乾のハイテク
 素材でできている。背中にポケットもついている。
 撮影は12月の寒空の下、指の感覚と引き換えに断行。

ちなみに、慣れちゃった人からすると驚きなんだけど、
普通の人から見るとあのピチピチのジャージは相当ダサい。らしい。
ダサい上に、ガチ勢ってだいたいおっさん。連れ立ってピチピチ着て飯屋でご飯食べてる光景は、もはや看過しかねるレベル。らしい。
まあ最終ジコマンだから、自分が良ければいいんだけど。でもそうらしい。

なんにせよ、上記のような経緯で「どこからどう見ても私服に見える、かつ、ジャージが持つ素材や機能を兼ね揃えたウェア」の開発に着手することを意思決定した。

季節が夏だったのもあり、まずはTシャツを作ることにした。要件は下記。
・吸水速乾で、長時間の運動に耐えられる
 (すぐ乾いてさらっとした状態が保たれる)
・でもいわゆる運動着みたいなテロテロの素材じゃダメ。ダサい。
 限りなく私服に見える素材でないといけない。
・自転車用ジャージと同じく、腰の部分にポケットをつける
・東京の街に馴染む、洗練されたデザイン

②ブランドロゴを作る

ブランド名は、フランス語で自転車を意味する「vélo(ヴェロ)」と、
東京初のグローバルなブランドに育てたい思いで「tokyo(トーキョー)」を組み合わせて、「vélo tokyo」にした。出身岐阜だけど。でもそうした。

ブランド名が決まったので、何はともあれ、かっこいいロゴを作りたい。
多少の費用は覚悟しつつ、早速クラウドソーシングサービスのLancersに発注をかけることにした。(以下、情報は2020年3月現在)

※Lancers(ランサーズ)とは
・フリーランスと発注者をつなぐプラットフォーム
・事業戦略立案、マーケティングみたいな上流工程の仕事から、文章のライティングやデータ入力のような、いわゆる作業ベースのタスクまで幅広いフリーランスの人々に発注できる。

Lancersに発注するのはめちゃ簡単。
メールアドレスさえあれば会員登録できるので、まずは発注者として会員登録。登録ができたら、「依頼を投稿」のボタンから依頼を投稿するだけ。

Step1:仕事の種類を選ぶ
 「デザイン制作」→「ロゴ作成」を選択
Step2:仕事の進め方を選ぶ
 ・「プロジェクト形式」と「コンペ形式」がある。僕はコンペ形式を採用
 ・「コンペ形式」は、「このテーマで誰かロゴ作って!」と広く呼びかけ、いろんな人が提案をしてくれる。最終的にどれか一つ選び、選ばれた人が報酬を受け取る仕組み。それ以外にも佳作的な感じで「これも良かった」というものを他に4つ選んで、その人たちにも報酬をあげられる。
Step3:ロゴの種類、イメージ、色を選択

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・図解されていてわかりやすいので説明の必要がないけど、
 ナイキの✔︎みたいな抽象的なもの、文字をデザインしたものなど、選択肢から雰囲気を選べる。
Step4:依頼の詳細を記載
 ・事業の概要、ロゴのイメージや、制約条件があれば文字で書く

 ・同じ「ロゴ作成」カテゴリの他の依頼を見てみる。たくさん提案を受けている依頼の書き方を真似する

 ・僕の場合は、提案が多かった依頼に共通する下記3点の構成にした。
   1.どんな事業を行うのか
   2.ロゴのイメージ(暖かい感じ?洗練された感じ?くらいでOK)
   3.イメージが近いブランドロゴ(こんな感じのシンプルさがいい、など)


 ・何をやるのか、誰向けのものなのか、用途はなんなのか、
  など、ブランドコンセプトを詳しく書くと、提案する方もしやすい。
Step5:料金プランを決める

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・最も安いプランで27,500円から発注できる。実際の案件を見てみるとだいたいか下記くらいで提案数が増えていく。

 27,500円→20~30提案
 41,250円→30~50提案
 55,000円→80〜150提案

・オプションをつけたり外したりできるので、値段は多少前後する。最安プランからオプションを外すと、実際は22,000円くらいで発注が可能。

・当たり前だけど、報酬が高い方がより多くの人が提案してくれる可能性が高い。

・スタンダード以上は提案数保証(全然提案が来なかったらお金返してもらえる)があるので、僕はここでスタンダードを選択。

当時の実際の発注画面が残っているので、下記リンクからご確認いただければと思う。

Lancers - ロードバイクサービス事業「vélo tokyo」のロゴ


結果どうなったか

約3週間で144件の提案を獲得。最高にかっこいいのができた

スクリーンショット 2019-12-10 00.58.44

▲vélo tokyoのVとTを用いて上部のアイコンが構成されている。
 しかもアイコンはベロ(舌)がモチーフになっているというおしゃれさ。
  完全にやられて即決した

ちなみにこのタイミングで浮かんだのが、「微修正ってやってもらえるの?」という疑問。
ちょっと文字が細い、、とか、位置が、、とか角度が、、とか、
できれば直接話したいよね。。みたいなことが起きて、どうしようかなと思った。

で、僕はどうしたかというと、候補に入っている作者に連絡した
(連絡自体はランサーズ内でできる)。
「あなたの作品が一番イメージに近くて、ほぼ決定状態。でもちょっと微修正したいところがあるんだけど、、具体的にはこことここ。」
みたいなメッセージを送って修正を依頼した。

面白かったのが、「対応するから入選報酬もください」と言ってきたこと。
入選報酬というのは、最終的に選んだ作品とは別に、4つだけ作品を選んでそれぞれに2000円くらい渡せる仕組み。選んだ奴が優秀賞だとすると佳作的な位置付け。
これは作品単位で渡せるので、複数案提示してくれた同じ人に4つぶん全部あげることもできる。それをくれと言ってきた。

なるほどランサーたちはそうやって稼いでいくのね。と納得しながらも、
「モノが良かったら参加報酬あげるから、とりあえず修正お願いします!」絶妙に保険をかけながらも言うことはしっかり聞いてもらう
というコスい手を使った。実際あげたけど。

修正は、採用する案を選んだ後でもお願いできる。人によってはスカイプをつないで画面とか共有しながら直してくれるそうなので、採用前にどこまで対応してくれるかは確認しといたほうがいい。

個人的には入選報酬を渡す前にいろいろ案を出してもらうほうが、確実に動いてくれるので安心できるかなと思う。

そんなこんなでロゴが完成した。

納品のファイル形式(拡張子)は発注段階で選べる。
背景透過PNGファイルをもらっておくと、下記みたいに自分で撮った画像と組み合わせて画像を作れるので便利。

スクリーンショット 2019-12-10 00.58.44


【ここまでのコスト】
・ロゴデザイン費  55,000円
----------------------------------
計 55,000円

③OEM業者を探す

プロダクトのイメージもできたし、ロゴも完成した。
いよいよ実際にウェアをつくってみる。自分で縫うわけにもいかないので、当然作ってくれる会社を探す事になる。

下記を満たす必要があるので、
高校とか大学のクラスTシャツ作ってます〜的なノリのTシャツ屋さんじゃダメ

【定義した要件】
・吸水速乾で、長時間の運動に耐えられる(すぐ乾いてさらっとした状態が保たれる)
・でもいわゆる運動着みたいなテロテロの素材じゃダメ。ダサい。
 限りなく私服に見える素材でないといけない
・自転車用ジャージと同じく、腰の部分にポケットをつける
・東京の街に馴染む、洗練されたデザイン

特に、ポイントとなる「腰のポケット」。複雑な依頼をすることになるので、ガチのアパレルブランドから発注を受けているような会社でないと対応できない。
こちとらド素人なので、企画段階からデザインや素材選びまでアドバイスをくれるような、総合的なサポートをしてくれる企業である必要がある。

そして最高なことに、そんな企業は正しくググれば一瞬で出てくる。
具体的には「Tシャツ OEM 東京」でググった。

OEM、という言葉を入れるのがポイント。「オリジナル」とか入れちゃうと「思い出に学園祭Tシャツ作っちゃお⭐︎」的な会社しか出てこない。

OEMはOriginal Equipment Manufacturingの略らしい。
要はあなたのブランドの服を代わりに生産する会社だよということ。対象がアパレルじゃなくても使う。


東京、と入れたのは、住んでるのが東京だから。
実際に身に付けるものなので、肌触りや着心地の確認は絶対に外せない
とすると、その確認のやり取りのためにいちいち郵送はコストが高くなることが想定されるので、なるべく近くてすぐに行ける、というのは大切だと思った。

検索結果が出る。出たらその中から、
実際にどこでやってもらうかを決める。

僕がやったのはこういうやり方。
・上から10社くらいのサイトを全部開く。
・絶対に「お問い合わせはこちら」というリンクがあるので、そこへ片っ端からメール


上から10社なのは、アパレルOEM企業のITリテラシーがどれくらいなのか分からなかったから。イメージ的に古い慣習がいっぱい残ってそうだったので、Web上でのやりとりができません、とか遅い、とかだと今後が不安。

場合によってはスカイプ電話とかするかもしれないし、画像ファイルのやりとりもクラウドとか使えたほうが便利かな、と思った。
検索結果で上位表示をキープするのってかなり大変なので、ググった時に上位表示=デジタルのことも多少わかるはず、と捉えた。

メールの内容は、
・私は誰
・やりたいこと
・聞きたいことや確認したいこと

が記載されていれば良いと思う。実際に送ったメールは下記。

件名:
【vélo tokyo吉田】サイクリングアパレルOEM生産につきご相談

本文:
ご担当者様

お世話になっております。
vélo tokyoの吉田 圭佑と申します。

OEM生産につき、下記2点お問い合わせしたくご連絡を差し上げております。ご確認のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

【ご相談したいこと】
①Tシャツ制作をしたく思っておりますが、パターンの企画からご相談に乗っていただけますでしょうか
②スポーツウェアに適した生地にはどのようなものがございますでしょうか

【ご相談の背景】
現在vélo tokyoという名の自転車アパレルメーカーを立ち上げる準備をしており、第一弾のプロダクトであるTシャツのデザインを進めております。

自転車に乗る時に特化したウェアを開発しており、通常のTシャツとは違い、前身頃より後ろ身頃を長く、また後ろ身頃の最下部にポケットを配置したデザインを考えております。

しかしながらアパレル事業については門外漢のため、ぜひ御社のお知恵をお借りしながら協働でプロダクトの開発をしたいと考えております。

素材や型紙についてまずはご相談に乗っていただく、というようなことは可能でしょうか。

また同時に、スポーツウェア向けの素材もどのようなものをご用意いただいているかご教示いただきたく存じます。

可能であれば素材サンプルなどを送付いただく、または我々にて御社に伺い実際の触り心地など確かめたく思っておりますが、
そのようなことは可能なものでしょうか。

vélo tokyo 代表 吉田 圭佑

返信は基本的に全部くるけど、翌日中に返信がこない会社は
先が思いやられるので避けたほうがいい。

僕はなんとなくやりとりがスムーズだった、北参道にあるU社さんにお願いすることに決めた。

そんなこんなで●月●日の何時に伺いますね、とアポを取り、業者選びは完了した。

何にいくらかかるのかも気になるので電話して聞いてみたんだけど、そもそもどんなものを作るかによってかなり変わるらしいので、まずは相談にいくことにした。

※後編へ続く前に
後編は更にお金の話、完成品の話など突っ込んだ内容のため、途中から有料にさせていただいています。

<後編へ続く>

※追記
この記事を見て「自分もブランド作りたい!」という人がとても多いので、
振り返って書いた記事を書きました!



面白いなって思っていただけたら、ぜひサポートをお願いします! 面白くないなって思った場合も、ぜひサポートをお願いします! …狂ってる?それ、誉め言葉ね