濡れてゆこう
「月様、雨が…」
「春雨じゃ、濡れてゆこう…」
月形半平太は雛菊の差し出した傘を押し返し、一人、雨のなかを歩き始めた
梅松が傘を持って後を追った
しばらく相合傘で歩くが、橋を渡りきったところで、月形は梅松を追い返した
直後、幕府の捕り手に取り囲まれたが、なんとか無事に血路を開いた
21世紀の現代、都心部は地下鉄と私鉄とJRの交通網が張り巡らされている
毎日、忘れ物、落し物の膨大な山ができている
雨が降るのでは、と持ってきた傘は、どこかへ忘れて置いてきてしまうことが多い
一方、地方都市は車社会だ
door-to-door の移動を車でやっている
そもそも傘がいらない生活だ
だから、雨が降ってきたら、今日こそ、言ってやろう
「月様、雨が…」と。
(310字)
ほどばしる水曜について
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