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Netflix「三体」への違和感(前編)

今日から3日間ほど続けて、毎週恒例ではない記事を書こうと思います。水曜日は画像生成、木曜日は配信済みのVoicyラジオ放送のコンテンツをもとにした記事、金曜日はシロクマ文芸部参加記事になるところ、今回は 、Netflix「三体」への違和感について語ることにします。

世界的に大人気のNetflix「三体」

2024年3月21日、Netflixの映画ThreeBodyProblem「三体」Season1 の
8回分すべての映像が世界中でどなたも視聴できるようになりました。日本も含め、世界中でとてもヒットしています。たいへんな評判です。既に続編の制作も決定しています。

この大人気のサイエンスフィクションの映像のサイエンス・アドバイザーをなさっているのは、ケンブリッジ大学の素粒子物理学者、マット・ケンジー博士です。Nature編集部は、2024年4月30日にインタビュー記事を出しました。”The science of 3 Body Problem: what’s fact and what’s fiction?”(「三体」の科学:何が事実で何がフィクションか?)というタイトルの記事です。

https://www.nature.com/articles/d41586-024-01272-5

記事では、マット・ケンジー博士がサイエンス・アドバイザーに就任するまでのいきさつのエピソードのほか、映像のいろいろな場面における視聴者の素朴な疑問へのコメントを紹介されていました。さらに別の分野の2人の若手研究者にもインタビューしています。

このような記事については、以前、ご紹介しました。

原作の小説「三体」三部作

小説「三体」三部作とは、中国のサイエンス・フィクション作家、劉慈欣(リウ・ツーシン、Liu Cixin)さんの3つの続き物の作品、「三体」、「黒暗森林」、「死神永生」です。

第1作の「三体」と第2作の「黒暗森林」は、2008年に中国語で出版されました。その2年後、2010年に第3作の「死神永生」が中国語で出版されました。この時点で、中国では、すでにたいへんなヒット作品だったようです。ただ、世界で知られるに至ったのは、英語翻訳版が出てからということです。

第1作「三体」の原作出版から6年後になる2014年、英語翻訳版が出ました。
これが世界中で爆発的なヒットになり、翌年2015年のヒューゴー賞受賞につながったわけです。アジアでは史上初めてのヒューゴー賞という快挙でした。その年、「黒暗森林」の英語翻訳版が出ました。さらに翌年、2016年、三作目の「死神永生」の英語翻訳版が出ました。

Netflixの映画ThreeBodyProblem「三体」Season1 は、第1作「三体」を下敷きにした映像です。ただし、ストーリーを多少改変し、実質的に第2作「黒暗森林」、第3作「死神永生」の登場人物も登場させています。

この物語は、プロキシマ・ケンタウリbと思しき、太陽系からおよそ4光年離れた惑星に住む人々が、地球よりもはるかに高度な文明を持っていて、太陽系に向け宇宙艦隊をさしむけ、既に出発させているという設定になっています。三体文明の宇宙艦隊が到着するまでにおよそ400年ほどかかるので、その間に、いくら遅れているいっても地球文明だって科学技術の進歩を遂げるかもしれません。そこで、地球の科学者を絶望させて自殺させたり、脅迫して、研究をやめさせるなど仕掛けを行う、そのなかで、三体文明を歓迎して迎え入れることに熱心で反人類的な活動を行う者もいます。そんななかで起きるさまざまなドラマを描いています。

Netflix映画はよくできている

Netflixの映画ThreeBodyProblem「三体」Season1は、とにかく、人気の作品で、世界中でとても好評されている作品ですので、十分、一見の価値があると思われます。

「三体」の映像化は、実はNetflixが初めてではありません。中国、テンセントのオンデマンドのドラマ「三体」は、同じ小説を全30回で描いています。これも大変面白い、見る価値のある映像です。

同じ映像を見ても、受け止め方は人それぞれですし、また、すぐれた作品であればあるほど、共感するポイントをいくつも持っていますので、どこに着眼するか、視聴される方の個性を反映しやすいと思われます。

Netflixの映画ThreeBodyProblem「三体」Season1は、どなたも大いに楽しめる映像です。特に、原作の小説「三体」三部作をまだお読みになっていない方々にとっては、素直に、楽しむことのできる、とてもよいエンタメの映像ではないかと思われます。

それに対して、原作の小説「三体」三部作を全部読まれて、その世界にどっぷりはまってしまわれた皆様は、ひょっとすると、大小さまざまな違和感を感じられるかもしれません。もちろん、その場合だって、とりあえず、原作の小説三部作のストーリーと、作中の登場人物とキャラクターに対する特別な思い入れをとりあえず、脇において、単なるスピンオフ作品の映像なのだ、別の楽しみの番組なのだと割り切って頂ければよいのではないかと思います。

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