ウジェニー・グランデ
2023年2月から、毎週金曜日、「金」または「経済問題」または「錬金術」または「金星」または「金曜」に関係するワードをテーマに含む短めの記事を書くことにしております。この頃は、現代のマネーに翻弄される人々の姿に重なる愚かな守銭奴たちを描写した近代文芸作品を取り上げることが多くなっています。
1833年にフランスの作家オノレ・ド・バルザックが発表した長編小説、"Eugénie Grandet" (ウジェニー・グランデ)は、成り上がりの金持ちで極端なケチのフェリックス・グランデと、その男に似つかわしくない純真な娘ウジェニー・グランデの物語です。ウジェニーが恋仲になった相手は、いとこのシャルルです。シャルルの父は借金がかさみ破産して自殺してしまいました。シャルルもまた無一文です。ウジェニーお金をシャルルに貢ぎますが、さんざん巻き上げられたあげく、実は裏切られています。ウジェニーがシャルルとつきあっていることにフェリックスが激しく怒り、その折檻が度を過ぎていたので、それを見ていたウジェニーの母は病になり、やがて亡くなりました。フェリックスも亡くなり、ウジェニーは全財産を相続しました。ウジェニーはその後も、シャルルにお金を貢いでいますが、シャルルは他の女と結婚してしまいました。ウジェニーは、公証人役場の役人とかたちばかりの結婚をする一方、一貫して質素に暮らし、慈善事業に力を注ぎました。その夫も亡くなり、未亡人になったウジェニーの家に、その財産目当ての男たちが今日もやってきていますが、ウジェニーがとりあうことはないでしょう。
フェリックスを代表として、多くの者が目先の金に翻弄されています。金を手にしても、他に何をどうするでもなく、せいぜいトラブルのもとを作るくらいです。そして、やがて死んでゆき、その遺産に多くの者が群がります。
その渦中で、自ら被害者にもなりながら、金に心を奪われることがなかったウジェニーの姿が印象的です。
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