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ニコラス・ニクルビー

2023年2月から、毎週金曜日、「金」または「経済問題」または「錬金術」または「金星」または「金曜」に関係するワードをテーマに含む短めの記事を書くことにしております。この頃は、現代のマネーに翻弄される人々の姿に重なる愚かな守銭奴たちを描写した近代文芸作品を取り上げることが多くなっています。

19世紀イギリスの著名な小説家チャールズ・ディケンズの作品、Nicholas Nickleby(ニコラス・ニクルビー)では、主人公の青年ニコラス・ニクルビーが恋に落ちた女性マデリン・ブレイを奪って、自分が結婚しようという醜い守銭奴の老人アーサー・グライドが登場します。この男は、ニコラス・ニクルビーの叔父にして、悪質な高利貸し、ラルフ・ニクルビーの仲間です。

ディケンズは、クリスマス・キャロルでは救いようのない守銭奴、エベニーザ・スクルージが最後には改心する姿を描きましたが、このニコラス・ニクルビー作中では、守銭奴の男たちの末路は散々です。

叔父のラルフは、ニコラスが救い出した知恵遅れの子が、実は自分の隠し子で、結核で自分を恨みながら死んでいったことを知らされ、自分も自殺の道を選び、あれほどの執念で積み上げた全財産は没収になりました。アーサー・グライドは、年甲斐もなく醜く固執したマデリンとの結婚に失敗したばかりか、家政婦の老婆ペグ・スライダーに重要証文を奪われ、最後は、莫大な財産の存在の噂を聞きつけた強盗に殺されました。

お金そのものには何の問題もないでしょうが、そこにとらわれ、歪められた人々は、金の力で無理やり他人を不幸に陥れ、自分だけが得をしようとして、一時的にはそれも実るようには見えますが、最後はどうなのかというところを風刺しています。何よりも、そこまで執着した金は、死後に持ち越すことはどっちみちできません。


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