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不安はどこからきてどこに向かうのか。

「将来が不安でしかたない。」

年のはなれた妹から、このようなラインが届いた。基本的に妹はポジティブで、にがてなことも乗りこえられる力を持っている。入社当初はいやそうにしていた販売の仕事では、実績が評価され、会社から表彰されたと連絡があったばかりだった。

しかし、そんな妹がいま「不安」になっていると。兄としてはなにか力になってあげたい。話を聞いてみると、どうやらいまの仕事に将来性を見いだせず、転職がしたいとのことだった。そしてWEBデザイナーになりたいと。もうすこし近況を聞いてみると、それなりに行動しているらしいこともわかった。気になるスクールの体験に申し込み、話を聞きに行っただけでなく、ポートフォリをがないと将来的に就職時に不利になることも知っていた。

自分で考えて行動までできているので、そこまで心配にはならなかった。しかし、本人はいまの不安な気持ちをぼくになんとかしてほしそうだった。

さて、妹がかかえる漠然とした「不安」はなんなのだろうか?良いきっかけだったので、ぼく自身も真面目ににかんがえてみることにした。思い返してみると、漠然とした不安はぼく自身も何度か経験がある。高校の入学試験面接や就職面接、転職時にも同じような感覚を味わってきたような気がする。当時のことをできるだけ鮮明に思い出すうちに、ある答えにたどりつくことができた。

「不安」の正体、それは「わからないことがわからない」だ。

TV番組でよくある、目隠し状態で箱のなかみをあてるゲーム。あるいは田舎者がはじめての東京で、まちがった電車に乗ってしまったときのそれにも似ている。実際ぼくは20歳のとき、はじめての東京で、目的とは逆方向のよくわからない電車に乗ってしまったことがある。目的とは別の方向に進む電車、変更を余儀なくされたスケジュール、次はどこでどの電車に乗ればいいのかもわからない自分。

いま考えると大したことではないが、当時のぼくにとっては大変なできごとだった。東京なんてくるんじゃなかったと、ネガティブなことばが頭をよぎったことを思い出した。

なんとかしたい気持ちはあるのだが、いま乗っている電車がどこに向かっているのかわからない。とりあえず次の駅で降りたとして、じゃあ次はどこにいけばいいのか?田舎と違って東京は複数のホームと路線がある。目的の路線を見つけるだけでも一苦労する。

複雑に絡まった糸をみて、どこからほどいていいかわからず、呆然としている状態だ。

妹の頭のなかも、おおよそ似たような状態ではないだろうか。WEBデザイナーになるためにはどんな技術が必要なのか?それを習得するにはどれくらい時間がかかるのか?スクールに通えばそれらを期間内に身につけることができるのか?最終的にどのレベルのポートフォリオをつくれば就職に有利なのか?そもそもパソコンはMACがいいのかWindowsがいいのか?

基本的なことから応用まで、ありとあらゆる問題が複雑に絡み合っている。その量が膨大すぎるため、思考停止してしまい、「将来が不安でしかたない。」ということばになっているのだと思う。

しかし、残念ながら複雑に絡み合った糸が瞬時にほどけないように、これらの問題についても、一発で解決できるような魔法は存在しない。複雑に絡まった糸を、ひとつひとつ丁寧にほどいていくしか方法はないのだ。そして一番最初にすべきことは、糸のはじっこを見つける作業だ。はじっこさえ見つかれば、スタートラインにたつことができる。とりあえずほどいてみようという気力が起きる。

糸のはじっこを自分で見つけたとき、自然と不安は消えていくのだと思う。

ちなみにぼくは、ここまで考えたことを妹に伝えるつもりはない。妹をコーチングするわけではないが、いくつかの質問をして不安の原因を自分で考えてもらうつもりだ。答えを教えない理由は、一時的な解決にしかならないためだ。絶対にいつか同じような場面に遭遇する。そのとき自分で解決できるようになっていなければ、意味がない。

ぼくにできることは、妹を信じてあげることくらいだろう。

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