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太郎物語『太郎物語の準備体操』

太郎物語(杏優、果音)
脚本:杏優

東京音頭という会社による人生のコンセプトをめぐるバスツアー。
キャバ嬢を夢見る少女と女性サンタクロースの交流。
こたつで駄弁る太郎物語の雑談。
三つのパートによって緩やかに人生が浮かび上がる


女優二人による演劇ユニット。
先月観劇した佐藤瑛子を調べてる時に親交のある団体として知り、宣伝美術が非常に素晴らしかったので見に行った。
この団体が行なっている準備体操シリーズの五作目。準備体操というのでラフな内容かと思ったがガッツリ作り込まれた公演だった。
ヴィジュアルセンスは果音が自ら手がけた紅白の衣装含め高く、キッチュでガーリー。
正直、脚本の出来は甘い。しかし演出が抜群に上手い。
紅白を身に纏った二人 ハイテンポに断片を繰り出すが緩急自在でユーモアをまぶすポップミュージック演劇。
二人で声を合わせる場面の気持ち良さ、バスガイドの名前がそれぞれ対比した単語になっている。その自己紹介場面でのテンポ感が寸分の狂いのないコンビワーク。声を合わせて言う「東京音頭」と言うセリフ、病みつき。この言葉がまさかこんなに耳心地のいい言葉とは思わなかった。流れている東京音頭ポップアレンジの使い方もいい感じ。
飄々として自信満々な二人の魅力炸裂。
空間・舞台装置も上手く使う。こたつで駄弁っていたら、すぐに高座のように上がり、バスツアーの受付になっていたり、積み上がった段ボールもラストのプレゼントで意味合いが変わる、

ただ、やっぱり脚本が悪くないけどゆるい。繋がりのない3パートで人生を浮かべるにはそれぞれのコシが弱い。 特にバスツアーの断片が本当に断片で面白くない。短いコントのようなものだが、物語の冒頭だけ見せられた感覚。
だべりからみかんプレゼントで鏡餅はほんわかしていていいけれど、他二つの物語的弱さを補強するまでにはいかず。
これが面白く見れたのは抜群のテンポ感覚によるもの。 緩急自在で、演出によって展開を作り出す。
でも、準備体操だからラフな作りなのかも知れない。 
ラストの歌と踊りで、アイドルのライブに来たかのよう。

この演出センスで脚本もバチバチに決まっていたら間違いなく年間ベストクラス。 今年見た演出の中ではトップクラスに好き。
鮮やかでポップな美少女演劇が好きな人は、楽しめると思います。
演劇界にまだこんな逸材が居たのかと驚く、
視覚的にも楽しい今年の掘り出し物。

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